第47話 パーティーイズオーバー

「出来だけ急かしてみます」

「そうして頂戴」

西崎は、嶋田にそう申し伝えるとホテルビューティーアワーに向かうために、谷河口の車に乗り込んだ。またもやバイクでその後を追いかける。ホテルは、新大阪駅近くにあった。立体交差になっている道路を抜け、ホテルに着いた。西崎たちを先に車から下ろすと、ベルボーイから駐車場の場所を聞き、ベンツをホテルの裏側に回す。


ベルボーイに、ヘルメットのシールドを開けて訊ねると、「前の車と同じように裏に回ってください」と言われる。ホテルの裏側の駐車場にベンツGLEが停まった。バイクを停め、イグニションキーを切った。エンジン音が止まる。フルフェイスを脱ぎ、メットホルダーに引っかけた。こんな格好では、ドレスコードに引っかかり、伊勢屋建設興業30周年のパーティーには参加出来ない。ホテル内のラウンジ内で過ごす事にした。ソファーに座り、アイスコーヒーを注文する。スマホにショートメールが来た。

「今どこ?」

安からだった。


「ホテル内のラウンジハミングバスにいる」と、返信した。ちょっとした休息だった。この伊勢屋建設興業創業30周年パーティーで、本日の西崎の予定は終了だった。立ち上がる牛みたいな男が左右を何か探しながら歩いて来たと思ったら五十幡だった。手を上げて、ここにいる事を知らせた。ホッとした顔をしてこちらにやって来た。


「西崎さんたちは、パーティー会場に入りましたよ」

そう言うと向かいの席に腰掛けた。

「一緒に入らなかったのか?」

「勘弁してくださいよ。午前中まで雀荘で働いていた男なんですよ。こんな世界にいるだけで疲れますわ」

「離れて大丈夫なのか?」

「あれだけの人がいる中、おかしな事は出来んでしょう?」

五十幡の言葉に頷いた。安と松川が合流した。

「このパーティーで本日の予定は終了か」

安がポツリと呟いた。


「五十幡と松川は、ここのパーティーが終われば、帰ったらいいぞ。帰りは、車に乗っているだけなので、4人体制でガチガチに守るボディガードが必要だとは思えない。京都までは、安と2人で充分だろう」

「そうだな。阪神高速から名神に乗れば、何らかのアクションを起こしてくる危険性も低くなるだろう」

安がそう言って頷いた。

「また次回から、交代で1人が休めるようなシフト作りも考えていこうか」

そう言うと、みんなが頷いた。パーティー開催中、4人で交代しながら出入り口付近、ホテルの周りなどを見守っていた。しかし、パーティー開催中は特に何か変わった動きはなかった。

19時半になり、パーティーはお開きとなった。松川と五十幡とはホテルで別れ、安は西崎たちと同じ車に乗り阪神高速から京都方面に送る事となった。


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