第92話 使徒正式就任
「ガイウス、辺境伯への就任おめでとう。」
フォルトゥナ様が笑顔で祝ってくれる。しかし、どうしても、横にいる顔がボコボコになっている地球の神様が、視界に入ってきてしまう。僕は笑いをこらえながら、
「ありがとうございます。これも、フォルトゥナ様と地球の神様のご加護と祝福のおかげです。」
「確かに、私たちのあげた【能力】によるところは否定ができないわね。でも、行動を起こしたのは、ガイウス、貴方の気持ちよ。いくら、力を持っていても、それを正しく使えなかったら意味がないでしょう?」
「僕は、正しく使えていたのでしょうか?」
「ええ、もちろん。ただ、人間はいやね。貴方をナーノモン領、今度からはゲーニウス領ね。そこに配置することは、国王の気まぐれじゃないわよ。貴方の冒険者としての腕と、アルムガルト辺境伯家とのつながりを知っていたからそうしたのよ。貴方には、まだ、奥の手がある。そう確信したから、あの人間の言う厄介な領地を与えられたの。」
「あー、なんとなくですけど、そんな気はしていました。平民上がりの辺境伯が、帝国との戦闘や黒魔の森で死んでも“替え”がありますもんね。」
「でも、貴方、結構な驚きようだったじゃない。」
「それはそうですよ。頭でわかっていても、感情というのはなかなか制御ができないもので。それで、今回は一体、何のために僕を呼ばれたのでしょうか?」
一番の疑問を聞いてみる。
「あー、それはね。正式に私の使徒にならないかって話しよ。私の使徒になっておけば、何かと便利よ。まず、各国の教会の神官にガイウスが使徒になったことを告げるから、各国の教会が味方につくわね。それと、信者もね。そして、貴方がどんな【能力】を使おうとも、“使徒である”ということで、みんな納得するわ。」
「確かにそうでしょうけど、なんでまた?」
「コイツが貴方に、何かしようとしても、すぐに私が知ることができるわ。将来の伴侶を好き勝手にされてたまるもんですか!!」
“コイツ”の所で、フォルトゥナ様のボディブロー (籠手あり)が、鋭く地球の神様の鳩尾に突き刺さった。あっ!!地球の神様は立っているんじゃない。吊るされているんだ。ボディブローの衝撃でブランブランしている地球の神様を見てわかった。これって、どこに吊るされているんだろう。
思わず上を見てしまうと、フォルトゥナ様が笑顔で「ヒ・ミ・ツ」と
「あとね、コイツからも貴方に、授けたい能力があるそうよ。ほら、そろそろ起きなさい。」
そう言って、往復ビンタ (籠手あり)を喰らわせるフォルトゥナ様。あー、トドメを刺しているようにしか見えない。仕方がないので、【ヒール】を使ってみる。神様に効くかわからないけどねー。地球の神様に手をかざし、
「【ヒール】。」
光の膜に地球の神様が包まれる。すると、綺麗な顔と意識が戻った地球の神様が、ビンタでまた顔を
「ちょっ、イタッ。痛い。フォルトゥナ、やめて。起きたから。ホント、ごめんなさい。
んー、【ヒール】かけないほうが良かったかもね。フォルトゥナ様は笑顔でフルスイングのビンタを最後に一発打つと、指を“パチンッ”と鳴らした。すると、吊られていた地球の神様が拘束から解かれたみたい。四つん這いになって、息を荒くしている。
「あんた、ガイウスに【能力】を授けるんでしょ。早くしなさい。」
「はいはい、ガイウス、君には【空間転移】の能力を授けよう。使用する魔力量に応じて、どこまでも、一瞬で行ける能力だよ。領主となって色んな所を見に行くときに便利だよー。ちなみに、ガイウスだけじゃなくても、指定すれば人でも物でも土地でも何でもいけるよ。便利でしょ?」
「確かに、便利そうですね。でも、いいんですか?戴いても。」
素直に思ったことを聞く。すると、地球の神様は笑みを浮かべながら、
「ガイウス、君は素晴らしい。一国の主には、まだ、なれていないけど辺境伯というそれなりの地位についた。これからの立身出世が楽しみだ。しかも、君は関わった人を不幸にしていない。いいよ。とてもいい。他の転生者や転移者は、異世界の住人を、自分の立身出世の踏み台か道具にしか思っていない者もいるからね。そういうのは、俺はあんまり好きじゃないんだよね。見ていて胸糞悪くなってくる。君は一種の清涼剤だよ。」
興奮したように言ってくる。フォルトゥナ様も引いている。助けてください。目でフォルトゥナ様に訴える。フォルトゥナ様は、嫌々ながら熱く語っている地球の神様に近づき、げんこつ (籠手つき)を喰らわせた。「うおぉぉぉ・・・」と呻いて
とりあえず、【ヒール】かけとこ。光の膜がまた地球の神様を包み込む。
「ありがとう。しかし、半神だからできることだよなあ。普通の人間の治癒関係の魔法って俺達には効かないからなあ。まあ、勝手に治るっていうこともあるんだけどね。」
「そりゃあねえ、私の伴侶になる予定なんだから、このくらいは当り前よ。それで、あんたは早くガイウスに【能力】を与えなさいな。」
「はいはい。ほんじゃ、いくよー。」
地球の神様が僕の頭に手を置く。光が僕を包みすぐに消える。ステータスを確認すると【空間転移】が追加されていた。それと、【
「あんた、また勝手に他の【能力】も与えたわね!!このバカ!!」
フォルトゥナ様、同感ですけど、聞こえて無いと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます