第47話

 談話室から出た俺が、ギルドの治癒室に行くと言ったらフレイヤさんの目がちょっと光った気がした。

 思わず俺の小心な緊張感が高まる。

 エリーゼは、どうしたの? と俺を見ている。


「あ、いや…。この前。治癒でお世話になったので、お礼のお菓子を…」

 どうして俺は言い訳めいた態度になってしまっている。

 俺は無実のはずだ。もっと堂々としてればいいんだ、多分だけど。


「ふーん…、取り敢えず先にカード出して。ランクアップの更新するわよ」

 はい、とカードをバッグから取り出して何か言いたげなフレイヤさんに渡した。



 カードの更新を待つ間にエリーゼと一緒にギルドの治癒室へ。

 治癒師のミレディさんに、先日のお礼ですと言ってお菓子を渡してエリーゼを紹介する…。うん、超眼福。


 これだけの美女が二人並ぶと壮観であります。


 光魔法を俺が使えることは言わなかったけど、クリーン魔法ってすごいですね。と、話を振ってみると詳しく教えてくれた。


「クリーンの目的やその作用の仕方。そういうことを明確にすると結構いろんなことができるんですよ。身体の表面的な消毒はこの前シュンさんにも施術しましたよね。ウィルさんの方は傷も多めで、少し深いのは表面が先に治ってきている感じだったので、念のため傷内部のクリーンも行いました」


「やっぱり消毒せずに傷をふさぐと、ってことですよね」

「その通りです。キュアは消毒効果も少し含められていて便利で、そうして傷を治す効果も速いです。応急措置はそれでいいのですが、できれば早めに改めてしっかり綺麗にしてから、というのが良いです」


 それから、いわゆる善玉菌みたいな類の扱いなども質問したりして、結構盛り上がった。

「シュンさん医学にもお詳しいんですね。そこまでの知識は王都の学校ぐらいじゃないと教えて貰えないですよ」


 いえいえと謙遜するが、ミレディさんの目がキラキラ。

 やばい、興味を持たれ過ぎて俺の秘密が…。と思って話を終わろうとしたら…。


「男性にはあまり知られてないようですが、クリーンは匂いを消したりとかも出来ますから、女性の方には本当に便利なんですよ。お風呂に入れなかった時とかも。私は、自分が使えるのが本当に幸運だと思ってます」


 ほほう、やっぱり。そういう使い方ができるだろうと思ってた。詳しく。


 そして、ここまでは誰もやらないんですけどと言いながら、ミレディさんは匂い消しを実践してくれた。身体の表面全体の消毒と表面全体からの異物除去との合わせ技。すごい、これっす。風呂要らず魔法。


「ミレディさんは神官系の魔法師ですよね? やっぱり魔法は教会で習ったんですか?」

「はい、最初はそうです。たまたま家の近くにあった小さな教会で光に適性があると判ったので勧められて…。けれど、ほんの初歩だけでした。それが物足りないと言うかもったいない気がして、もっと光魔法を極めたいと思って学校に行きました。さっき言った王都の学校なんですけど…。ですから今の私は教会とは全く関係ないんですけど、光属性の治癒師だとそういうイメージで皆さんからは少し距離を置かれてしまうのが、寂しいですね」


 ミレディさんって、のほほんとしてるけど今日見せてくれた光魔法の緻密さとその制御。パッパッとやっちゃってるけどマジ凄いっすよ。

 師匠と呼ばせてもらおうかな。



「シュンさんまた来てください。同じ光属性を持ってる者同士、技能を高めて行けたら私も嬉しいですから」


 いや、俺が光使いだってばれてるし。いやまあ、これだけ具体的な話してたら分かって当たり前か。


 丁重にいろんな意味でのお礼を述べて、そして再会を約して治癒室を辞した。



「シュン良かったね。ミレディさんいい人で。それに教会に拉致されそうなのじゃなくて」

 エリーゼがそう言って笑う。


「まあそうだけど…。あ、でも教会ってそんなひどいとこなのか? なんかミレディさんの話だと教会との関係もあっさりした感じだったけど」


「あー、シュンは知らないんだっけ。昔の教皇国との戦争のせいだよ。教会の印象が王国で良くないのは」

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