第110話 アルネバーの町
遅くなりました。申し訳ありません。スマホで打つのって面倒ですねぇ。
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「見えてきました。アルネバーの町です。」
14時ごろにゴームさんが、クリスの乗る馬車と騎乗して並走していた僕に報告するように言ってきた。黒魔の森に近いこともあって、インシピットの町のように防壁は高くて頑丈そうだ。門の所では、衛兵さんが検査を行っている。まあまあの列ができている。よし、貴族特権を使わせてもらおう。
クリスに「ちょっと行ってくる。」と言って、黒馬を駆けさせる。すると、こちらを視認した衛兵さんの中から、隊長さんらしき人が2人の衛兵を引き連れやってくる。駆け足から徐々に並足に戻し、衛兵さんと対面するときは完全に停止し、僕は下馬する。
「お急ぎのようだが、列に並んでもらえるかな?」
隊長さん(仮)が穏やかな口調で言ってくる。しかし、後方の2人の衛兵さんは油断なく槍を構えている。よく訓練されているようだ。僕は貴族証を取り出し、
「私はガイウス・ゲーニウス辺境伯である。黒魔の森にてコボルトどもと戦い、人命救助を行った。その際にコボルトどもから保護した者たちが、送り先にアルネバーを希望したので護衛してきた。見えているであろう?あの隊列が。周りを囲む騎馬隊、あれは、私の私兵だ。(ごめんね。呂布。私兵なんて言って。)」
「貴族証、確かに確認いたしました。ご無礼、申し訳ありません。」
貴族証を確認した彼らは、
「よい、貴殿らは職務に忠実であったまで。咎める気など元より無い。兎に角、保護した者たちはコボルトどものせいで
「わかりました。
「いや、それは私がしよう。貴殿らは準備を頼む。それと、貴殿の名は?ああ、罰のために聞いているのではないから安心してほしい。」
「はっ、名乗りが遅くなり申し訳ありません。
「では、ホーコン殿よろしく頼む。」
そう言って、騎乗しクリス達の所に駆け足で戻る。ゴームさん達の乗っている馬車の御者さん、テディさんにホーコンさんから指示された場所に馬車を向かわせるように伝える。先頭で呂布と並走しながら、
「偉ぶる口調って疲れるねえ。」
「しかし、ガイウス卿はこれより、領地を治めるのです。領民が他の領地の領民に見下されたり、なめられたりしないためにも、武と智で地位を得たガイウス卿は対外的には偉ぶる必要があるでしょうな。」
「はあ、仕方ないよねえ。人生って思い通りにならない。」
「だからこそ、人は、その人生を悔いのないように生きるのだと拙者は考えます。」
「確かにそうだね。おっと、もう目的地だ。さあ、ここからは貴族を演じよう。呂布、部隊を後方に整列させよ。その後は検査が終わるまで小休止をとりたまえ。」
「御意。」
呂布は部隊をまとめ、後方に整列し、ゴームさんと冒険者たちの馬車だけが検査を受けるようにする。ホーコンさんが駆け足でやって来て、
「辺境伯様、お連れの兵の方々と残り3台の馬車は、町に入らないので?」
「ああ、そうだ。我々は、アルムガルト辺境伯領のインシピットへ向かう。」
「そうでしたか、それと、申し上げにくいのですが、辺境伯様の来訪を上司に伝えたところ、アルネバーの代官が辺境伯様にお会いしたいと申しておりまして、今、こちらに向かっております。」
「承知した。では、壁外で待たせてもらおう。」
「重ね重ね、申し訳ありません。」
「ホーコン殿のせいではあるまいよ。気にするでない。」
「ありがとうございます。」
そして、2台の馬車の検査が終わる頃に代官がやってきた。男性だと思っていたが、若い女性だった。
「馬上より、失礼する。ガイウス・ゲーニウスと申す。辺境伯の地位に叙されている。」
「ベティーナ・プライスラーと申します。辺境伯様には妹のベルタとその仲間の命をお救いくださり、誠にありがとうございます。」
そう言って、彼女は
「気にされることではない。あれは、運よく我々が間に合っただけのことだ。フォルトゥナ様に感謝すべきであろう。」
「でしたら、フォルトゥナ様の使徒である。ガイウス様に感謝を。」
そう言って、祈り始めた。うん、まあ、それで気がすむならいいかな。
「ベティーナ殿、どうやら、我々が保護してきた者たちの検査が済んだようだ。別れの挨拶を言いに行きたいのだが。」
「これは、気が付きませんで、申し訳ありません。出来れば、代官屋敷にてお茶でもと思ったのですが、ホーコンからの報告によれば、今日中にもインシピットに向かうとか。」
「ああ、そうなのだ。だからこそ、なるべく早く出立したい。」
「承知しました。また、お時間のある時にお寄りください。規模は王都や領都には負けますが、それでも民のために精一杯、
「うむ、時間のある時に、冒険者として気楽に寄らせていただこう。それでは、ここで。」
「道中、お気をつけて。」
ベティーナさんの礼と見送られ、ゴームさんたちのほうに向かう。すぐに僕に気が付き、
「ガイウス様、この度は誠にありがとうございました。馬車はこちらでお返しします。迎えの馬車が、壁内の店から来ますので荷物も大丈夫です。“ゴーム・ラーデン”というそのまんまの名前の店を各地に展開しています。ご用命の際は是非とも。」
「承知した。本店がニルレブにあるのであれば、顔を合わせることもあろう。それまで、達者でな。」
「はい、ガイウス様も。」
そう言って、その場を御者がテディさんからアントンさんに変わった馬車と共に離れる。アントンさんそんなに笑いを噛み殺したような顔をしなくてもいいでしょう?僕だって、好きでこの口調で話しているわけではないんだから。冒険者たち?彼らはユリアさんから再度、説教をくらい、頭をペコペコと下げながら早々に壁内に入っていったよ。
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