第109話 奴隷たちの処遇
遅れてしまい申し訳ありません。
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5台の馬車に分乗して、一番先頭には御者さんの操る馬車にゴームさんとその荷、護衛にアントンさんとレナータさん。2台目から4台目までは、奴隷の人たちと警戒のために御者台にクリス、ローザさん一、エミーリアさんが座る。最後の5台目は冒険者たち5人とユリアさんだ。そんな編成で一路、プライスラー子爵領の北の町“アルネバー”を目指す。
目指すのいいが、街道に出るまではずっと黒魔の森の中だ。呂布たちを残しておくんだったと思い、馬車の屋根に乗り、大声で「今から【召喚】を行うので驚かないでください!!」と各馬車に通達したあと再度、呂布、高順、張遼、そして騎馬のみで600の兵を再度【召喚】した。
「お早い再会でしたな。」
呂布が笑いながら言ってくる。僕は、以前召喚した黒馬を【召喚】し、その背に飛び乗り、呂布と並走する。
「全くだね。見ての通り、僕たちは馬車での移動だ。中にはさっきのコボルトの集落で捕らえられていた人たちが乗っている。近くの町まで護衛を頼みたい。」
「承知。しかし、今回、歩兵隊は無しですか?」
「うん、森の中では頼りになるけど、移動速度がね。できるだけ早く目的の町に到着したいんだ。先頭の馬車のみ御者さんがいるから、彼の操る馬車について行ってもらえばいい。他の馬車を曳く馬にもそう伝えてあるから。」
「ほう、ガイウス殿、いやガイウス卿は馬の言葉がわかるので?」
「神様から力を少しもらったからね。それでね。」
「なるほど。わかり申した。では、護衛は任せてくだされ。高順は中衛。張遼は後衛だ。それぞれ、200ずつ率いろ。前衛は俺がする。」
「「はっ。」」
「それじゃあ、3人ともよろしく。」
「「「御意。」」」
そう言って、3人が部下と共に配置に
「クリス。ゴームさんと冒険者たちはアルネバーの町でいいだろうけど、奴隷たちは、そうはいかない。泊まる場所が無い可能性が高い。アルムガルト辺境伯軍の兵舎で空いているモノは無いかな。」
「あると思います。しかし、アルネバーから、本邸までは距離がありすぎます。北の町ツフェフレの方が近いかと。しかし、駐留部隊の分しか兵舎は無いでしょう。」
「ふむ、なら、僕たちはアルネバーからツフェフレを目指そう。そこで、宿舎を【召喚】してみるかな。」
「お出来になるので?」
「やってみるよ。さて、それじゃあ、ダヴィド様に許可を貰わないといけないね。少し、行ってくるよ。呂布たちがいるから大丈夫だとは思うけど、指揮はアントンさんに
僕はそう言って、アントンさんの乗る先頭の馬車に近づき、荷台に飛び乗る。それと、同時に黒馬を「ありがとう。また、あとで呼ぶね。」と言って。【送還】する。
「おう、ガイウスどうした。」
「アントンさん、僕は今から、アルムガルト辺境伯家の本邸まで行ってきます。理由は、奴隷たちの宿泊場所の確保です。」
「飛ぶのか?」
「飛んで、一瞬ですよ。」
「ああ、わかった。気をつけてな。」
アントンさんと同乗のレナータさんは、このやり取りで、僕の今からしようとしていることが分かったみたい。ゴームさんはただ心配そうな顔で「お気をつけて。」と言ってくれた。僕は頷き、荷台から飛び降り、翼を生やすと、一気に上昇する。
ある程度、隊列から距離をとったら、アルムガルト辺境伯家本邸の近くまで【空間転移】する。そのまま、10分ほど飛行して、本邸の正門に降り立つ。衛兵さんが
「ゲーニウス辺境伯様、ようこそお越しになりました。今、人を使いに出しますので少々お待ちください。」
「もちろんですとも。先触れも出さずに急に来たのですから。さ、職務に戻ってください。」
「ありがとうございます。ゲーニウス辺境伯様、狭いですが、詰所でお待ちください。」
「いえ、ありがとうございます。」
詰所で待つこと2分、すぐに執事さんが来た。そして、そのまま応接室に通される。ダヴィド様とヴィンフリート様のお2人は席に着いていたが、立ち上がられたので挨拶を交わす。席に着き、メイドさんが紅茶を出して退室してからダヴィド様が口を開く。
「さて、ガイウス殿、早速だが話を聞こうかの。」
「はい、今日、黒魔の森にてコボルトキングとコボルトの集落を潰しました。1,274体いました。そこで、捕らえられていた人々を救出したのですが・・・。」
そこから、ゴームさんのこと、奴隷を買ったことを説明して、
「ですので、その奴隷たちを住まわせる場所が必要なのです。防衛力のある、アルムガルト辺境伯領に、詳しく言えば北の町ツフェフレの近くに、奴隷たちのための宿舎を置くことを許可していただきたいのです。」
「ふむ、ずっとかね?」
「いえ、もちろん、ゲーニウス領が本格稼働すれば、そこに移動させます。1カ月ほどです。」
「ならば、許可を出そう。」
「父上!?」
「なんだ、ヴィンフリートは反対か?」
「ある意味、ゲーニウス辺境伯の民を預かることになるのです。もし、彼らに被害があれば・・・。」
「ツフェフレの町の防衛隊は、アヤツの指揮下にある。大丈夫であろう。」
「ああ、代官はユーソでしたか。確かに彼なら町の防壁外に宿舎を置いても、守り通すでしょう。」
「なら、決まりじゃ。ほれ、ヴィンフリート、早く書状を書いてこんか。ガイウス殿が動けんであろう。」
「はい、父上。では、一旦席を外します。」
そう言って、部屋を出るヴィンフリート様。そのあとは、いつも通りダヴィド様と閑談で時間を潰す。話す内容は、今日のコボルト戦だ。クリスが活躍していたと話すと、嬉しいような、困っているような表情で聞いていた。10分後には、アルムガルト辺境伯家の封蝋印を押した書状を持って、ヴィンフリート様が戻って来た。
「さ、ガイウス殿、これを。」
「ありがとうございます。ヴィンフリート様。それでは、僕はここで失礼します。お手を煩わせ申し訳ありませんでした。」
「なに、アルムガルト辺境伯家とゲーニウス辺境伯家は領地を接する間柄となり、何より、クリスと結婚することにより、血縁となるのだ。気にするでない。さ、早くクリス達のもとへと戻りなさい。」
そう言われて、僕は、アルムガルト辺境伯家本邸の門を出ると同時に翼を広げ、空へ飛び上がった。その後は、周囲に
クリスの
「お帰りなさい。首尾よくいきました?」
そう聞かれたので、貰った書状を見せると、笑顔を見せてくれた。
アルネバーまではまだ、時間が掛かる。
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