1-21 戦闘開始


 数時間の仮眠をとった。目覚めは良好、やはり良いベッドは違う。俺は寝起きの寒さをしのぐため、椅子に掛かっていた学制服を羽織り、その足で議場へ向かう。


 議場の扉を開けると、廊下よりも少しだけ暖かい空気が肌に触れる。中に入り、扉を閉めると静寂が訪れる。


「あー、落ち着く」


 そう呟いて近くに置いてある椅子に座り、背もたれに体を預けた。中学の時に一度引きこもったせいか、一人でいる時間をたまに欲している時がある。しかし、そんな時間もすぐに終わる。


「んにゃ……」


 俺はその突然の声に、背筋を伸ばして勢いよく立ち上がった。そして、声のした方に目を向けると、長机の隅の方に誰かの後ろ姿が見える。大きめのブランケットを被っていて、誰なのかはっきりわからない。俺はゆっくりと近づいて、横から覗き込むように見る。


「お前かよ……」


 議場の隅で寝息を立てているのはミヤだった。その寝顔はなんとも無防備な、しかしそれが逆にこちらの眠気を誘う。

 俺はその隣に座ると、無意識のうちに手を伸ばした。


「にゃ……」


 寝言が多いのは眠りが浅い証拠なのだが、どうやら熟睡しているらしく、起きることはない。よく手入れされた滑らかな髪に、頭を撫でる手は止まらない。


「……ん……リュウ……」

「!」


 突然、名前を呼ばれてビクッとなった。そしてミヤの声はさらに続き、


「リュウ……」


 二人でいるにはあまりに広いこの会議場に、小さな声が響く。こんな状況だと、少し冷静さを欠いてきてしまう。前にもこんなことがあったような、と俺の心臓の鼓動は徐々に速くなる。


「リュウ……す」


 バアァン! と大きな音がして、議場の扉が開かれた。それと同時に、人がゾロゾロと入ってくる。

 慌てて俺はミヤの頭の上にあった手を引っ込めると同時に、その大音量でミヤが目を覚ました。


「うにゃ……? あ、リュウ、おはよー」

「おう、おはよう……」


 別に、何かあるのを期待していたわけではないが、ミヤの寝言が気になる。何の夢を見ていたのかを考えると、少しソワソワしてしまう。すると、先頭で入ってきたシューゴさんが、俺の肩を掴んで耳打ちする。


、やなぁ」

「!」


 すぐに通り過ぎていったシューゴさんの楽しそうな背中を見ると、俺は顔が熱くなるのを感じた。すでに耳まで赤くなっていることだろう。


「よっしゃ! 作戦会議や!」


 ▽


 俺たちは先ほど話し合った三組に分かれて、死神との戦闘に備えている。

 第一班は、神王を班長として、ショウ、レイラさん、将軍アリノの四人で王城の内部を。第ニ班の班長はシューゴさん、そして、リームさんと師団長マルクの三人がスプレード領の神殿を警戒している。そして、第三班はなぜか俺を班長にして、ミヤ、セラ、そしてイオ様の四人で王都を巡回している。


 また、それぞれの班には青い三角錐が配られている。聞くと、どうやら通信機のような働きをするらしい。


[みなさん、準備はいいですか。僕の方はもう限界です]


 青い三角錐が光ると、声が聞こえてくる。これはリームさんだ。死神を抑えていた魔力があと数秒で尽きるらしい。


[構わん、いつでも来い]

「準備オッケーです」


 俺と神王が答えると、すぐにリームさんの苦しそうな声が返ってくる。


[それでは……三秒後に解放します。三、二、一]


 初めての戦闘に速まる拍動。今までに経験の無いような汗が背筋を流れていく。


[ゼロ]


 その声を聞いた瞬間に、俺たちの目の前の地面には魔法陣が現れた。そこから、顔の無いフードと、死を思わせるような、怪しく黒光りする鎌がその姿を見せる。

 一つから二人、計五つの魔法陣から十人の死神が次々に現れた。魔法陣は次々に現れる。


 戦闘、開始。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます