第143話 聖痕の位置は自分じゃ決められない
絶え間なく続く激痛に狂いそうになる。だが、狂いそうになると『よこセ、カラダ、よコせ』と声が響く。負けるわけにはいかない、俺は蘭達の元へ帰るんだ!
「そろそろだな。柊君気張れよー!」
痛みが激しくなる。これ以上の痛みには、耐えられそうにない『アケワタセ、楽にナルぞ』甘言に気持ちが飲まれていく……
「洋一!」
蘭の声が聞こえてくる。
『ヨーイチ!』
リュイの声も聞こえてくる。
二人の声で、誘惑に乗りそうになった自分の心を立て直す。
ぐうううッ!!
今まで続いてた痛みの中で一番の激痛が襲い掛かり、たまらず悲鳴が漏れてしまう。
今まで出会った人達の顔や声が、脳裏を過ぎる。
『ヨーイチ君! 僕の愛を思い出してえええ!』
全裸のエロスが、目の前にいる。
は? あまりの出来事に痛みを忘れる。
『僕の愛がヨーイチ君を救う!』
エロスの股間が強烈に光り、その光りが俺を包む。
『愛が出過ぎちゃった。テヘペロ』
不気味な言葉が聞こえた瞬間に、目の前の景色が切り替わる。
「おっ俺は?」
「洋一!」
蘭の声が聞こえる。大和さんがアイマスクを外してくれると、瞳に涙を溜めた蘭と号泣しているリュイがいる。
「なんとか、なったのか?」
「成功だ! 良かったなあ、俺に始末されなくて」
大和さんが、笑いながら背中をバシバシと叩いてくる。痛い、力が強過ぎて痛い!
「痛いッ! 大和さんめっちゃ痛い!」
「悪い悪い、でなステータスなんだが思ったより下がっちまった。それとな言いにくいんだが……」
ステータスは正直どうでもいいんだが、言いにくい事ってなんだ? まさか邪神の因子が取れなかったとか?
「その身体が元に戻らなかったのと、愛の神が乱入してな……」
大和さんの視線が、俺の股間の方へ注目している。なんだ? 股間になにかついているのか? あれ?
「俺なんでフルチン!?」
「愛の神が脱がしていったんだよ、それでな柊君に
聖痕? って言うか最後に出てきたエロスは、やっぱり本物か! なんか出ちゃったとか言ってたけど、聖痕が出ちゃったのか!?
「聖痕って悪い物なんですか?」
「いや聖痕は問題ない。ステータスが下がった今なら助けになるはずだ。ただ……」
再び俺の股間を見て言い淀む大和さん。
「場所がお尻なんだよ、ちょっと立って貰えるか?」
尻!? なんで尻なんだよ! 慌てて立ち上がると大和さんは、俺から背を向け笑っている。
『見た事ない模様ね!』
リュイが見た事ない模様? 彼奴どんな聖痕を付けたんだ?
「なあ蘭どんな模様なんだ?」
尻だから俺は見えない。蘭なら教えてくれるはず。
「いや、ちょっと……私からは……」
『ヨーイチ! 描いてあげるよ!』
リュイが地面にハートを描いていく。ハートの真ん中にはYoichi Loveの文字が
「いやああああああああああ!!」
なんでだよ! なんで、自分の尻にハートマークでYoichi Loveなんだよ! 自分大好きみたいじゃないか! もしくはホモだよ!
『ヨーイチが力を入れると、真ん中の模様がピンク色に光って綺麗!』
なんで文字がピンク色に光るんだよ! もう二度温泉や銭湯にいけない。ちょっとでも力を入れたら、光るって事は大事な行為中にピンクに光るじゃねえか! そこに注目されて、お互いガン萎えしちゃうよ!
「終わった、俺は一生童貞のままだ! う うう……う~うううあんまりだ……HEEEEYYYY あァァァんまりだァァアァ AHYYY AHYYYY AHY WHOOOOOOOOHHHHHHHH!!
おおおおおおおれェェェェェェのォォォォォしりぃぃぃぃがァァァァァ~~!!」
俺はその場に泣き崩れた。
「まっまあなんだ、童貞だっていいじゃない人間だもの」
大和さんが、腹を抱えて笑いながら俺を諭してくる。
「みつ○風に慰めないでください!! 痛っ!」
バステトに猫パンチされた……なんなんだよ、俺がなにしたんだよ……。
『…………煩い。尻が光る位で泣き喚くな。クソワロタ』
クソワロタじゃねえよ! 近いから聞こえてんだよ! そうだ、エロスだ彼奴は何処だ! ぶち殺してやる!
「洋一、エロス様なら手紙を置いて帰ったよ。怒りが収まったらまた遊ぼうねって言伝付きで」
「エロオオオオオオオオオオオオオオオオオオス!!」
親愛なるヨーイチ君へ、今この手紙を読んでいるって事は、僕は君の手の届かない場所にいるって事だろう。愛しいヨーイチ君に会えないのは、凄く残念なんだけど、君はきっと、トキメキを感じてくれたと思う。愛している、僕の愛を受け入れてほしい。
PS
今の君には力がないから、ピンチの時には尻に力を入れて、エロスの愛は世界イイイって叫ぶと、きっと君はピンチを切り抜けられる筈だよ。
「糞がああああ!」
俺はエロスの手紙を引き裂いた。
『ヨーイチ、ちょっとやってみてよ!』
「やらねえよ! 絶対にろくな事にならないから!」
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