スペイン高速悪魔との死闘

第48話 スペイン高速悪魔との死闘

すっかり夕方は夜へと変わっていた。

新大阪から長柄橋を渡り淀川を横切る。前を走る谷河口の運転するベンツGLEには、安と西崎、嶋田が乗っていた。信号待ちでベンツの横に並んだ。西崎が、酔い覚ましのためにパワーウンドウを開けると、西崎が、谷河口に命じてCDを流させた曲が漏れ聴こえて来た。


曲は、アルディメオラの「スペイン高速悪魔との死闘」だった。頬を染めた西崎がなかなか艶ぽい。最初のパーカッションから、ベースの重たい音がスピーカーのウーハーを通して聴こえてきた。その後に、アルディメオラの超絶技巧のギターの音が聴こえて来た。信号が切り替わり、ベンツGLEが先頭を行く。


阪神高速守口線都島入口から上り線に入る。暫くすると、森小路を大きく左に曲がった所で異変に気付いた。3台のバイクが、こちらが運転しているGSXカタナの後ろに張り付いていた。ナトリウム灯の下を走り抜ける。皆オレンジに染まった。後ろの3台が等間隔で走って来るのが非常に気になった。ベッドライトの灯でどんな3台のバイクの車体の色がわからない。


3台のうち1台が加速し、こちらと横並びになった。スピードメーターに目をやる。90キロくらいだった。横に並んだライダーに目をやると、真っ赤なライダースーツを着ている。そして真っ赤なフルフェイスに黒のシールドをしているので顔は全く見えない。乗っているバイクは、KawasakiのNinja750ライムグリーンだ。真っ赤ななフルフェイスの後頭部からポニーテールにしている黒髪が揺れていた。


「女か?」

そう思った瞬間、更に驚いたのが、忍者のように刀を背負っていたのだ。驚いてKawasakiのライダーの顔を見た。しかし、シールドで顔付きが全く見えない。何故か相手は、並走してバイクを追い抜こうとはしなかった。そして緩やかなカーブに来た所で、後ろから2台のバイクが追い抜いていった。その2台を見て驚いた。HONDAのCRFと、YAMAHAのXSRだった。そして投石をして来た時に被っていたライダーのフルフェイスと同じ形のデザイン、同じ色のヘルメットだった。そして背中にゴルフクラブを張り付けていた。後を追おうとしてフルスロットルにアクセルを回そうとした瞬間、KawasakiのNinjaのライダーが、こちらをチラッと見た途端、左足を大きく上げてこちらの腹を目掛けて蹴ってきた。


「マジか?」

そう叫んだ。一瞬ハンドルが振られる。何度か車体が暴れたが、タイヤがグリップ力を取り戻して真っ直ぐに車体を立て直すことが出来た。Ninjaに乗っだライダーが、今度はこちらを見ながら背中に挿した刀を引き抜いた。

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