Hentaiもたまには真面目に

第21話 自作ゴロ合わせの威力


 先日、奥森さんのエッセイを読んでいた時のことです。

 

 ほふく前進で進め 第89話 元素記号覚えてる?

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054890998764/episodes/1177354054894809271


 元素記号は「水兵リーベぼくの船」までしか覚えていませんでしたが、ふと学生時代が懐かしくなって来ました。


 近いからという理由で目と鼻の先にあった大学を目指していた時のこと。僕は文系で日本史選択だったので「石川晶康 日本史B講義の実況中継」という非常に分かり易く楽しい参考書を使って勉強していました。

 全5巻で一般的な漫画8冊分に相当するかなり分厚い参考書です。数学が苦手な僕にとって日本史は貴重な得点源。英語、生物と共に落としてはいけない重要科目でした。


 だからこそ必死に覚えたのがゴロ合わせ。本書でも沢山紹介されています。


 ――――――

 金印いーなー        ……57年 奴国王が光武帝より印綬

 平清盛イイ胸毛       ……1167年 清盛太政大臣

 イザクニまとめて南北朝合一 ……1392年 南北朝合一

 いちごパンツで本能寺    ……1582年 本能寺の変

 いくやマイマイおや胃カサカサか? (伊藤博文から始まる総理大臣の頭文字)

 ――――――


 また、高校生の時は「水曜どうでしょう」という北海道のローカル番組にハマっており「試験に出るどうでしょう」という企画を見ながら大泉洋が作り出すゴロ合わせに爆笑しながら勉強をしていました。


 ――――――

 富士山見るならバルコニーで! (コニーデは成層火山、代表的な山はいわずもがな)

 群馬くん、イワシ食い過ぎ、船頭気分か? (先土器文化の代表的な遺跡は群馬県の岩宿遺跡)

 ――――――


 いくつかは今でもそらんじることが出来ます。


 既にゴロ合わせは無数にあるのですが、それ以外にも覚えることは大量にあります。苦手な暗記でも、石川先生やにょういずみさんが作る傑作たちの威力を体感して、馬鹿な僕はこう考えました。


「よし、自分で作ればいいんだ」


 そして、今、残しておいた参考書を引っ張り出して恐る恐るページをめくります。殆ど覚えていない日本史の奔流を縫いながら進んでいくと、ふとシャーペンで書かれた文字が刻まれているのを見つけました。そこでは、懐かしい顔ぶれが「やぁ」と軽く手を挙げて僕に挨拶をします。感動の再会です。


 ――――――

「なんだい、ハットリくん?」

 鳥羽院政の経済基盤の覚え方。

 後の朝となる覚寺統は条女院名義で羽上皇に荘園を寄進した。

 

 まさかのハットリくんと友達。高校時代はどんな交友関係を……。



「”天才”山寺宏一、縁日なのにAEONに出現」

 院政期の天台宗における内部争いのゴロ合わせ。

 天才      ……台宗は

 山寺こういち  ……門と門で対立

 えんなのに ……山門の代表は円、寺門は円

 AEONイーオンに出現  ……山門は暦寺、寺門は城寺


 最後が苦しい、というか何してんだ天才よ。経緯が理解出来ませんが、めっちゃ良い声で吹き替え講座でもやっているに違いありません。



「ストⅡはリュウよりケン! むねむね無学でそげぇんなこと言うな!」

 鎌倉文化で来日した禅僧の覚え方。

 リュウよりケン  ……蘭渓道は、北条時が建てた長寺で臨済宗を教える

 むねむね     ……北条時が招く(ゆめゆめと言いたかったのだろう)

 無学でそげぇんな ……無学むがく祖元そげんは、時宗ときむねが建てた覚寺で開山


 怒っている方が無学を晒していそうなやりとり。なぜか九州風味。ちなみに、僕は春麗派です。


 

「ツナほしーな。よーし、じゅんじに頼もう」

 江戸時代の文治政治(学問や教養によって治める政治方針)の始まりの覚え方。

 徳川家正之が補佐。末期の禁(跡継ぎのいない武士が死に際に急遽養子をとることを禁じる法律)を緩和し、(家臣が主人の後を追うこと)を禁止した。


 じゅんじって誰やねん……。じゅんじ何でツナ持ってるねん……。


 ――――――


 如何だったでしょうか。高校生の僕が必死に考えたゴロ合わせたち。ぱっと見で残っているのはこのくらいでした。


 今の今まで忘れていたことを鑑みると大した威力を発揮しない上に、対象範囲がマイナー級。受験以降、使う機会はありません。

 しかし「何か作ったぞ」と思い出せるくらいには満足感があったので、一時的には役に立っていたのでしょう。


 皆さんも覚えたいものがあればゴロ合わせを考えてみて下さい。

 意外と楽しいかもしれません。


 普通に覚えるより時間がかかる(実話)とか言っちゃあいけません。

 歴史にはロマンが必要なのです。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る