第439話 参戦表明・前編

『拝啓 聖教会(キャメロット魔術協会)の皆様


 この度は偉大なる貴方様方に対して

 無礼を働く等という

 愚かな行為をしてしまい

 頭も上げられません


 つきましてはお詫びの気持ちも込めまして

 この度生徒主催で

 貴方様方に喜んでもらえるような

 パーティを執り行うことに致しました


 キャッチコピーは<愛と平和はここにある>

 我々が清浄なる存在で居られるのは

 他でもない貴方様方のお陰であります


 日時は今週末土曜日の午後七時から

 サタデーナイトパーティです


 飛び込み参加も大歓迎

 どうぞ皆様振るってご参加ください


 敬具 グレイスウィル魔法学園 生徒会一同』











「いーーーーーーやっふうーーーーーー遂にこの時が来たぁ!!!」

「ガキ共!!! 遂に俺らの力に屈したな!!!」



 招待状を受け取り、歓喜に酔いしれる聖教会の司祭達。


 普段の神聖な雰囲気はどこ吹く風、仕事のことを忘れてはしゃいでいる。



「……」

「猊下! リチャード様!! どうされましたかその様な顔をなされて!!!」

「いや……」

「……君達、この騒ぎは何事かな?」




 本部の上階からクリングゾルが、あまりの騒がしさに眉を顰めて降りてくる。




「クリングゾル様!! パーティです!! 生徒共が費用全部持ちで騒げるんですよ!!」

「こちらが招待状です!!」

「……」




 それに目を通した後、ヘンリー八世やリチャードと同様に険しい表情をする。






 クリングゾルは二人と近付き小声で会話をする。司祭たちが非常に五月蠅いので、かなり口を近付ける必要があった。




「……あいつら、何を企んでいると思います?」

「あれだけの暴動を起こしておいて、それを急にぴたりと止めて、改心したとは到底思えませんね」


「……アレを投入する時が来たか」

「……本気ですか?」

「元々は王家に見せつけて、この国を掌握しようと思っていたのだがな。仕方あるまい……」


「というか、本来我々がここに来たのは女王の確保が目的だったはず。女王がいなくなった今、ここに固執する必要はないのでは?」

「……今目の前で狂喜する輩共を見ても同じことが言えるか?」





 確かにそうでもある、と会食のメニューを勝手に想像して勝手に涎を垂らしている連中を見て思う。





「それに……あのお方はいつかグレイスウィルを攻め込もうと思っておられる。ただその機会が早くなっただけのことだ」

「ふむ、それもそうでありますね。わかりました、手配をしておきましょう……」











 この招待状に対して、狂喜し訝しんでいるのは、聖教会だけではない。



 キャメロット魔術協会も同様に、ほぼ同様の反応を見せていたのだ。






「只今到着した」

「モルゴース! ……ゴルロイスもいるわね」

「こんにちは、エレーヌ。ヴィーナ様も」

「御託はいいわ、早く今後の予定を立てるわよ」

「……エレーヌ。わたくしが直に指示をするから口出しは無用よ」

「……っ! 申し訳、ありません……」




 髪飾りを靡かせ、ヴィーナは言う。


 その顔は酷く苛立ちに歪んでいた。




「……ゴルロイス。貴方がここに呼ばれた理由、わかっているわね?」

「……?」

「貴方の怪力を存分に発揮する機会なの。ちゃんとわたくしの言うことにしっかりと従うこと。それができたらキャンディをたらふくあげるわ」

「キャンディ……わかった。ぼく、がんばる。ヴィーナ様、見ててね」


「……モルゴースもね。貴女には他の連中の指揮統括をしてもらうから。このアルブリアの地まで、丁寧に輸送してきてね……」

「……はっ! 承知致しましたっ!!!」


「エレーヌはわたくしと来なさい。あの小賢しい蠅共を……何としてでも潰すわよ」

「……ええ、尽力する所存でございます……!!!」
















『前略

 聖教会及びキャメロット魔術協会に

 恨み辛みその他負の感情を抱いて

 生活していらっしゃる皆様


 この度あんちくしょう共を

 魔法学園にパーティで釣り出しました


 酒も飯も沢山出すので連中は絶対に油断します

 襲うなら今です


 キャッチコピーは<愛と平和はここにある>

 我々の手でそれらを取り戻す時が来たのです

 因みに未来の生徒会長候補リリアンさんが

 三秒で考えました


 日時は今週末土曜日の午後七時から

 サタデーナイト反乱パーティです


 飛び込み参戦も大歓迎

 どうぞ皆様振るってご参戦ください


 敬具 グレイスウィル魔法学園 生徒会一同』











「くっははははははは……」



「いい!!! 実に素晴らしい!!!」



「それでこそ俺が愛した……グレイスウィル魔法学園よぉー!!!」








 船から降り、直ちにその招待状を受け取ったアドルフは、腕を組んで大仰に笑う。




 隣にいるトレックとシルヴァも至って満足そうだ。






「パーティねえ。甘い物は用意してあるかな?」

「きっとしてあるだろうさ。しかし食うのは連中だろうから、食べたいなら連中を倒す必要があるな」

「なら参戦するしかねぇよなぁ!?」

「ああその通りだよなぁ!?」




 緑のローブを悠然に吹かせ、やってきたのはルドミリア。リティカとリュッケルトも後ろからついてきている。




「ルドミリア!? 怪我はいいのか!?」

「まだ内臓が疼くそうだが……パーティと聞いていても立ってもいられなくてな!!!」

「伯父上! 僕はこのようなパーティは何分初めてなもので! 礼儀作法をご教授いただけたらなあと!」

「もっちろんそのつもりでいるぞぉーリュッケルトー!!!」




      <いよーしやっと追い付いたぁ!!!








 ケルピーのドリーに跨り、外に続く海から豪快に入国したのはジャネット。




「ジャネット! 君も来ていたのか!!」

「来ていたのかじゃないですよぉ~シルヴァ様ぁ~!! 何か楽しそうな話してたと思ったら、すーぐに船乗っちゃうんですもん!! 慌ててドリーで追いかけてきましたん!!」

「おじ様~!!! もしかしなくても、おじ様も参戦なさりますよね!? ねっ!?」

「リティカ様、そうお顔を近付けになられなくても、このジャネットは参戦するつもりですよ!!!」

「やったぁ~!! おじ様と楽しいパーティですわ~!!」




「よし皆の者、今すぐウィングレー家の屋敷に来い。パーティに参戦するに相応しい戦闘兵器ドレスコードは何か、共に考えようではないか!」

「賛成っ!!」

「うい~やったりますかぁ~!!」

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