第123話 ゲーニウス領

 昨日は更新できずに申し訳ありませんでした。そして、本日は更新が遅れてしまい申し訳ありません。言い訳をさせていただくと、サービス出勤ニサービス残業、私、疲レタ。ベッド最高。ですw


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 4月28日の深夜から29日の早朝にかけてツァハリアスさんと“ゲーニウス・シントラー相互安全保障条約”をまとめ上げた後、29日の夕方にはインシピットに戻り、30日は黒魔の森で、グレイウルフリーダーの“ルプス”と会い、適当に魔物狩りを行なって時間を潰した。


 そして、本日、5月1日火曜日、天気は晴天。旧ナーノモン領現ゲーニウス領の領都“ニルレブ”に“シュタールヴィレ”のみんなと来ている。移動はお約束の【空間転移】で一瞬、町への入門検査も貴族証でラクラク。そして、目の前に広がるのはニルレブ行政庁舎に着いた僕たちの前に、ひざまずこうべを垂れ代官を中心とした文官さん達に衛兵を中心とした武官さん達。


 とりあえず、名乗りを行い、それぞれの仕事に戻ってもらう。残ったのは代官さんと衛兵隊長さん、駐留国軍の司令官さんの3人。そのまま、4人で話しができる代官執務室に案内される。クリス達は冒険者ギルドや街の様子を見てくると言って分かれた。気をまわしてもらっちゃった。


 執務室に着き、応接用のソファに座ると、秘書官さんが紅茶を出してくれた。礼を述べ、対面に座る3人を見る。緊張しているというよりも警戒しているような感じだ。まあ、もう一度、挨拶をしておこう。


「改めて、ガイウス・ゲーニウスです。爵位は辺境伯位を賜わっております。ああ、口調は公の場以外ではこれが素ですので、お気になさらず。皆さんもリラックスなさってください。」


「それでは、我々も改めて、私は、現在この領を治めさせていただいている“ヘニッヒ・ローエ”と申します。爵位は子爵位を賜わっております。また、秘書官のラウニです。平民ですが優秀な人物です。」


 そう言うと、ヘニッヒさんの後ろに立つ秘書官のラウニさんは頭を下げる。


「私は、駐留国軍の総司令を務めております“ベレンガー・フラーケ”と申します。爵位は伯爵位を賜わっております。」


「私は領都衛兵隊司令の“ウルリク”と申します。平民であります。」


 お互いに挨拶と共に握手をする。武官の2人は予想通りの武骨な手だったけど、文官であるヘニッヒさんの手に剣の握りダコがあるのには驚いた。そんな僕の反応を感じ取ったヘニッヒさんは笑いながら言う。


「実は、若いときに負傷しまして、その後遺症で左足の膝から下の感覚が鈍く、左腕も上がらないのです。ですから、今はこうして文官として国に仕えております。しかし、昔の習慣で剣を振るのが日課になっておりまして、このような手になっております。」


 確かにゆったりとした服を着ているからよく見ないとわからないけど、左肩よりも、右肩の方が盛り上がっている。服の袖から見える腕も右手のほうが太い。


「もし、その古傷が治るなら治したいですか?」


 僕が問うと、ヘニッヒさんは一瞬だけ怪訝な表情をしてすぐに真剣な表情になり、


「治したいです。」


 とハッキリと言ってくれた。僕はその言葉に頷き、背中から純白の翼を生やす。その様子に部屋にいる4人が驚く。僕は、ヘニッヒさんの左手を手に取り、彼の身体の全ての不調・怪我が治ることをイメージして唱える。


「【ヒール】。」


 唱え終えると同時に手を放し、ヘニッヒさんに問う。


「体の調子はいかがですか?」


 彼はソファから立ったり座ったりを繰り返し膝から下を撫で、その後は立ったまま左肩をグリングリンと回し始めた。すると、何ともいえない表情となり、僕の手を握りながら、


「あり・・がとう・・ございます・・・。」


 と震える声で言った。僕は笑顔で、


「どういたしまして。」


 と言いながら翼を消した。僕の【ヒール】見ていた3人はポカーンと口を開け、その後、僕とフォルトゥナ様に対して祈りを捧げ始めた。一拍遅れてヘニッヒさんも祈り始めた。話しを終わらせてから【ヒール】をすればよかったね。


 4人が落ち着いてから僕がニルレブに来た理由を話す。


「実は、国境を見に行きたいんです。どのような防衛体制になっているかを見てみたいんです。それが終わればニルレブを中心に各町を見に行きたいですね。なにせ5月末には僕が政務に軍事を執り行うのですから。」


「ガイウス卿、国軍の司令官としてはお止めしたいですが、私個人の意見としては賛成です。国境まで護衛をつけましょう。」


 そうベレンガーさんが言ってくれたが、僕は辞退する。


「案内をしてくださる方のみで結構です。僕にはパーティメンバーがいますので。準1級が1人、3級が1人、準3級が1人、6級が2人、9級が1人です。それに、帝国が何か仕掛けてきても少人数のほうが逃げやすいでしょう?」


「まあ、確かにそうなのですが、ガイウス卿に万が一があってはいけません。腕の立つ者を案内に付けます。それと、護衛に3人。これも腕の立つ者を付けます。これが条件です。」


「わかりました。でしたら、その方々には僕が何をしようが口外無用と伝えてください。」


「わかりました。先程の【ヒール】のような特別な能力が?いえ、これは聞いてはいけないことでしたね。申し訳ない。」


「いえ、お気になさらず。それと、今日はニルレブを見てまわるつもりです。衛兵隊の方々の手をわずらわせることは無いとは思いますが、厄介事が向こうからやってきたら、全力で抵抗し排除します。その時はウルリクさんよろしくお願いします。」


「了解しました。ここは、帝国との国境が近いということもあり、血気盛んな連中が集まります。まあ、大抵はすぐに騒ぎを起こして我々に捕まるんですがね。」


「それって、冒険者が多いですよね。」


「ええ、そうですね。」


「冒険者を代表して謝罪します。」


「いえ、閣下のせいではありませんので。」


 その後は、ニルレブのオススメのお店などを聞いて、行政庁舎を後にした。さて、クリス達はまだ冒険者ギルドにいるかな?

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