第2話 第1章 思い出 

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 金太は、あの長い夏休みよりも短いけれど楽しいことがたくさんある冬休みのほうが好きだった。ようやく2学期の期末テストもすみ、あと少ししたらその楽しみにしている冬休みがはじまる。

 あれだけ勉強が苦手だった金太ではあったが、河合老人と出会い、勉強する楽しさを教えてもらったお陰で、これまで胸のなかで燻りつづけていたコンプレックスを振り払うことができた。それでもテストという言葉を耳にするたびに全身が緊張する。

 なんとか期末試験がすんで気分が少し楽になった金太は、久しぶりに秘密基地に行ってみることにした。

 広い畑には、色をなくした雑草が冷たい北風に吹き晒されており、その片隅に秘密基地がぽつんと置かれている。金太は扉の前に立つと、ポケットから鍵を取り出し、冷たくなった南京錠に差し込んだ。

 小屋のなかに入ると、あっという間に冷えた空気に包み込まれた。黴臭い臭いが鼻を突く。机の上は薄っすらと砂埃が堆積し、窓ガラスは曇って外が見えない状態になっている。

 金太は、椅子の座板に溜まった埃を手のひらで掃ったあとドカリと腰を降ろし、懐かしげに小屋のなかをゆっくりと見回す。すると、この3年間に起きた様々な思い出がフラッシュライトのように思い出されて来た。

 

 土木工事会社が置いていった資材置き場を爺ちゃんの許しをもらって、念願だった秘密基地に改造した。そのときは、金太と袴田孝弘(通称 ネズミ)のふたりだけで遊び半分のつもりではじめた。

 金太は扉のすぐ横に、『ロビン秘密結社』と下手くそな字で書いた看板を打ちつけた。それがそもそものはじまりだった。

 中学校に入学して間もなく、金太はこれまでに味わったことのないイジメという洗礼を受けることになり、ずいぶんと心を痛めるのだった。

 ところがそれから1ヶ月ほどして、5月の連休が明けたある日、金太のクラスに福岡からの転校生がやって来た。柳田トオル(通称 ノッポ)という背の高い男子生徒だった。

 イジメを生き甲斐みたいに学校へ来ている連中には、転校生は格好の餌食だった。そこにきてノッポがつい博多弁を話したものだから、さらにイジメはエスカレートした。

 それまで金太が受けていたイジメの矛先がノッポへと移り、それは可哀そうなくらい落ち込んでしまうのだった。

 イジメという残念な共通項で急激に接近したノッポは、金太に誘われて『ロビン秘密結社』のメンバーに加わることになった。だが、教室内のイジメはなくなることがなく、ますます野獣たちは獲物を求めて爪を研ぐのだった。

 その次に獲物になったのは、後に秘密結社のメンバーになった早乙女愛子(通称 アイコ)だった。アイコは金太と同じ小学校で、中学に入って偶然にも金太と同じクラスとなった。

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