第135話 潜入
王都に戻り、騎乗して4騎で貴族街へ向かう。そして、貴族街の門番をしている衛兵さんに王都衛兵隊司令部へ案内するよう命じる。内容は“国家への反逆及びゲーニウス辺境伯への誘拐・殺人未遂”だ。口外しないように言い含めて立ち番の衛兵さんたちへは心づけを渡す。案内してくれる衛兵さんには少し上乗せした額を渡す。
王都衛兵隊司令部は王城の貴族街の中心。王城の正門前にある。そこに辺境伯1人と騎士爵3人が急ぎの案件があると言って飛び込んできたのだ。すぐに、当直であった副司令官のセム・ブルス子爵が担当になった。
「“国家への反逆及びゲーニウス辺境伯への誘拐・殺人未遂”ですか・・・。これは、また大きな事件でありますな。閣下。」
「うむ。私の誘拐・殺人未遂犯はすでに目星がついておる。今から、そ奴の屋敷に私を囮として潜入し、証拠を押さえる。証拠の確保が終われば諸君らに屋敷に突入してもらい、身柄の確保お願いしたい。」
「閣下が囮に?どのようにしてですか?」
「こうするのだ。グイード卿、やれ。」
「申し訳ありません。閣下。」
グイードさんが僕の正面にまわり、謝ってから顔面を殴り始める。最初、その様子を呆然と見ていたセムさんだったが、すぐに正気を取り戻し、グイードさんを羽交い絞めにする。流石は王都衛兵隊の副司令官だ。すぐにグイードさんを僕から引き離した。
「やめるのだ、グイード卿!!気でも狂ったか!?」
「いや、セム卿よこれで良いのだ。実はな。此処にいる騎士の3人は犯人に命令され、私を誘拐、あるいは殺害しようとしてきた実行犯なのだ。だが、私が自身で鎮圧し屈服させ、服従してもらった。」
そう言うと、セムさんは警戒しながらもグイードさんを離した。僕は話しを続ける。
「それで、話しは最初に戻るのだが、む、やはり、顔が
「・・・了承したくはありませんが、ご命令とあらばわかりました。失礼ですが、子供が傷ついていくのを見るのは、
「ラウレンツ・コルターマン子爵とそのお仲間12人だ。お仲間のほうは血判状を取り押さえたあとでよかろうよ。」
「了解しました。とりあえず当直の中隊から2個小隊を動かします。血判状の原本確保後は残りの12名の捕縛のため第1待機の2個中隊を動かすように準備しましょう。」
「うむ、それでは、我々は先に動く。」
「はっ、お気をつけて。2個小隊も5分以内に出動可能です。私が
僕たちは衛兵隊司令部を出ると、すぐに騎乗する。だけど、今回キチンと騎乗するのはグイードさん達のみだ。僕が縄で縛られ、
ラウレンツ邸までは、馬を走らせればすぐに着くので、衛兵隊との連携を考えればなるべくゆっくりといかなければならない。それに、ラウレンツ邸の門番に変な疑問を抱かせないように、街門がわに一度まわる必要がある。呂布隊を【召喚】して一気に突入したい気持ちに駆られる。
そして、ようやくラウレンツ邸へ着いた。
「何者だ。」
「グイード・シャルエルテ騎士だ。ラウレンツ閣下のご命令に従い、荷物を確保した。」
「少しお待ちください。確認を取ります。」
「なるべく早くな。荷の鮮度が落ちる。」
【遠隔監視】でグイードさんを中心に映像を見る。他にも複数の画面を表示する。ラウレンツ・コルターマン子爵は自室で休んでいるようだ。門番は、家令のもとへ走って行き、グイードさんたちの事を報告している。家令はすぐに門番にたいして門を開け通すように指示を出し、ラウレンツを起こしに行く。執事がラウレンツの部屋に着いたところで、門番が戻ってきた。
「確認が取れました。どうぞ、お入りください。荷物もそのまま、屋敷内へ運び入れて欲しいとのことでした。」
「わかった。」
ようやく門が開き馬が進むのを感じる。そして、降ろされる。僕は、グイードさんに肩で
「お三方、お仕事ご苦労様でした。グイード様、荷物の鮮度はいかがでしょうか?ご主人様はそれをお気になされておりまして。」
「それならば、問題ない。今は大人しいが、苦労した。」
「確かに、お洋服も替えられたのですね。」
「返り血を浴びた状態で門を通過できるかわからなかったからな。“荷を改めさせろ”と言われても困るからな。」
「確かにそうですな。お時間を取らせ申し訳ありません。ご主人様の執務室へご案内します。」
「ああ、早く頼む。クタクタなんだ。」
うん、僕も早くしてほしいかな。麻袋の中でぐったり状態を維持しているのも楽じゃないんだよねえ。ようやく、ラウレンツの執務室に着いた。執事がノックすると、
「早く入れ」
と声が聞こえ、グイードさん達3人が中に入る。執事は部屋の中には入ってこなかった。部屋の中にはラウレンツ、護衛の男が2人、グイードさん達3人と僕。そんなこんなで何とか無事に潜入出来たよ。さて、麻袋から出されたら行動開始だ。
「さあ、早く荷の姿を見せるんだ。」
「はい、閣下。」
そう言って、グイードさんが僕を麻袋から放り出す。受け身が取れないから地味に痛い。光の眩しさには目がすぐ慣れた。映像で眺めていたからな。僕が放り出された瞬間、グイードさん達3人は自然とバラけて護衛の男のほうにアルトさんとロルフさんが、出入り口を塞ぐようにグイードさんが立つ。
「これは、これはガイウス・ゲーニウス辺境伯閣下ではありませんか。ようこそ、わがコルターマン家へ。お顔の形が以前、王城で見たときとは変わっており、最初は
ラウレンツは下卑た笑みを浮かべながら近づいて来る。そうだ、どんどん近づいてこい。【遠隔監視】で衛兵隊が配置に
目の前にラウレンツが立つ。手に持ったステッキで僕の側頭部を打ち付ける。呻き声を上げながらも倒れずに、ラウレンツを睨みつける。
「おお、怖い怖い。そのような目で見られますと、もっと
そう言って、ステッキを振り上げた瞬間、僕は縛っていた縄を引き千切り、反撃に出る。
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