第46話 Cランク

「シュン君、エリーゼ。指名依頼だけど受けてくれるかな?」


 思わず、いいとも、と答えそうになった俺だが当然ながらクールに。

「まずは詳細を教えてくださいね、フレイヤさん」


 フレイヤさんが口にする指名依頼なんてほとんど命令に等しいので、俺達がそれに抗う事などそもそも不可能なことなのだ。そう、一応は抵抗の姿勢を示したという事実、ただそれだけなのである。



 拉致された談話室でギルド職員の女性が持ってきてくれたお茶を飲みながら、フレイヤさんから説明を聞いた。



「えっと、つまりフレイヤさんに同行してドリスティアに行くと」

「簡単に言うとそうね。行くだけじゃないけれど」

 フレイヤさんが頷いている。


 ドリスティアというのは、その名が示すようにドリスティークダンジョン中心に栄えた街。ダンジョンに来る冒険者相手のテント小屋に始まり、宿屋、飯屋、雑貨屋など商人が中心となって発展した街ではあるが、アリステリア王国が建国されて街の統治機構もすべて改変。今ではスウェーガルニと同じ公爵領の街となっている。


 エリーゼが、あっそうだ。とバッグからクッキーを取り出し、そして尋ねる。

「ドリスティアに行くのは、やっぱり今回のオークの横穴の為なんですか?」


「そう。情報を集める為。主に新層のことね。と言ってもドリスティア支部に行って、私はまずは資料と睨めっこからだけど。貴方達にはその手伝いとちょっと別のことをお願いするつもりよ。まあ半分、ドリスティア、ダンジョンの街の下見。そんな軽い気持ちで付いてきてくれればいいわ」


 フレイヤさんはエリーゼからクッキーを受け取ってそう答えた。


「あら、このクッキー、お茶に合うわ~」

「でしょ~」

 という女子達。

 一人は多分100歳超えてるけど。


「素敵な指輪ね」

「シュンがくれたんです~」

「とても似合ってる」


 俺、ここに居なくちゃ駄目ですか。


 そして、クッキーが無くなって女子会がやっと終わりそうになった時。


「あ、そうそう。二人ともCランクに上がったからカード出してね。この後すぐに更新するわ」


 エリーゼはキョトンとした顔。

「え? 私もですか?」


「そうよ。100匹以上のオークに対峙できる勇敢で優秀な冒険者だから当然ね」


「いえ、対峙したのはウィルさんとシュンで…」

 表情を曇らせるエリーゼ。


「エリーゼ。貴女はあの時、少なくとも10匹を倒したわ。攻撃を当てたのなんて数えきれない程だったでしょ。死体の見分で矢が刺さったオークの数、それも報告に上がってるの。とんでもない数だったわ」


「はい、それはそうかもしれないですけど…」


 フレイヤさんはニッコリ笑って言う。

「貴女は、私とセレネスティ。貴女のお母さんの自慢の娘よ。胸を張ってシュン君と肩を並べなさい」


「はい!」

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