第229話 収容所を作るよ!!
人物紹介その3暫定も同時に投稿しました。随時更新予定です。
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「『プローホルの状態はどうかね?』」
6日土曜日も終わろうかという時間に、ジョージの通信機を借り、スカイウォッチャー経由で、エドワーズ空軍基地のシンフィールド中将とやり取りをする。
『はい、医師の話しでは開頭しての手術により腫瘍の除去はできたそうです。現在は麻酔で眠っており、栄養と水分を点滴で補っています。しかしながらアヘン中毒のほうは時間がかかるとの事です。依存性の少ない薬にて徐々に離脱させるそうです。1カ月や2カ月といった短期間では無理でしょう。ようはしばらく様子見で入院ですな。』
「『説明をありがとう、中将。』」
『いえいえ。そちらの処理も大変なのでは?レンジャーを2中隊ほど追加で派遣しましょうか?』
「『いや、彼らには交代で警備任務にあたってもらいたから増援は無しだ。では、通信終了。』」
『了解。』
さてさて、中将にはそうは言ったもののどうするかなぁ。最終的な報告をさっきジョージがまとめてくれたんだけど、味方の被害は負傷者78人戦死者0。負傷者のうち軽傷21、重傷38、欠損19。それで全員治療済みだから実質0人。対して帝国だけど負傷者はこちらも治療したので実質0。ただ、9,785人が戦死。生存者全員である14,582人が捕虜となった。グチンメレ砦にいた部隊だけが無事だったね。
なので、僕の思いとしてはツルフナルフ砦の近くに簡易収容所を設置して、さっさと賠償金を払ってもらい帝国へと還したい。ああ、遺体はべつだけどね。すでにグチンメレ砦に駐留している部隊が故人の判別と遺族への通知などをしてくれている。【エリアリペア】で服や装備品一式、個人識別票も元通りになったのがよかったね。
でも、問題は本来、ここにはいてはいけない所属の部隊がいたんだよなぁ。プローホルの叔父、アルチョム・コバリョフ公爵麾下の
でもね、ちょっと調べてみたらアルチョムはコバリョフ公爵家に婿入りした立場らしいんだよね。プローホルの母親、皇帝オレーク・アイソルの正室にして皇太后レオニーダ・アイソルの実妹レギーナ・コバリョフにね。
当然と言えばそうなのだろうけど、コバリョフ家はレギーナの実家だから、家の中での力関係は当然、レギーナが上らしいんだよね。あ、ちなみにアルチョムは侯爵家の次男らしい。そして、当たり前のように政略結婚。夫婦仲まではわからなかったけど、【遠隔監視】でコバリョフ公爵家を覗いてみた。ここはアルチョムの執務室かな?
『あなた、本日は
『さあな、儂は何も知らんぞ?』
『ほう、あなたは何も知らないと?』
『ああ、そうだ。』
アルチョムがそう答えると、美人なレギーナ夫人が目を吊り上げ執務机をバンッと叩く。結構、大きな音がしたね。ビックリしちゃった。アルチョムも目を丸くしている。
『・・・嘘を言うな!!これを見つけたぞ。“アドロナ王国へ親征するプローホル・アイソル第2皇子の軍への合流とその後の活動について”だと!?アルチョム、貴方がコバリョフ家の財を無駄に浪費しようと、収支を上回らず、民に税を新たに課さなければ見過ごしてきたが、これは見過ごせん!!婿の貴方に軍の全権を渡してはいない。なのに、これはなんだ!?そして、なぜ、
『い、
『この帝国で殿下とお呼ばれされるのは唯一人、エドアルト・アイソル殿下のみだ!!第2皇子のプローホルを甥とはいえ殿下と呼ぶな!!姉であるレオニーダ皇太后も皇室内での継承争いを止めるべく動いている。無論、エドアルト殿下を立太子するためにな。そんなこともわかっておらんのか!?』
『グッ・・・。』
アルチョムから反論が無いのを確認すると、フゥと一息ついて続ける。
『それに、貴方はこの1年、結構な商人と個人的にお会いにならていたわね。今、それを調査しているわ。ああ、それと人付き合いもね。悪い結果にならないことを祈っているわ。妻として、正妻としてね。それでは、お休みなさい。若い側室の
そう言って、レギーナ夫人は部屋を後にする。残ったのは顔を青くしたり赤くしたりしているアルチョムのみだ。夫婦喧嘩ってこんな感じなんだねぇ。コワイコワイ。コバリョフ公爵家の領地はどこなんだろう?ま、今はいいか。
明日は、朝から捕虜収容所の建設をしないとね。冒険者ギルドにも“指定の級無し”で依頼を出しているけど人員があつまるといいなぁ。もちろん、商業ギルドにも手の空いている職人さんを派遣してもらうようにお願いしてある。まあ、どちらも今日の昼過ぎに依頼したモノだから何人来るか・・・。
明けて8月7日を迎えた。自分たちの朝食と捕虜たちに配食をしてから僕とクリス達“シュタールヴィレ”の面々はツルフナルフ砦に向かう。何人ぐらい依頼を受けてくれたかな。そんな思いでツルフナルフ砦の練兵場に入ると「「「ウオオォォォォォ!!」」」という歓声と共に出迎えられた。え!?なに!?どしたの!?
歓声を上げているのは今日の依頼を受けてくれた人達みたいで、主に職人さんが中心になっている。「ガイウス閣下ぁ!!戦勝おめでとうございます!!」「流石は辺境伯閣下。万歳!!」「町が荒らされる心配がなくなりました。ありがとうございます。」等々、祝ってくれる言葉が多いね。中には、「よい報酬の依頼をありがとうございます。」なんてのも聞こえてちょっとだけ笑みを浮かべる。
練兵場に設置された演説台に立ち、手を挙げるとますます歓声が野太くなる。あ、男の人の割合が多いだけで女の人もいるよ。僕は【風魔法】で全員に声が行き届くようにしてから言う。
「諸君、君たちの言葉はしっかりと私の胸に届いた。では、静粛に。」
ピタッと歓声が止む。ボブ達教官も似た様な事をやっていたなぁ。
「さて、諸君は依頼をしっかりとみてやって来てくれたと思うのだが、相違ないかね?もし、手違いでこの場にいる者や気が変わった者は帰ってくれても構わない。」
そう言って、練兵場の出入り口を指差す。誰も動かないね。
「では、依頼書の通り、本日より
そう言うと、1人の男の人が挙手をした。身なりからして冒険者かな?
「閣下、依頼書には工事日数が短ければ短いほど報酬の上乗せがあると聞いたのですが、本当でしょうか?」
「勿論。領民、国民に嘘をついても仕方がないだろう。最低でも銀貨による上乗せになるので、励んでもらいたい。どうかね?答えになったかね?」
「はい!!ありがとうございます!!」
報酬の上乗せの事について少し話しただけで活気づいた。
「他には無いかね?よろしい。では、これより、捕虜収容所建設予定地へと移動する。」
移動は徒歩だ。僕たちは騎乗だけどね。目的地には30分程で着く。ツルフナルフ砦からネリー山脈の方に約1,5km離れた場所だ。流石に黒魔の森の近くだと警備・防衛に
「さて、諸君、まずは地ならしだ。【土魔法】が使える者達はすぐに取り掛かってもらう。その他の者達は森の木を伐採し材木へ加工すること。【水魔法】で水分をゆっくりと抜けば、乾燥できるからな。ああ、勿論、我々も作業を行う。では、かかってくれ。」
「「「はい!!」」」
さてさて、何日で完成するかな?
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