第144話 みんなの様子

 結局、嘆願書が来た場合は司法部の文官さん達に書類地獄を見てもらうことになった。司法部のみなさん強く生きて!!そんで、僕はお昼だからとさっさと内務大臣執務室をあとにした。宰相のアルノルトさんから17時過ぎに国王陛下の執務室に来るようにお願いされたけどね。国につかえるって疲れるねえ。


 グイードさん達と合流し、ちゃちゃっと王城を出て貴族街を抜けて庶民街に来たら食料の買い込みを手分けして行う。グイードさん達の家族の分も忘れずにだ。買ったはしから偽装魔法袋に【収納】していく。それが終われば、王都の正門を抜けて誰にも見られていないことを確認し森に入る。


 そして、壁で囲った模造アルムガルト王都邸の中に入り、買い込んだ食料を放出する。今日の昼食までは昨日渡しておいた食糧で足りたようだ。グイードさん達には16時ごろまで家族団欒かぞくだんらんを過ごすように告げ、森の中へと戻る。


 すぐにマルボルク城の上空に【空間転移】し、翼を広げ滑空しながら城壁に近づく。僕に気付いた守備兵が城内に走って行くのが確認できた。呂布か張遼、高順の誰かを呼んでくるのだろう。


 しばらく滞空していると呂布が城壁に現れた。僕はすぐに彼の近くに着陸し挨拶をする。


「やあ、1週間ぶりかな。どうだい城の使い心地は?」


「いやあ、中々に素晴らしい城ですな。森から魔物が出てきてもすぐに対処ができますし、森に入り魔物を狩り街道を通る商人とも物々交換や魔物の素材を引き取ってもらい収入としています。奴隷たちへの教育も上手くいっています。何よりも街の代官であるユーソ殿のおかげで兵たちも窮屈な思いをせずに暮らしています。この通り、拙者も通行証を戴きました。」


 そう言って、呂布が懐からツフェフレへの通行証を見せてくれた。裏書は代官のユーソさん、衛兵隊長のバルブロさん、防衛隊長のラッセさんの3人分あった。町の有力者が3人も裏書に名を連ねていたら大丈夫だね。


「それはよかった。しかし、この城でも窮屈な思いはしないとは思うけど。」


「あー、ガイウス卿。女性の経験はありますか?」


「いや、僕はまだ12歳だからね。あー、そっか。そうだよね。本にも書いてあったよ。人間の3大欲の1つ性欲だね。確かに、ここには僕の所有である奴隷しか女性はいないもんね。」


「ご明察の通りです。問題を起こさないように言い聞かせておりますので・・・。」


「うん、娼館に行くのを禁止にしたりはしないよ。でも、お金は足りる?」


「はっ、先ほどもご説明した通り商人との商いをしておりますので、大丈夫です。」


「うん、わかった。もし、お金に困ったらユーソ殿に相談してほしい。」


「かしこまりました。」


「それじゃ、僕はユーソ殿に会ってから別の場所へ行くよ。」


「奴隷たちには会われないので?」


「今、訓練中でしょ?声が聞こえるよ。」


「拙者には聞こえませんが、確かに今の時間は屋外での訓練時間です。では、ガイウス卿がお越しになられて気にしていたことをお伝えしておきます。」


「うん、よろしく。呂布。」


 僕は呂布に別れを告げ、ツフェフレの町で代官のユーソさんと会い、呂布たちに通行証を出してくれたことの感謝を述べた。僕が帝国の国境砦を破壊したのも多少誇張されて伝わっていた。「流石はガイウス閣下」と言われたけど、破壊したのは【召喚】したアメリカ陸軍の砲兵隊なんだよなあ。説明が面倒くさいから愛想笑いで済ませたけど。


 ツフェフレの町を出た僕はニルレブに【空間転移】する。すぐに“シュタールヴィレ”のみんなに会おうと思い行政庁舎に向かう。すぐにヘニッヒさんが出てきて執務室で応対してくれた。どうやらみんな黒魔の森に依頼クエストをこなしに行っているらしい。それと、昨晩はヘニッヒさんのお屋敷にみんな宿泊したみたい。


「お早いお帰りでしたな。」


「いやあ、疲れました。後日、こちらにも何らかの形で報告が来るとは思いますが、“貴族閥”の貴族家に対する捕縛劇がありまして。」


「その中心にいたのが閣下でありましょう?あの書状も閣下を呼び出す口実だったのですね。上手くいったのでしょう?」


「もちろん、上手くいきましたよ。そうでないと5体満足で此処にはいられないでしょうね。」


「ほう、それはそれは。お話しを聞かせてもらえるでしょうか。」


「ええ、もちろん。」


 ということでヘニッヒさんに王都で昨晩から今朝方にかけて起こった出来事を話した。


「ピーテル閣下は不器用な御仁だったのでしょうか?」


「どうでしょう?彼の思惑通りに“貴族閥”の貴族を捕縛できました。どちらかと言えば、諦めに近い感情を抱いていたのではないかと思います。自分自身に対してではなく貴族社会にですが。」


「直接、お会いになられた閣下がそのように言われるのであれば、そうなのでしょう。」


「おっと、そろそろ時間です。本当は皆にも会いたかったのですが。あ、ヘニッヒ卿は皆が泊まっている宿をご存知ですか?」


「ああ、“シュタールヴィレ”のみなさんにはわが屋敷にて過ごして戴くつもりですので、ご心配なく。」


「ご迷惑ではないですか?」


「いえ、全く。屋敷にいるのは私と妻と使用人たちのみですから。子たちが学園アカデミーに入学してからは、屋敷の中が随分広く感じていたものですから丁度良いのですよ。」


「それでは、お願いします。」


「閣下はこれからまた王都ですか?」


「はい、そうです。」


「それでは、お気を付けて。」


「ありがとうございます。それでは。」

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