第三章まで読破したので感想を。
というより、ようやくこの作品の感想を書けることが嬉しい。
丁寧に、それでいて研磨されたな文章。それにマッチした世界観。
そこから二人の女性の生き様や葛藤にのめり込んでしまいます。
運命に抗う少女レイニーことレイネリア。
彼女は貴族令嬢である以上、定められた人生を歩むはず……しかし、それは大好きな人と生きられないことを指す。
だからこそ、大好きな人と共にあるために旅立ちます。
しかし、そんな彼女に向けられた言葉は残酷でした。
非力なレイネリア、超常の力を有するミストリアが紡ぎだす物語は文句なくおススメ出来ます。
(第一章まで読了時のレビューとなります)
まずプロローグでは、他とは一線を画する緻密な世界設定と、それを表現し得る圧倒的な文章表現力に脱帽します。それは史実を引用した設定が多く、確かな整合性を持って世界を構築していることが解ります。その背景となる勢力争いの図式が大変複雑であり、容易には全容を見せてはくれませんが、二人の主人公達の旅を通してそれを紐解いていくという謎解きの楽しみがあります。
第一章ではまだ二人の旅が始まったばかりではありますが、主人公兼ヒロインの二人の人となりが次第に解ってきます(依然としてミストリアちゃんは謎多き子ですが)。このエピソードでは現実の厳しさ、辛いことも多いですが、ある意味箱入りお嬢様であるレイネリアちゃんの心の成長を暖かく見守ることができ、ミストリアちゃんと共に嬉しい気持ちになれると思います。
全体を通して、心情や情景は徹底した3人称視点の地の文で客観的に述べられますが、その巧みな文章表現により、読者はまるでその場に居るかのように感じることができ、凄まじい没入感を得られます。
タグにはガールズラブ?とありますが、ふわふわと浮ついたものではなく、バトル物の少年誌にあるような淡い恋模様であり、見ていて微笑ましいものです(少なくとも第一章時点では)。ですので、百合は無理!といった方も、毛嫌いせずにお読みいただきたいです。
このまさに古き良き硬派なハイファンタジー小説を、是非ともお手にとってみてください!
まず、プロローグが、長いです。
それも、最近よくある、モノローグでどんどん語ってゆくような個人視点的な展開ではなく、対立する2つの軍という、俯瞰視点からの場面展開。
そしてそこから結構ガッツリ、王国について、帝国について、関わる一族、血脈について……この世界についてのあれこれがプロローグ内で入ってきます。
そんな中で登場する、2人の主人公となる少女たち。
時代背景を重視した構成になっており、非常に古典的というか、少なくてもネット小説ではあまり採用されない手法で書かれていると、私は思いました。
そして、そんなプロローグを経て、2人の少女は外の世界へ。
第一章「疫病」では、物語が進むにつれて起こる、とある村の事件をきっかけに、かなりホラーな展開になっているなと感じました。
第二章「別離」では……いま、読んでます!えっ?別離しちゃうん?せっかく2人で旅してるのに!ええやん!仲良いし、2人でこのまま、旅したらええやん!!(←個人の見解です笑)
……というわけで、ハマっております笑
最強の力が目の前にあれば、人はどう思うだろうか?
当然、我が手中に納めたいと願うだろう。
では、その力に意志があればどうだろうか?
あからさまな行動は、自らにその脅威を向けることになるだろう。
では、どうするだろうか?
『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』である。
プロローグは、そんな駆け引きが垣間見られる。
これは、人智を越えた力を持つ天人地姫のミストリアと、その天人地姫を支えるホーリーデイ家のレイネリアの物語である。
天人地姫のミストリアは、次の天人地姫を身籠るために封禅の儀に旅立つ。本来、天人地姫一人の旅であるが、ミストリアと深いつながりがあるレイネリアは、陪従として共に行く。
そんな二人は、怪しい事件と遭遇する。
消えた村人。
それを調べに行った者も、次々と亡くなっていく。
事件は、新たなる敵の影を映し出す。
おそらく、この旅は、本人たちの思いとは別に、大きなうねりの中に巻き込まれていくことになるのだろう。
人以上に人を思う優しき天人地姫は、この見え隠れする悪意の中で自らの色を失わずにいられるのだろうか?
魔法も剣も使えぬレイネリアの支えが鍵を握っているのであろう。
今後の二人の旅にさらなる波乱があることを願い、楽しく読み進めていこうと思う。
この作品は、”文学”として仕上げられたハイファンタジー作品です。今時の作風を採り入れつつも、隆盛を極めるラノべとは一線を画した文体に滲む古さは、作品を安売りしない、文学としての矜持を感じさせます。
例えば、作品の中で『想念の浸潤』という言葉がさらっと出てきますが、難しい言い回しの言葉でさえも、そこにあって然るべきものになっています。おそらく作者は、文学に対して深い造詣を持つ方なのではないでしょうか。古い作品も新しい作品も知る、そんな知見があるように思います。
図書館で手に取った古い文献を紐解いた時、そこに記された異世界に吸い込まれ、そこで生きている人々と共にその世界を生きていくような、そんな気持ちにさせられる作品に仕上げられています。
今はまだ第一章が終わったところなので先の話になりますが、いつか最後まで読み終わり、パタンと分厚い本を閉じ、再び図書館の棚に戻す時が楽しみに思えて仕方がありません。いつかまた本棚から誰かが手に取り、この作品を読み耽る時が来るはずです。これは、そう思わせる文学作品です。
ラノベが定着する以前の異世界ファンタジーは『その作り込みにより別の世界を感じさせる』ものだった。
現在の異世界ファンタジーは殆どが現代風にアレンジされていて馴染みやすくされている。反面、異世界がゲーム風のノリとなり本来の意味で異世界を体験できていないとも言える。
こちらの作品はその作り込みにより異世界にある国家がまるで確かに存在するかのような錯覚さえ受ける。描写の細やかさや人物像の確立、その世界で人々が生きていると感じるのだ。
これはハードカバーで出ている海外のファンタジー──例えば『氷と炎の歌』と現代ラノベを上手く融合させた様な作品と言えるだろう。
本格的ファンタジーをじっくり読みたい方にはお薦めの一作。