悲しいときがある。
泣きたいときがある。
前を向けないときがある。
とても飲み込めない現実がある。
ずっと明けない夜に怯えることがある。
『一般的』な応援歌は、気持ちを正して涙を拭いて前を向いて飲み込んで現実と向き合えば夜が明けるから怯えないでという。
だが、これは違う。
この小説は——優しい……。
悲しさを。泣きたい思いを。後ろ向きな感情を。吐き出したい現実を。夜という今を。
すべて、肯定する。
無理して笑わなくていい。
辛かったら辛いって言っていい。
そう言う、本来当たり前に掛けるべき言葉を、思いやりを、優しさを、この小説は知っている。
今、立ち上がれないあなたに、是非読んで欲しい一作。
主人公である彼には大切な女性がいる。そんな彼女がある日、花を拾ってきた。5枚の花びらをつけた白くて綺麗な一輪の花を。
彼女が大切にしているその花。
花は嫌いだなんて言った彼だけど、大切な彼女の大切な花。
世話をしないわけにはいかない……。
だが、どんなに丁寧に手入れをしても花はいつか枯れてしまう。
彼女の大切な花も例外ではない。
一枚……また一枚と……。
主人公の彼はもしかしたら初めからこうなることが分かっていたのではないだろうか。
あまりにも似過ぎていたから。
それなら彼が花を嫌った理由も納得できる。
大好きで大嫌い。大嫌いだけど愛おしくて大切で……。
今日も彼は花に水をあげるだろう。