第54話

 新防具ということで、まずは慣れよう。そういうコンセプトで、しばらく宿でも装備を着けたままでいてみよう、の俺達。更に俺は、魔法付与に挑戦中。


 買ってきたネックレスは、チェーンが長いと邪魔になるので最初から短めの物にしてる。小さな石、アダマニウムって言うのが、3つずつ付いてるけど、全然重くない。

 そして、このネックレスに付与しようと、そういう魂胆。


 付与する魔法は、改良版クリーン。殺菌と清浄、そして消臭の効果。このネックレスを装着した人の身体全体が対象。副次的に防汚効果も付く。光魔法と時空魔法の合わせ技。効果は控えめにしてる。魔力消費の都合上。けど消臭はその程度でも十分なはず。


 付与の結果は、鑑定と魔法解析ですぐにわかるので、もし効果が切れてしまった場合でも解る。まあ、粉々にされない限りは大丈夫なはずだけど。



 一つ目の付与が終わり、早速自分に装着。女神のネックレスもあるので、ちょっとチャラい感じに見えてしまうかもだけど、シャツの中になるので気にしない。


 ずっと見ていたエリーゼが、俺が先に装着したのが不満そう。

「まだテスト段階だから。もうちょっと待ってて」

「私がテストしてもいいと思うんですけど~」


 駄々をこねてきそうなので、さっさと二つ目にも付与。そしてエリーゼも装着。


「シュン、なんか空気が綺麗な気がする」

「え?」


 いや、そんなはずはないと思うんだが… 俺は、そんなの感じてないし。


「ホントに?」

「うん、あ…、気のせい?」


「おそらくは…。だって食事してる時にさ、食べ物の匂い消したくないと思ったからね。その辺気を使ったつもり」


「そりゃそっか。じゃあ、なんか食べてみる」


 エリーゼは多分食堂に行ったと思うが、気にせず最後のテスト段階として、装着しているまま、更にクリーン魔法をかける。重ね掛けになるのは間違いないんだけど、その場合の効果の検証。


 結果、効果倍増という言葉どおりでした。そしてエリーゼも、気のせいでした、すみません。とのこと。




 オークの横穴の調査チーム、最初の潜入チームの結果が気になっているが、俺達は「新装備に慣れよう週間」に突入してしまったので、とっとと魔物討伐に向かう。たまにオーガが出るという話を聞いたので、スウェーガルニから南の街道を乗合馬車で進んだ。

 途中で下車して、バルマレ村方面に向かう為、東に向かう小街道に入る。ここからは歩き。


 なんとか日が暮れる前に到着。バルマレ村は戸数20戸ほどの小さな村。その住民のほとんどが木こりを生業としている。早速、目撃情報の確認の為、村人に場所を尋ねたが、暗くなってきたのでその場所の行き方の見当だけつけて、今日は野営。

 テントを張れる場所を村の人に確認して、そこに設置。食事はパッグから出来合いの物で。

 テントでエリーゼと二人で寝っ転がって、よく考えたら、初めて会った時には野営して小屋の中で寝たんだと思い出す。そんなに経ってないのに、なんだか懐かしい。


「シュン」

「ん?」


「初めて会った時のこと思い出しちゃった」

「奇遇だな。俺もだ」


「なんかすごく昔の事のような気がするね」

「奇遇だな。俺もだ。て言うか、寝ないと明日辛いぞ」


「はーい、おやすみん」

「おやすみ」


 自動探査バリバリだからこそ、そして念のため魔物除けも使ってる。



 翌朝。オーガ目撃地域へ向かう。林道が割と綺麗なので歩きやすく、進行も速い。


 村人からは、伐採林の中の木を傷つけないでくれと言われていたので、エリーゼの風魔法は、そこでは禁止。あと、当然火は厳禁だが、雷魔法は大丈夫、のはず。


 林道が途切れて2時間ほど歩き、そろそろ話に聞いた辺りに近づいたかと思った時。

 ゴブリンを発見。2匹。雷で瞬殺。こいつら、どこにでも居るんだよな。


 俺は、ふと思い出して言う。

「ローデンさん達、ゴブリンの手がかり見つかるかな…」

「あれも謎だよね。もしかして、あのゴブリンもダンジョンからだったり」

「エリーゼさんや、それフラグになる危険性が高い発言かも」

「…」


 更に1時間進んだところで、ゴブリンの死骸1体を発見。新しくはないが、1日か2日前のものだろう。肉は大きな部分は全て無くなっていて、骨に剣で付いた跡があるのが判った。


 俺達がやったゴブリンの死体は、収納済み。魔石も取ってないし、あとでまとめて処理する予定。しかし、この死体は放置する。


 また少し進んで、探査に反応。1匹。

「エリーゼ、種類分かる? 俺は、今まで見たことないタイプな感じがする」

「私も。オーガかは判らないけど見たことない種類」


「当たりかな、だといいが…。エリーゼ、行くぞ」

「了解」

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