第98話 早起きのコツ、教えます


 この一週間、キャンピングカー(RV)を借りて間欠泉で有名なイエローストーン国立公園、壮大な山々が連なるグランドティトン国立公園を巡りました。その後、一人で車を借り直して一転南下、ユタ州にある国立公園を駆け回っていました。


 その間に「カクヨム公式レビューをねらえ! ~Vol.01 新着エッセイ・ノンフィクション編~」で、公式レビュアーの髙橋 剛様より「なに言ってんだこの人?」とみなさんが常々思っていた感想を言葉にしてもらい、多くの反響を頂きました。


 しかし、毎日4時から5時に起き、日本を縦断できるほどの距離を運転し、平均8㎞/日ほどトレッキングして心身ともに大自然にどっぷり浸かっていたために、多くのお声がけには返信出来ておりません。たとえ「このヘンタイ!!」というコメントにさえ喜び、返信率100%を自負する僕といえども、電波という物理的紐帯がなければ返信することは難しく、自然の中で己の無力感に打ちひしがれて、とジャーキー(エルクとバイソン)を噛みしめていたのです。


 そして、昨日の朝一の便で家に戻り、見ないふりをしてきた大量の電子データの山と向きあいながら「大自然とは何だったのか」とディスプレイに張り付いてから、久しぶりに大きなベッドの上で眠りこけました。


 〇


 一日明けた今日。僕は今、早起きをしてこのエッセイを書いています。「旅行中は出来るだけたくさんの経験をしたい。多くを見て回りたければ、多くの時間が必要。時間を作りたければ、早く起きればよい」という至極単純な論理展開により早起きへと辿り着いたヘンタイ(自称)。


 普通にしていれば8時間から10時間はスヤスヤしてしまう性分ながらも、「この教訓を捨ててなるものか!!」と12歳頃から思い続けてきた僕にとって早起きなんて容易いものです。もう片手では数えきれないほど早起きに成功しているので、こっそりとコツを教えて欲しいという方はご連絡ください。ジャーキー2枚(アリゲーターなら1枚)で伝授します。こっそりとした耳打ち(オプション)じゃなくていい、という方はこのまま読み進めて下さい。


 早起きのコツは「今日にワクワクすること」です。


 朝起きた時に「今日はあれがある」「これがしたい」というものを見つけること。それが、早起きのコツです。現に僕はこうして「エッセイを書きたい」という欲をとっかかりにして目を覚ましました。このとっかかりはなんでもいいです。


 あのゲームが発売される、あの子に会える、遠足がある、冷蔵庫に冷えたプリンが一つだけ残っている、エッチな深夜番組の録画予約してたのを思い出した、良く知らない女の子からメッセージが届いている……など、ワクワクドキドキできるシチュエーションはたくさんあるはずです。


 それを意識的に作ってあげましょう。毎日が同じことの繰り返しだと、人は夢の世界に逃げたくなるもの。だから「垢Ban確実なエチエチ小説を昨晩予約投稿した」みたいな小さなことでも良いのです。朝起きる口実を用意してあげましょう。これでもうあなたの早起きは成功したようなものです。早起きしたい方、ぜひ一緒に頑張りましょうね。


 〇


 一点だけ注意事項があります。それは決して寝る前にワクワクを意識しないことです。「明日は……!」となった時点で逆効果です。

 まだ見ぬゲームのおもしろさを想像し、あの子と何を話せるか策を練り、プリンの弾力にとりつかれ、布団の中でピンク色に悶々とし、将来の伴侶に思いを馳せる……。

 

 いいですか、こうなったら終わりです。翌日、寝ぼけた目に短針が映った時、頭は現実逃避と後悔の濁流にのみこまれて混乱し、全身が沸き立つような焦燥に突き上げられることになります。


 上記に列挙した失敗はあくまで例であることを強調しておきますが、僕もこれに似た体験を乗り越えて、こうしてアメリカで過ごしています。成功している人は失敗もしているもの。失敗自体は恥ずかしくありません。むしろ、早起きを成功させたい人のためにも共有してあげましょう。


 さて、早起きして気持ちよくエッセイを書き終えた今、僕は清々しい気持ちでいっぱいです。これから僕を待ち受けている大量のメールがありますが、早起きした僕は無敵です。僕は颯爽とベッドルームへと舞い戻り、フカフカの枕に顔をうずめます。


 もし、二度寝のコツを知りたい人がいればご連絡ください。ジャーキー2枚でお伝えします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る