第15話 警察事案
「今のところは、メールと、Googleの書き込みくらいのだけだ」
安がチラッと西崎を見た。
「ボディガードをするのは、こちらのお嬢さんかい?」
「お嬢さんだなんて‥‥」
彼女の頬が少し赤くなった。50代の女性にさりげなく「お嬢さん」だなんて言えるなんて、安正男、随分やり手になったな。感心するよ。メールの束を渡す。安が、全てに目を通した。
「お嬢さん、何が起こっているかはわからない。ただ蛇喰探偵事務所に電話相談した事は大正解だったな」
安がそう言って、ニヤリと笑った。
「このメールから察するにお嬢さん、僅か1ヵ月くらいでこの様々なアドレスからメールを多量に送って来ているという事は、お嬢さんたちが、何かトラの尻尾を踏み怒らせるような事をしでかした訳だ。これらのメールを送ってくる連中は、お嬢さんの会社なのか、それとも個人に対してなのか、その原因はなんなのかはわからない」
「お嬢さんは、やめてよ」
彼女が首を軽く左右に振り言った。
「だが、なんらかの不満を抱いている事は間違いない。そして不満は執拗で、ある種狂気めいている」
彼の分析に全く同意見だったので、頷くしかなかった。
「今はまだ嫌がらせに近いものだが、これが何か暴力的な行動に出てきた場合、警察事案になるかもしれない。そういう危険をはらんでいる」
彼女が、「うんうん」と頷いた。そしてため息をつきながらこう言った。
「あなたたちは、プロとして同意見だという訳ね。では状態が悪化したら、これからは警察事案ですと言って、あなたたちはハイ、サヨナラする訳だ」
安がこちらを見て訊ねた。
「蛇食さん、今ので正解なのか?」
「違うな。それが答えではない。プロとしては前もって、最悪な事態も想定しなければならない」
安がこちらの言葉に頷き言った。
「まして相手は、このメールでは日本語翻訳ソフトを使っている外国人というのが見える。こういう連中は、無茶な事をやりだしかね無い。非常に警戒すべきだな。日本という異国の中でも平気な奴らだ」
「外国人?」
彼女がすぐさま反応した。思わず天井を一瞬見た。
「まだこの事は、西崎さんに話していないんだ」
安が「しまった」と言った表情になった。
「大丈夫。私ももしかしたらという事は感じていたわ」
彼女が眉間を曇らせ、安の反応を見ながらそう言った。
「では、外国人だとして、1ヶ月前に何か思い当たる事は無いのか?」
「それだと余計何も思い浮かばないわ。他からも外国人と何かトラブルになったとは聞いていないわ」
突然、ドアがノックされた。
「はい。どうぞ」
嶋田が、ドアを開けると会釈をしてから室内に入って来た。
「先程届いたまたもや届いた苦情メールです」
西崎に数十枚のコピー用紙を渡すと、立ち去って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます