バンソー!

作者 志馬なにがし

63

21人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

面白さの中に散りばめられられた物に抜群のセンスを感じる作品です。
まず、この小説の1つ目のエピソードが1km、2つ目が2km…となっていて、42.195kmで読者も完走なんて、とてもオシャレ。

主人公の友弥は可愛い女の子にドキドキワクワクするどこにでもいそうなヘタレな大学生。
登場人物の日常が面白おかしく綴られていて、おちゃらけっぽい話の中に散りばめられたエッセンスやちょっとした言葉にグッときてホロリとさせられます。

「だれかのためになりたい」?
「偽善者」って事?
そうじゃなくてそれが一番自分がやりたい事。
『自分のためだ』

誰かの為になりたくても失敗ばかりしてきた友弥は、今度こそはやりたい事を実現させられるのか?

沢山の笑いの中に、友弥と目の不自由な美少夏奈を結ぶ絆、その影にある仲間達との絆を強く感じる作品です。

★★★ Excellent!!!


主人公は痩せるために、と、陸上サークルに入ったものの、頼まれてヒロインの伴走をすることに。

走るという行動は、基礎的な運動です。
しかし、誰かに合わせて走るとなると、とたんに難しくなります。
体力、スピード、そして呼吸。
全く同じ能力値の人なんていない。
だから、主人公もヒロインも、お互いに成長をしていくことになります。

その意識の変わっていくところがとても丁寧で、読んでいる側も高揚感に包まれます。
二人と一緒に駆けていきたいと思うのです。 


そして、キャラクターがとても魅力的。

巻き込まれるかのようにして、伴走をすることになった主人公ですが、実はとてもお人好しで優しい根っからの主人公タイプ。

ヒロインの夏奈ちゃんは、芯が強くて、やりたいことがはっきりしている子です。
嫌な思いをさせて来た人を「追い抜こう」なんてちょっと無茶なことも言っちゃいます。
でも、そんなところも可愛い。
主人公はよく容姿を褒めますが、性格もとても可愛いです。

他にも主人公を太らせたい音葉ちゃん、なんだかんだ面倒見のいい鬼木さん。
そして、ヒロインを大切にしているお姉ちゃん、秋穂ちゃん。
個性豊かで、生き生きしていて、このお話をさらに面白くしてくれているなって思いました。




★★★ Excellent!!!

なにかを始める目的なんて、惰性であることも少なくないだろう。
当作主人公の早淵くんも、惰性でなんとなく長距離走に挑むことになる。
ところがそこで出逢った夏奈ちゃんに見入ってしまったものだから、ずっきゅん。
その夏奈ちゃんに誘われちゃったものだから、長距離走またやってもいいかな? なぁんて。
18歳の下心丸出し、よいですね。


始めは小さなきっかけだったことが、一生の大切なものになっていく――当作品は、そんな青春物語です。


ここからは書き手としての見解ですが、この作品はびっくりするほど無駄がないのです。
登場人物たちも、展開も、伏線も、小さく重なっていくギャグも、お色気にいたるまで、なにもかも。
タイミングが全部いいのです。
シナリオ構成なら商業作レベルのそれで、申し訳ないけど今まで読んできたどの作品よりも格段に上手い、上手すぎる。
ムカつくなぁ……ワタシだってここまで書きたいのになぁ……。あーーーなにがしさんずるいなぁ!!!
中盤はそんな気持ちになっていって、でも早淵くんと夏奈ちゃんと一緒に42.195キロ走り続けたいと思ってしまうんです。


副題を見て、先が長そうだなと思うかもしれない。
でもフルマラソンはそのとおり、『42.195キロ』なんです。
1キロずつ読んでいくと、一緒にフルマラソン走破してるんです。

オシャレかよ!!!!

あーー悔しいな!!
このセンス悔しい!!


色眼鏡マジの無しで、書き手が読んで勉強できる一作でもあると思います。


さて、ここはあなたの部屋です。
そして同時に、楕円形の400メートルトラックでもあります。
スタート地点の早淵くんの手には、いつものように『キズナ』が用意されています。
それを夏奈ちゃんが掴んでいるけれど、夏奈ちゃんはあなたが一緒にそれを掴んでくれるのを待っていますよ。

さ、部屋の中にいながらみんなと一緒にフル… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

盲目の美少女と一緒にフルマラソンを走る。
バンソー(伴走)とは二人三脚のようなものだ。

この作品をどうジャンル分けしようか。

スポ根?
ラブコメ?
飯テロ?

強いて言えば、この作品のジャンルは「なにがし」(作者の名前)である。

それほどまでに完成されたテンポとエモーション。

軽い書き味に騙されて、いつしか登場人物全員を好きになっている。

なんという筆力であろうか。

ともかく。
美少女が出てくる胸アツの物語が読みたいなら、この作品は読むべきだ。

早くしないと書籍化して非公開になるかもしれぬぞ?

★★★ Excellent!!!

 作品タイトルのバンソーとは、視覚障碍者がマラソンを走るときの伴走者のことです。そしてこの物語においては『はまゆうの花言葉』と連なる人生の伴走者という意味につながっていきます。


 主人公は、子供食堂を営む親の元で生まれ育ちました。その影響なのか、他人を助けることに一定の志向性を持つようになったみたいです。本人はそのせいで損をすることもありました。高校時代は水泳部に所属していたのですが、力みすぎたせいで大舞台で失敗をして、多くのものを失いました。

 だから大学生になってから、やりたいことを失って、だらだらしながらアルバイトする日々です。

 しかし彼には、他人を助けたいという気持ちが、心の底でまだくすぶっていました。そのかいあって、ヒロインとの出会いをはたします。

 ヒロインは視覚障碍者です。視覚障碍にも等級があって、彼女はまだほんの少しだけ視力が残っています。ですが彼女はマラソンが好きです。なので長距離を走るには伴走者が必要でした。

 主人公は高校時代水泳部だったので、一般的な男子よりはスタミナがあるため、彼女を手助けすることになります。当初はシンプルな下心もあったんですが、彼女と一緒にトレーニングを続けていくうちに、少しずつ彼女に惹かれていきます。

 しかし甘いだけではないのが人間関係です。自分の昔からの知り合いや、彼女の縁者たちとの交流を通して、主人公は自身の志向性を考えるようになっていきます。

 偽善者。

 この言葉は現代においては、かなり印象の悪いものになっているでしょう。しかしこの物語においては、主人公とヒロインの出会いのきっかけになる大切な言葉になります。

 なぜなら主人公がほんの少しでも偽善者でなければ、ヒロインを助けようと思わなかったからです。

 そんなバカなと思った人、冷静に考えてください。視覚障碍者と一緒にフルマラソンを走るんですよ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!


一番最初に感じた印象は、文章が美しい。というものでした。というよりは、するすると滑り込んできて、美味しい。とても読みやすい文体だな、と。

その好印象は、胃袋にアイアンクローを仕掛けられるような、悪辣とも言える飯テロによってすみやかに粉砕されます。これは許せません。絶対に、こちらの小説は深夜に読み始めるべきではございません。早々に『クッ』ってなります。せめてちゃんとご飯を食べてから読み始めましょう。

そんな注意喚起をいたしましたところで、物語全体に対する私なりの感想を、簡単にですが述べさせていただきます。

まず感動したのが、このお話の主題は、『小説』との相性がものすごく良いんだなぁ。という点についてでした。
主人公は、ほとんど目が見えない少女の伴走者。そのため彼は、言葉をかけます。あたりの景色が、どれだけ美しいものなのかを。小説を読む私たちは、彼の言葉を通して、その風景を見るという経験をします。
見えない景色が、浮かび上がる感動。
文字をカタチに変換するというのは、小説を読む際にはあたり前のことだと思うのですが、そこに新鮮な感動を得たというのが、声を大にして言いたい最初の「ここ好き」のポイントでした。

次に、とにかく登場人物たちが、『良い』。
主人公とヒロインが、フルマラソンを走ろうとする。この物語の主軸は、非常にシンプルなものです。
ではその軸をなにが彩るのかというと、それがつまりは『人』なわけです。(それとテロルなご飯描写。)
そんな彼ら彼女らが紡ぐ物語が、ほんとうに良いんです。
みんなが、がんばれと。がんばろうと。主人公たち自身を含めて、「目標」に向かおうとする物語の流れは、一切の雑味なく、極めて純粋に素敵でした。

「ううん。おもしろい」

結局の所、感想といえばこの一言に集約されてしまうほどに、綺麗にシュッと筋の通った、真っ直ぐな一本であったこちらの作品… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

これを書いているのが二〇二〇年二月三日。その前日、マラソン女子視覚障害クラスで、道下美里選手が二時間五十四分二十二秒の世界記録を樹立したというタイムリーなニュースが入ってきました。彼女は東京パラリンピックの代表に内定しており、金メダル獲得が期待されます。

さて、この小説は視覚障害を持つ女の子に出会った男性の物語です。主人公は、ひょんなことがきっかけでブラインドマラソンにおける彼女のガイド(伴走者)となります。彼女と一緒にトレーニングを重ねることで走る楽しさに目覚めていくと同時に、伴走の難しさ、彼女を取り巻く人々の気持ち、そして彼女自身の気持ちを知ることになります。

本作はライトな文体で読みやすいです。また、トレーニング手法や理論もきっちり描かれており、経験者でも違和感なく読むことが出来ます。いわゆる、リアリティがあるってやつですね。最も高かったときの最大酸素摂取量が推定七十二の人が言うのだから間違いありません(ただし自分は自転車競技)。

ゴールの先にあるのは笑いか涙か、それとも――? 是非その目で確かめて――いえ、あなたの心で感じてみてください。