第2章 戻ってきた世界(お姫様付き)
第7話
「んん……」
俺は全身に冷たい感触を感じ、目を覚ました。眩しい光が一気に目の奥に入り込み、反射的に顔を顰める。
「ここは……」
何度も強く瞬きをして目を光に慣らした後、周囲を見回してみた。
一面雪景色で激しく吹雪いている、人通りが少なく広々とした道路。傍らには俺のスクールバッグが倒れている。
今朝、俺が転んだ場所そのものだった。
「戻ってきた……のか?」
咄嗟にスマホをポケットから取り出した。スリープモードを解除すると、日付と時間は、家を出てから数十分しか経過していなかった。それに、電波も復活していた。
「そういえば着信……」
着信が来ていたかもしれなかったので、確かめてみたら、悪天候につき本日は休校とするという学校からの連絡メールが届いていた。
「……無理する必要なかったじゃん……」
それを見て、一気に力が抜けた。もう少し遅く家を出ていたら、わざわざ寒い外にでる必要も無かったし、転んで頭を打って変な夢を見ることもなかったのに。
妙に現実感がある、変な夢だったな。いきなり変な女の子にキスしてくれとせがまれたり、やたらとおしゃべりな魔法使いが出てきたり。
……あの女の子、名前はなんていったっけ? 思い出そうとしてみたが、頭の中がもやもやしていて上手く記憶を呼び起こすことができない。
えっと、確か……。
「ここは……?」
俺より少し離れた場所に、赤い髪をした小さな女の子が倒れていた。
女の子は、不思議そうに頭をきょろきょろと動かしていた。
……あれ? この女の子、どこかで……?
「……マーちゃん?」
「……ハヤト?」
俺が頭に浮かんだ言葉をそのまま呟くと、女の子は声に反応したかのように、顔を俺に向けた。
そして俺の名前を、俺と同じように呟いた。
このつり目の赤い瞳、はっきりと、見たことがある。
「え……?」
まさか。
「マーちゃん?」
「そうだが……」
夢じゃ、ない?
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