第68話 安易に教師に憧れてはいけません
大学日常面白エッセイ「果たして、大学生活はモラトリアムなのか否か」(※1)を書かれている本庄 照さんが「今は亡き電子科卒の父よ……。あなたの子は、中学で電気につまづき、高校の物理基礎で赤点を取り、大学の教養で留年しかけ、四年になってなお個別で電気を教えられずに苦労しています……。」とツイートしているのを見て、勝手に「分かるわぁ」と失笑してしまいました。
僕も学生時代に塾講師のバイトをしていました。小学校から高校生までの生徒がいましたが、見事に全ての範囲の問題が分かりませんでした。いま、謝ります。大切なお子さんを預けて下さった親御さん、すみませんでした。
「大学生が小学生の問題解けないってやばくない?」という痛烈な批評は甘んじて受け入れましょう。うるせぇ、分からねぇもんは分からねぇんだ。特に算数。だから無垢な顔で「先生、この問題わからない」と言って持ってこないで。先生も分からないからね。ポディマハッタヤさん(※2)の顔なら分かるからね。鉛筆の芯を取る人ね。
同じことが英語や国語でも起こりえます。中学ならまだしも高校英語や高校国語にもなってくるとアヤシイ。文法とか古語とか覚えてないです。
ここで僕が言いたいのは「生徒よ。先生をあんまり信じるな」ということです。もちろん本職や、バイトでも大多数の先生は尊敬に値すると思いますが、僕のように「やべぇ、俺、この子達より頭悪いわ」と焦りながら指導している先生もいます。
物事を教えるってものすごく大変。教えるには説明する深さの少なくとも2倍以上は理解していないと難しい。
アメリカで2年過ごしたって英語を教えられる気は全くしません。教えられるとしたら「とりあえず『ハァ?』と聞き返されても相手に悪意はない。声が小さいか、発音が悪いかのどっちかだから、物怖じせずはっきりしゃべれ。あとはノリ」ということだけです。
でも、生徒って「先生なら知ってる」と思いがちじゃないですか。「ごめんね、答えを知ってても、理解深度は一緒なの。先に予習したかしてないかの違いだよ」と声を大にして言いたかった。言えませんでしたが。
また、憧れ(幻想)も抱きがち。ある中学生の女の子は、(好意込みで)慕ってくれました。僕は模範的な爽やか青年(自称)を演じましたが「ごめんね、歳をとってても恋愛経験は一緒なの。普段はお尻を出したり、パンツ一丁で縄跳びしたり、全裸になったりしかしてないの」と声を大にして言いたかった。もちろん、言えませんでしたが。
改めて生徒が得るべき教訓を一つ。
「安易に教師に憧れてはいけません」
この人は変態かもしれない。
そう、言い聞かせましょう。
※1 果たして、大学生活はモラトリアムなのか否か
https://kakuyomu.jp/works/1177354054890329379
※2 ポディマハッタヤさん(ニコニコ大百科より)
出演作品は『一本の鉛筆の向こうに』(光村図書:小4対象の国語教科書/福音館書店:月刊雑誌『たくさんのふしぎ』)
上半身裸というワイルドな姿で汗水たらしながら採掘作業を行う姿と、インパクトの強い彼の名前は日本の小学生たちの心をわしづかみにした。多くの小学校では「ポディマハッタヤさん」が流行語となったり、同級生のあだ名となったりした。
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