第135話 女神降臨(継続の種子)
「シュンさ~ん、起きて~。あ、違う。半分起きて~♡」
あれ? 気のせい…だよな。
こんなとこに出てくるわけないし。
それに俺なんて、もう忘れられてるだろうし…。
ん? いつもだったらここで突っ込みが入る頃合いなんだが。
俺は目を開けた。
「な、な、なんで!」
「シュンさんだけ温泉なんてズルい~♡」
目の前に女神が居る。
まあ、それはこれまでもそうだった。
こいつは自由気ままに降臨してくるからな。
しかし今、俺が居る所はたまたま貸し切り状態にはなっていたが、温泉のとても広い大浴場のこれまた広い浴槽の中だ。
そして、女神も気持ちよさそうに一緒に温泉に入って寛いでいる。
もちろん全裸である。
いろいろ見えてはいけない部分が見えている気がする。
ヤバイ。温泉で温まってバランス良く身体中の血の巡りがいいはずなのに、一箇所だけ妙に血流が逞しいような気がする。
「ちょっ、少しは隠せって」
「久しぶりだから、大サービス~♡」
いや、サービスは嬉しいが…、理性がもたん。
艶めかし過ぎる女神の裸体はなるべく見ないようにして、俺は女神に言う。
「どこ行ってたんだよ。ずっと出てこなくて。結構、心配したんだぞ」
「いろいろ忙しくて…。ごめんね。シュンさん♡(超可愛い」
「なんか、たくさん聞きたい事とか言いたい事あったんだけどさ」
「うん、知ってる~」
こいつ…。
まあ、大戦のことは教えてくれない感じだったし、ここはあれだな。
「聖剣ありがとう。あれ持って来てくれたのは…」
「え~? 引き寄せたのはシュンさんと可愛いエルフちゃんですよ~」
へ? そうなの?
「そうですよ~。私はあの子に、シュンさん達と一緒に居ると面白いことあるから、そろそろ目を覚ましなさいって言っただけです~♡」
ふむ…。そうなのか、と言うしか無いな。
それよりも、これは聞いとかないと。
「ガンドゥーリルは世界樹を復活できるって本当?」
「そういう風に思ってしまうのは解る気がしますけど~。それは少し違います~、あの子が居た方がいいのは確かですけど♡」
「いや、さっぱり分からん」
「フフッ、大戦のことを調べていけばきっとその答えに辿り着きますよ~♡」
はあ…、やっぱり大戦なんだな。タイムリープでもしたいよ、ホント。
女神は首を傾げながらちょっと眉を顰めて言う。
「時間遡行は、少し危険ですよ~」
「あっ、いや。それは理解してるよ。下手したら時空が崩壊してしまうんだろ」
「その通りです~、さすがシュンさん♡ 理解してしまってるんですね~」
て言うか、そんな魔力どうせどこからも持ってこれないし。
そういう話の流れになったのでついでに、俺は転移のことを質問した。時間遡行は空間転移をさらに発展させた魔法だからだ。
いくつかの問答が終わった後に女神は言う。
「シュンさんは空間転移はもう使えるとは思うんですけど、まだ少し、目で見えるものカタチにこだわり過ぎている気がしますね~。だから魔法に無駄が多いです~。時空魔法に限らずですけど~」
結構手厳しい評価。
「それ自覚してるよ。どうしても、まだ…」
「転移ではないんですけど~、特殊スキルの中に縮地スキルというのがありますね~。それの会得を目指してみたらいいですね~」
「あっ…、そんなのあるんだ」
「はい~♡ 目で見える所への瞬間移動ですね~。それを体感すれば転移との本質の違いがはっきり判ってくると思います~」
「ふむ…。解った。考えてみるよ」
て言うか、世界樹の話だったのに話が逸れてしまってた。
女神は少し上体を起こすようにして姿勢を変えた。その気配で思わず見てしまった。綺麗で色っぽくて魅力的な胸が…。そして身体のライン全てが、眩しい。顔はいつも通り綺麗すぎて、どうかすると目を離せなくなるし。もう俺は完全に臨戦態勢が整ってしまっている状態。だけど今また目にしてしまった色っぽさは更にグイグイと来る。
「フフフっ♡ ヒントを上げます~。今日はその為に来たのです~」
「ん? ヒントって?」
「継続の種子です~」
げっ、今になってその話なのか。もう、考えても無駄だと思ってずっとスルーしてきた案件なんだよ、それって。
「違いますよシュンさん♡ シュンさん達が成長してきた今だからなんですよ~」
まあ、そうだよな。
俺が少しずつ理解して、近づいたところの事を今までも教えてくれてたしな…。
女神はうんうんと頷いている。
ヤバっ、ついまた女神の裸を見てしまった。もうなんでそんなにスタイルいいんだよ。湯の中に入っていても判るって、どんな仕掛け?
ニッコリ微笑んだ女神は俺に近付くと、どこからともなく指輪を手にしてそれを俺に差し出した。
俺は反射的にそれを受け取る。
女神の指輪だ。俺とエリーゼとガスランが持っている物と同じ。
但し、色合いはこれまでの物と同様に少しだけ個性がある。
今回のは、光の当たり方によってほんのり金色に輝いて見える。
使徒の友愛の証
神性絶対防御
継続の種子
鑑定で見える属性は、ガスランのと同じ。
この、継続の種子の話だったな…。
ん? さっき女神は、
「俺達…。が成長?」
「そうです。シュンさん達の成長です~。その指輪は可愛い姫ちゃんに渡してくださいね~♡」
「ニーナに、ってことだよね」
見た瞬間からニーナの為の指輪だとは思っていたけどね。
女神は頷いた。
そして語り始めた。
「最初に、エルフの勇者くんのことを少し話しますね~。彼は使徒の禁忌に触れることをしました」
「……」
いきなり話が飛んだ気がするけど、何とか付いて行くために頭を切り替える。並列思考、仕事しろ。
「世界樹を切ったのです」
「は?」
なんだと? 世界樹を切ったってことは消失させたんだよな。
バステフマークを消失させたのは勇者だったってことなのか…?
「そうです。シュンさんも知っているように~、世界樹というのは精霊が具現化したものです。精霊の加護をもたらす世界樹の精霊達は、そのことでほとんどが消失してしまいました」
「……」
ちょっと考えが追い付かない。
いや待て。そもそも、どうして勇者は世界樹を切る必要があったんだ?
女神は俺のその疑問には答えず、話を続けた。
「僅かに残った精霊達が、なんとか形を成すことが出来たのが世界樹の種子、継続の種子なのです。脆くて崩れそうなそれらを、私は指輪に封印しました」
継続とは、命の継続そして輪廻の継続、創造神の意志の継続も意味している。
継続の種子が再び芽吹いた時に、世界樹は復活できる。
その鍵を握るのが、指輪を持つ者だと。
女神はそう言った。
「ヒントは今日はここまでです。そろそろ帰りますね~。勇者くんのことは大戦のことを知ることが出来れば~必ず解りますから♡」
女神は俺に近付いて、その柔らかな身体を俺に押し付けるようにして抱き締めた。
「大好きですよ。シュンさん♡」
そう言って濃厚なキスをすると、微笑んだ後すぐに光に包まれて消えていった。
聞きたいことたくさんあったはずなのに、今回はほとんど聞けなかった。
まあでも、それはそれとして…。
「勇者…。俺の予想では、勇者は俺と同じ異世界転移者だったんじゃないかと思ってるんだけど?」
俺の問いかけに、女神の指輪はピクリとも動かなかった。
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