第51話 ウォリーニ!
「まだ子供じゃないか?」
赤いフルフェイスのヘルメットを脱がせると、ライダーは歳の頃は17、8だろうか。幼い顔をしており、あんな激しいバイクのバトルを繰り返した相手だとは到底思えなかった。
突然、咳込むと、唇の端から鮮血を1筋流した。
「ウォリーニ!(クソッタレ)」
そう一言呟くと、ガックリと力が抜け意識を失った。
「待て。死ぬな!」
そう叫びながら身体を揺さぶったが反応は無かった。背中にくくりつくていた刀の鞘を外す。ベンツが路側帯に寄せて停めると、安が車の中から降りて来た。遠くからけたたましいサイレンの音が数々聞こえて来た。そして音が、ドンドン大きくなって来てこちらに近づいて来るのがわかった。
片側の車線が事故を見ようという野次馬的な欲求が渋滞を作り出していた。
少し離れた路肩に停めたベンツGLEの中から安が降りて来た。
「まさか襲って来るとは思わなかったな」
「ああ。想定外だ」
安が不満を口にするように呟いた。
阪神高速の上に出来た渋滞に対して、けたたましいサイレンの音と共にパトカーが「前を開けてください!前を開けて!」と怒鳴るような声がスピーカーから出しながら近づいてきた。そしてそのサイレンの音が近くで止まった。警官が2人降りて来た。年配の警官が、恐る恐る訊ねた。
「息はしているのか?救急車は?」
「いや、まだ救急車は呼んでいない。辛うじて息はしているが、急がないと非常にヤバイ」
女の身体を抱き抱えながらそう言った。それを聞いて若い方ね警官が、自分の体に付いた警察無線で救急車の要請をする。少し年配の警官が、こちらと目線を合わせるために蹲み込んで訊ねて来た。
「あなたの名前と職業と年齢を教えてください。生年月日と」
次々現場にかけつけるサイレンの音で話している声が掻き消される。警官が何度か、聞き直してからバインダーに挟んだ紙で、こちらの名前と生年月日を記入した。名刺入れをライダースーツのポケットから取り出し、私立探偵事務所の名刺を1枚渡した。警察官は、それを受け取りバインダーに挟むとそれを見ながら何事かをバインダーの紙に記入してから立ち上がって、安にも同じ事を訊ねた。安が答える。
「蛇喰さんに雇われているとは言っても、アルバイトだがな」
そう言って、安が笑った。
「2人は雇用関係なんですか?その2人が事故を起こした当事者なの?どちらが加害者で、被害者なの?」
「俺たちが2人で事故というより、襲われたんだ。被害者なんだよ」
「襲われた?」
「えっ?どういう事?交通トラブルなの?ここに来るまでにも、2台のバイクが事故をしていたけど、もしかしてそれらとも関係があるの?」
少し年配の警官が、蹲み込んで勤めて冷静に話そうとしていた。こちらと安をチラチラと見ながら訊ねた。
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