第138話 意外な結末

 おはようございます。5月4日金曜日午前2時です。午前1時30分前にはベアトリース・オリフィエルの部屋の捜索が終わり、証拠も見つかったことで近衛兵さん達が彼女を拘束し、王城内の牢へと連行していった。念のために腕の立つ衛兵さんも5人ついて行った。


 そして、僕とアルフォンスさん、一旦司令部に寄り増強された衛兵隊はピーテル・オリフィエル侯爵邸へと向かっていた。全員第1種戦闘兵装だそうだ。王城に入る時よりも重装備だ。因みに王城に入る時には第2種戦闘兵装だったらしい。あれでも十分な重装備だったけどなあ。ちなみに今回は馬にも馬鎧が着せられている。勿論、馬鎧も青と白でいろどられている。あ、僕たち4人の馬には【風魔法】で風の障壁を展開しているから、馬鎧は着けていないよ。


 “ガッシャガッシャ”と馬鎧の音が夜の王都に響く。ひづめの音は馬鎧の音に掻き消される。王都衛兵隊司令部よりしばらく走ると、アルフォンスさんが兜のフェイスガードを下ろした。それにならい後続の衛兵隊員達もフェイスガードを下ろす。僕たちもだ。


 そして、ようやく目的地が見えてきた。当直であろう門番が慌てるのが見える。【魔法】が使える者は全員詠唱し終わり、【魔法】を撃つ準備ができている。


「目標!!オリフィエル侯爵邸の正門!!全員、放て!!」


 色んな魔法弾がオリフィエル侯爵邸の正門に命中する。しかし、門自体には全く損傷が無いように見えた。


「魔法を無効にする魔道具ですな。どうします、ガイウス殿?」


「私が武功で成り上がった証拠をお見せしましょう。後続してください。行きます!!」


 突出した僕に門番達が矢を射かけてくる。それは、すべて風の障壁で弾かれる。ヒヒイロカネ製の槍を取り出し、さらに速度を上げる。そして、


「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 雄叫びと共に槍を門の中心へと突き刺す。チート全開の槍撃を受けた門はバラバラになって吹き飛んだ。その様子を呆然とした様子で見ている門番を無視し、衛兵隊がオリフィエル侯爵邸の敷地内になだれ込む。すぐに、正面と裏口を押さえる2部隊に分かれる。僕たちはアルフォンスさんと共に正面からだ、玄関の鍵を打ち壊し突入する。すると、待っていましたとばかりに矢が射られる。


「うーむ、奇襲は上手くいったと思ったのだがなあ。」


 大盾を構えて矢を防ぎながらアルフォンスさんが言う。僕は首を横に振りながら答える。


「いえ、よく見てください。敵さん武器しか持っていませんよ。着込んでいても革鎧ぐらいです。」


「ちいと待ってくだされ、この歳になると視力が中々・・・。ふむ、どうやらそのようですな。ならばいくのみ!!総員、突撃にぃぃぃぃ移れぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「「「オオォォォォォォ!!」」」


 衛兵隊が大盾を前面に出して突撃を開始する。そこかしこで武器を持った使用人?が衛兵隊によって槍で打ち据えられている。ある程度玄関ホールでの戦闘が落ち着いたら執務室へ向かう。場所は使用人?に聞いた。


 執務室の扉の前にアルフォンスさんとグイードさん達、そして6人の衛兵さんと共に立つ。アルフォンスさんと目配せし、彼が扉をノックする。


「王都衛兵隊司令官のアルフォンス・リシャルト侯爵である。ピーテル・オリフィエル侯爵よ。扉を開けられよ。」


 既に中に居るのは【遠隔監視】で確認済みだ。映像を視界の隅に出していると、アルフォンスさんの声を合図にしたかのように本棚から分厚い本を取り出し、開いた中にはワインのようなモノが入っていた。念のため鑑定してみると、【赤ワイン(毒):まろやかな味の赤ワイン。毒物が混入してある。】とでた。これはいけない。


「アルフォンス殿!!打ち破る!!服毒自殺しようとしている!!」


 その言葉にアルフォンスさんはすぐに反応し、助走をつけ大盾で扉を殴りつけ、打ち破った。そこには今にも毒入りワインを口にしようとしているピーテルがいた。僕はすぐに跳び、手刀をワイングラスを持った右手にくらわせた。鈍い音がしたから折れたのだろうが気にしない。


「ふむ、流石は武功でその地位を得たガイウス殿。早業はやわざですな。アルフォンス殿もご健勝のようで。衛兵隊が此処まで来たということは、姉もラウレンツ・コルターマン子爵も捕まりましたか。良いことです。しかし、ゆっくりと死なせてほしかったものですな。ああ、それと、この執務机の引き出しの中に貴族閥の過激派からの書状などがありますので、それを証拠に捕縛に動けばよいでしょう。私が封蝋印と署名、捺印が無いと認めないと言ったので、充分な証拠となるでしょうな。」


 落ち着いた声でピーテルが話す。うん?なんか違和感があるなあ。


「ピーテル殿は私のことが嫌いで憎いのでは無かったのですか?」


「ふむ、確かに書状ではそのように書きましたな。ま、ガイウス殿という撒き餌のおかげでだいぶ釣れましたよ。王国をダメにする者どもを。これで私も心置きなく死ねるというところだったのですがね。」


 痛むであろう右手をブラブラさせながら残念そうに言う。


「貴方は、まさか、自分を犠牲にして・・・!?」


「おっと、それ以上は言ってはいけませんな。何処どこに過激派連中の耳があるかわかりませんから。それと、この書状を受け取っていただきたい。開けるのは、そうですな。明日、いや日付が変わっておるので今日ですな。国王陛下に謁見する前にでも読んでください。」


 そう言って、執務机の中から一通の書状を取り出し、渡してくる。僕はそれを受け取り、偽装魔法袋に【収納】した。僕との話しが終わったと判断し、アルフォンスさんと衛兵さん達がピーテル卿の捕縛に動く。彼は抵抗を全くせずに捕縛された。


「ピーテル殿、衛兵隊司令部で聞きたいことが山ほどできました。ご協力してもらいますよ。」


「もちろんですとも、アルフォンス殿。自死できなかったのもフォルトゥナ様の導きでありましょう。それでは、ガイウス殿、裁きの場でまた会いましょう。」


 そして、大量の証拠の書状と共に彼は連行されていった。

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