第83話 御前試合

 うーむ。最近の投稿分は2,000文字を超えてばかりですね。サクッと読んでいただきたいので、あまり長文にはしたくないのですが・・・。


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「陛下!!失礼ながらこのような子供。しかも、冒険者にいきなり子爵の爵位を授けるのはどうかと。」


「そうです!!貴族家に連なる者でもありません。ただの平民ですぞ!!」


 貴族の人たちの中から反発する人たちが口々に国王陛下に物申している。ちゃっと鑑定すると、一番上は侯爵様で一番下は準男爵様だ。まあ、騎士爵の人たちは武官側の方にいるからね。


「ふむ、生まれながらの貴族のお主たちの家の始祖も平民だったはずだ。我が王家も元を辿たどればそうなのだからな。で、あればだ。功績をこの短期間で打ち立てたガイウスが子爵位を得ても何ら問題ないはずだ。それに元々、プライスラー子爵家にアルムガルト辺境伯家からは男爵家をと要請が来ておった。それだけの実力があるということであろう?」


 国王陛下のお言葉に反論できない貴族たち。いや、なんか言おうよ。ただの子供が駄々をこねるわけとは違うんだからさ。しかも、式を中断させているんだから。国王陛下は笑みを浮かべながら、


「ガイウスよ。お主は、どう考えている?」


 と、問うてきた。ふむ、なんて答えるのが正解かな。まあ、思った通りに言えばいいか。


「はい、僕としては子爵位を戴けるとは思っていなかったので、正直に言えば驚いています。何しろ、僕の功績は、アルムガルト領に居付いていた盗賊団を殲滅したこと、ゴブリンキングとその集落の殲滅、オークロードとその集落の殲滅、飛竜ワイバーン12体の討伐、ロックウルフリーダーとその群れの殲滅、あとはアルムガルト辺境伯騎士団選抜隊と模擬戦をして単独で勝利したのみです。今、この場にいる貴族様方の始祖が打ち立てた功績はそれ以上のモノだったのでしょう。でしたら、僕には子爵位はふさわしくないと思います。」


「ふむ、確かにアルムガルト家から来た使者が持って来た書簡にもそのように功績が書いてあったの。あ、いや、ロックウルフリーダーとその群れについては書いてなかったか。これは最近のことか?」


「はい、確か4日前のことだったかと。」


「なるほどのう。それと、教会からもお主のことについて書簡がに届いておる。なんでも、女神フォルトゥナ様の使徒になったとか。事実かね。」


「はい、フォルトゥナ様に誓って事実です。」


「ふむ、優秀だの。だが、納得できとらん者がまだおる。どうかね。の近衛と模擬戦をしてみせ、その後、文官登用のための筆記試験を受けなさい。そして、模擬戦に勝利し筆記試験を合格すれば子爵の爵位を授けるというのは。」


「負けて合格しなければどうなるのでしょうか?」


「ふむ、騎士爵へ叙任かの。」


 どっちに転んでも僕には損はないね。ならば、


「わかりました。国王陛下の御意に従います。」


「よろしい。では、準備をしようではないか。皆の者もよいな。」


「「「はっ!!」」」


「では、ガイウスは退室し、控え室にて待つが良い。下がってよいぞ。」


 笑顔で言う国王陛下。僕は「御意に。」と答え、謁見の間を後にした。その後は、最初に通された控え室に案内され、模擬戦の準備をするように言われた。といっても特に準備するモノも無いので座り心地の良いソファーに鎧姿のまま腰掛け、メイドさんの淹れてくれる紅茶を楽しむ。あ、もちろん、かぶとは脱いでいるよ。


 さて、控え室で待つこと15分と少々、「準備ができました。」と近衛兵が迎えに来てくれた。案内され、城内の練兵場に着いた。観覧席には国王陛下と王妃様をはじめとした、謁見の間にいたお偉い人たちがいる。そして、目の前には完全武装の近衛兵が150名。しかも、武器は木製の模造品ではなく鋼鉄製の本物だ。まあ、僕もだけどね。ヒュンヒュンとヒヒイロカネ製の槍を振り回してみる。そうすると、対峙する近衛兵たちの目の色が変わる。本気の目になった。


 う~む。どうするかなぁ。チート全開で圧倒するだけでは、さっき陛下に物申していた貴族様方にはインパクトがなぁ。少ないよねぇ。うん、槍は使わずに接近戦のみでいこう。僕が槍をしまうと、馬鹿にされたと思ったのか、近衛兵たちの表情に怒りの色が見える。いや、本気でいこうと思ったからしまったんですよ。信じてはもらえないだろうけど。


 国王陛下が立ち上がり、


「これより、5級冒険者のガイウスと我が近衛第1軍第1連隊第1歩兵小隊との模擬戦を始める。双方、力の限りを尽くすように。では、始め!!」


 合図とともに近衛兵たちは盾を前に出し、その隙間から槍を突き出す密集隊形“ファランクス”で前進してくる。僕はそんなことお構いなしに走り、一気に接近する。そして、まずは一番端の近衛兵から血祭りにあげる。鎧ごと手刀で手足の関節を肉ごとボロボロにする。その後は右の肺を手を突っ込み握り潰す。手を引き抜くと血飛沫しぶきと悲鳴を上げながら倒れる。


 残り、149人。最初に潰した人を命のあるうちに【ヒール】で回復するとしたら、出血量とか考えたら10分以内で勝負を決めないといけない。さて、蹂躙を始めようか。僕はかぶとの中でわらう。至近にいた近衛兵はすぐに対処しようと剣を抜こうとするけど、遅い。すぐに四肢を手刀で切り裂き、右肺を潰し、両目を潰す。これを30秒の間にあと50人におこなった。52人の近衛兵から上がる悲鳴と苦痛の叫びは、練兵場を恐怖に陥れるには十分だ。


 しかし、流石は王都を守護する近衛兵だ。残りの100人は戦意を落とさずに果敢に攻めかかってくる。だが僕の前では無意味だ。約2分をかけ、100人を潰す。そして、血溜ちだまりの中には僕1人だけが立っている状況となった。かぶと越しに国王陛下を見ると、お互いに頷き、


「模擬戦は、ガイウスの勝利とする!!皆の者、よく戦った!!」


 流石は、国王陛下だ。顔色を変えずに普通におっしゃった。ちなみに、貴族様方は、「まさか近衛兵が。」と言ったり青い顔をしたりして吐いている人もいる。アルムガルト辺境伯家の寄子よりこや親アルムガルト辺境伯家と思われる貴族たちは顔色を変えずに、頷いている。武官たちは「近衛がこうもあしらわれるか・・・。」と渋い顔をしている人と「辺境に配すれば防衛力の強化につながる」と先の展望を考えている人がいる。文官たちは「治療費が・・・。」とか「装備代が・・・。」と呟いていた。いやいや、お金も大事だけど、鍛え上げた近衛兵の命はもっと大事だよ?

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