第62話 宝箱
「モンスターハウスと言うよりも、ボス部屋?」
「ボスは居なかったけど、そう考えるのが妥当ね」
シャーリーさんの言葉を受けてセイシェリスさんがそう言った。
「カギが掛かってた裏口から、たまたま入ってしまったって感じだな~」
続けてシャーリーさんはそう言って笑う。
俺とエリーゼとウィルさんはオークの回収。
雷撃で切り裂いた死体も、この魔法を実戦で使い始めた当初のズタズタボロボロほどには酷くない状態になってきた。狙いと加減だね。
「シュン、エリーゼ、この剣どう思う?」
回収をしている時にウィルさんが手にして俺達に見せてきたのはオークが使っていた剣の一つだった。
魔法防御(弱)
エリーゼは、その剣をじっと見て首を傾げている。
「何かの魔法?」
「うん。弱いけど魔法防御が付与されてる」
ウィルさんはやっぱりな、と納得した顔。
「俺達の物にしていいんだったら、セイシェかエリーゼに持たせるんだけどな」
「まあ、そのうちもっといいのが出ますよ」
俺はウィルさんにそう答えて、エリーゼもうんうんと頷いてる。
この剣のことはともかく、こういう武器への魔法付与はまだ試してはないんだけど、なんとなく簡単にできそうな気はしてるんだよね。
問題は俺が付与できるものとなると、それは光魔法の系統…。悩ましい。
宝箱はシャーリーさんが、
「トラップは無いと思うけど、一応」
と言って、少し慎重に調べてから開けた。
そして出てきたのはマジックバッグ。時間停止タイプ。
俺とエリーゼが持っているマジックバッグが俺の自作だと、ここに居る人は皆知っている。セイシェリスさんから「シュン見てみてくれ」と言われ、すぐ解析。
容量は、おそらく最高級品レベル、無限と思って扱っても良いほど。
そして時間停止の物だと、皆に言った。
ウィルさんも、さすがに驚いて何も言えない感じ。
はしゃぎそうなシャーリーさんでさえ、絶句。
セイシェリスさんは、冷静。また考え始めている様子。
エリーゼは、「凄い」と目がキラキラ。
いや、俺達のも時間停止のだと、皆さん知ってますよね。
俺はそう思うんだけど、やはり冒険者としては夢のアイテムゲットの瞬間。
だけどエリーゼ。君が持ってる物の方が数段いい物ですよ。そこ解ってる?
シャーリーさんの再起動が完了して、エリーゼと一緒に嬉しそうにニコニコ。
「ま、だけど。今回はギルドの物だからな」
ウィルさんは、そこを思い出す。
セイシェリスさんは、皆を鎮めるように見渡してから言う。
「それはどうでもいい。問題は、何故こんな浅い層に、こんなアイテムがあるかだ」
ドリスティークダンジョンで、この世界で初めて発見されたとされるマジックバッグは、第50層で見つかった。「使徒の忘れ物」と騒がれた話は、子どもでも知ってるぐらい有名。それから現在に至るまで、マジックバッグは、それ以上の深層でしか見つかっていない。
セイシェリスさんが、何を悩んでいるのか少し解る気がする。
このまま下の階層の調査を進めるか、すぐにでも地上に戻って報告すべきか。
「セイシェリスさん、少し下の階層の様子を見ておきませんか。戻って対策を考えるにしても、もう少し情報は必要な気がします」
セイシェリスさんは、ニッコリ微笑み、俺の頭をクシャっと乱暴に撫でて言う。
「シュンの言うとおりだな。時間を決めて、進んでみよう。この下の層で、あと1時間、それで今日は戻ることにしよう」
軽い食事を摂り、俺が収納から出したトイレボックス改め、クリーンボックスでひとしきり女性陣が騒いでから、装備の確認。そして階段へと向かう。
クリーンボックスは、ここまで出すタイミングが無かったんだよね。どうせ大騒ぎされるのは解ってたし、通路で騒ぐわけにもいかないし。
外と中のいろんな機能と特色、魔道具の使い方など説明し終えると、
「シュン、なんだこれ。めちゃくちゃいいぞ、最高だ。お前は最高だ」
シャーリーさんが壊れてた。
冷静な筈のセイシェリスさんも、
「シュン、お前は本当に…。エリーゼの為なのは解るが、これほどとは…」
そう言いながらも、ニコニコして自分が真っ先に使おうとする。
それにシャーリーさんが文句を言って、エリーゼが、はいはいジャンケンしましょと二人を宥める。
ウィルさんは、面白い物作ったな、と言って外側の耐久性なんかを見てる感じ。
「当初は、女性が恥ずかしくないように、というのが大きな目的でした。けど、もう一つ考えていたのが臭い対策だったんです。トイレの後の臭いもですが、野営を続けて風呂に入らず、それで魔物に感知されやすくなるのはどうかな、とか。その辺いろいろ考えてたら、首飾りとこれに行き着きました」
「なるほどな」
「だから、ウィルさんも使ってくださいね」
「お、おう、まあ、そのうちな」
そう言っていたが、女性陣が3人ともしっかり使った後に、セイシェリスさんから
「首飾りでも消しきれてない程、臭い。悪臭」
と言われ、ウィルさんも放り込まれる。
いや、実際はそれほど匂ってなかったと思う。
しかし、ウィルさんはご機嫌で出てくる。
「いや、これサッパリするな。クリーン大切だわ。俺の部屋にも欲しい」
「さあ、ちょっと時間を取ってしまったが、気を取り直していくぞ」
「「「「了解(おう)」」」」
いい感じに皆が綺麗サッパリして、おまけに気分もリフレッシュ。
第2階層(仮)へ。俺達5人は、階段を降り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます