第145話 話し合い

 王都近くの森にある模造アルムガルト王都邸に戻ってきた。玄関扉を開けると、子供たちが随分楽しそうに遊んでいた。いいことだね。グイードさん達は申し訳ないと謝ってきたけど気にはしないよ。それよりも、


「皆さんの服を買わないといけませんね。あ、ここでは素の僕でいきますので口調は気にしないでください。」


「確かに閣下の仰る通りです。替えの服がありませんので、今はよいですが季節的にあと2,3日経つと臭いが・・・。」


「それでは、グイードさん達は今から僕と一緒に王都に行きますから、その時に買いましょう。時間も無いから今から行きましょうか。」


「「「はっ、閣下。」」」


 というわけで、王都の庶民街の服屋にやってきました。衛兵さんに聞いたらここのお店が一番品数が多いらしい。本当なら中古の服なんだけど、折角なら新品の服をプレゼントしたい。そういうことで、グイードさん達が止めるのも聞かずに手当たり次第に服を選んでいく。勿論、下着も。女性陣の下着は紙に書いてもらってそれを店員さんに渡し見繕みつくろってもらった。結構な金額になったけど気にしない。買った物はすぐに偽装魔法袋に【収納】し、本日のメイン王城へと向かう。


 貴族街の門では衛兵さん達に最敬礼されてしまった。答礼として馬上の僕は頷いて片手を挙げることしかできなかったけどね。そのまま王城へと向かう。予定時刻よりも早く着くけど問題ないでしょ。呼び出したのは国王陛下なんだから。


 王城正門では誰何を受けるので、下馬して貴族証を見せる。グイードさん達も同様に。すぐに案内の近衛兵さんと馬を預かる厩舎員さんがやって来る。馬をそれぞれ預け、2人の近衛兵さんの先導で国王陛下の執務室へと向かう。執務室に近い場所で案内してきた近衛兵さんのうちの1人が告げる。


「ガイウス閣下のみが入室を許可されております。護衛の方々は別室で待っていただきます。」


「うむ、わかった。グイード卿、アルト卿、ロルフ卿は彼の案内について行くように。」


「「「はっ、閣下。」」」


「では、こちらへ。」


 別室に向かう4人の背を見送り、僕は執務室の前へと立つ。近衛兵さんが執務室の扉の両脇に立つ陛下直属の近衛兵さんに告げる。


「ガイウス・ゲーニウス辺境伯閣下が参られた。」


「了解した。陛下に確認を取る。」


 1人が扉をノックし、中に入ってすぐに出てくる。


「どうぞ、閣下。」


 近衛兵さんが促す。僕はため息小さくつき、


「失礼します。」


 そう言って、扉を大きく開く。中には国王陛下と宰相のアルノルトさんと内務大臣のマテウスさんがいた。みんな疲れたような顔をしているが気にしない。ピーテルさんが動くまで“貴族閥”の影響が大きくなるのを放っておいたのが悪い。ま、理由は色々あるんだろうけど。


「ガイウスよ。よく来てくれた。ああ、護衛の者は部屋から出てもらえるか。4人のみで話しをしたい。なに不届き者が侵入したとしてもガイウスが蹴散らしてくれようぞ。」


 部屋の中に居た2人の近衛兵さんは困惑しつつも頭を下げ退室する。そして、扉がしっかりと閉められる。僕はすぐに【風魔法】で防音・物理耐性の障壁を展開する。3人ともビックリしていたけど説明したら納得してくれた。


「誰が聞き耳を立てているかわかったのものでは無いからな。ガイウスよ、苦労をかけるな。」


「これぐらいは、苦労のうちに入りません。陛下。」


「お主であればそうであろうな。さて、3人とも改めて忙しい中、集まってもらい感謝する。特にガイウスは昨晩からだが、休息はとれたかの?」


「はい、陛下。大丈夫です。」


「うむ。ああ、立たせたままですまんな。適当に腰掛けなさい。」


 ならば、言葉に甘えて。扉の前に適当に椅子を【召喚】し、それに座る。ついでに小さめの卓も【召喚】してその上に自分用の果実水とコップを置く。その様子をポカンとした顔で眺める3人。


「さて、それでは、私が此処ここに呼び出された理由をお伺いしましょう。」


 僕がそう言うと、アルノルトさんが顔を真っ赤にして立ち上がり、声を荒げる。


「ガイウス殿、いくら今回の件の功労者であろうとも、その態度は陛下に対して不敬であるぞ!!」


「不敬?ご自身の側室、つまりは妻が私に害をなそうとしていたことに対しての謝罪もしない方に対して不敬?しかも、私は呼び出し理由を聞かされてもおりません。いくら国王陛下でもわきまえるべき礼儀があるのでは?それとも、高位の方々が通われる学園アカデミーでは自尊心のみを育てるのですかな?」


「アルノルト殿、ガイウス殿、落ち着いてくだされ。ガイウス殿、それ以上は不敬罪に抵触する可能性があります。お気をつけ下さい。」


「よいのだ、アルノルト、マテウス。此度の件は余の不徳の致すところであった。ガイウスよ謝罪を欠いたことをこれで許してはくれまいか。」


 そう言って、立ち上がり頭を下げる国王陛下。僕も立ち上がりそれを受け取る。


「陛下の御心、確かに受け取りました。先程の不敬、お許しください。」


「うむ、許そう。さて、では本題に入ろうかの。アルノルト頼む。」


「はっ、陛下。ガイウス殿、怒鳴りつけて申し訳なかった。」


「いえ、陛下への忠誠心の高さを再確認させていただきました。さ、本題を。」


「それでは、明日の12時にガイウス殿に行っていただく、今回の騒動の国民への演説について話し合いたいと思います。まずは、場所ですが、どこがよろしいでしょうか?」


「王城ではダメか?」


「それですと、ガイウス殿を拝見できる民の数が限られてしまいます。下手をすれば、その集団が暴徒になる可能性も。」


「ふうむ、駄目か・・・。」


「アルノルト殿、マテウス殿に確認したいことがあるのだがよろしいだろうか。」


「どうぞ。」


「ありがとう。マテウス殿、掲示板への告知の張り出しは既に済んでいるのだろうか?」


「ええ、内務省総出でしましたから済んでいますよ。」


「であれば、王都の民の大半は明日、演説が行われていることは知っているわけですな。それなら、楽な方法を取りましょう。」


「ほう、それは何かの?」


「はい、陛下。王城の上空で私の翼を最大限まで広げ、【風魔法】により広域演説を行うのです。これならば、聞き漏らすものもいないでしょうし、一ヶ所に人を集めずにすみます。どうでしょうか?」


「「「採用!!」」」

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