第78話 報連相は社会人に必須スキル


 フーシェンの神殿に着くと、いきなりアーレイに胸ぐらを掴まれた。


「━━━━どうしてなのじゃ! どうしてもっと早く! ワッチの両親は、嫌な感じが膨れ上がりワッチの前で死んだ! どうしてもっと……早く来てくれなかったのじゃ」


 アーレイは、大粒の涙を流しながら俺を揺さぶる。


「アーレイ、洋一だってつい今し方、力を貰ったばかりなので……」


 蘭が、フォローしようとするが、俺が制止する。俺を恨んでも良い、生きる糧になるなら。今、ここで吐き出すのを辞めて、無理矢理納得させたり、俺が、居なくなったりしたらアーレイはきっと心に影を落とす。


「なんでなのじゃ! 弱いくせに! 神に会って力を貰えるくせに、なんでなのじゃー!!!」


 胸ぐらを掴んでいた手を離し、その場に膝をつく。


「ワッチにも力があれば、お前みたいに神に会えれば! ワッチは祈った、パーンに母を助けてくれと、だけど奴は無視した! フーシェンを助けてくれと願っても奴は無視した! なんでなのじゃ!」


 パーンの事は知らないが、本来神様に会えるなんてイレギュラー中のイレギュラーな事態だ。祈りや願いが届く云々の話ではない。


「マスター、ワテクシの事はその、パーン様もお忙しい身ですし。ワテクシの主神は、創造神様なので管轄が……」


「うるさい、うるさい、うるさいのじゃあああああ!」


 ドクン


 アーレイから嫌な気配が、強くなる、同時に邪神センサーが作動し、警告音を出してくる。


「洋一! 私がアーレイを抑える!」


 蘭が、拘束魔法を使いアーレイを縛り上げる。


「うがああああああああ!」


 アーレイは手足が千切れんばかりに、暴れようとする。


「アーレイ! 今祓ってやるからな!」


 俺はアーレイに向かって駆け出し、アーレイの後ろに回り込む。


「マスター! ダメです! 邪神に負けてはだめです!」


 フーシェンは蘭に遅れて、アーレイに呼びかけながら、拘束魔法をかける。


「アーレイ! 悪いな、尻を触るが、許せよ!」


 アーレイのスカートとパンツを一気に下ろす。可愛らしいプリっとしたお尻と、白い尻尾が出てくる。


「いくぞー!!」


 俺の手とアーレイの尻が、ケイナさんの時の様に、淡く光り始める。俺はアーレイの尻を掴み


「戻ってこい! 邪神になったり、死んだらダメだ!」


 必死に呼びかけた。意識がさっきよりも遠のいていく気がする。


「━━━━ッ! さっきよりも……きっついなあ!!」


『━━━コロセ』


 神界で聞いたあの声が、頭の中で響く


「またかよ! そうそう負けてらんなッ」


 視界が揺らぐ


『━━━チカラ━━━━トキハナテ』


 ふざけんな、あんな力無くても俺はアーレイを救えるんだ! お前は引っ込んでろ!


『━━━━━━━━━━トキハチカイ』


 光が収まり、俺は腰が抜けてしまいその場にへたり込む。


「はあ、はあ、はあ。危ねえ、頭が、ぶっ壊れるかと思った……」


「洋一! 大丈夫なの!?」


 蘭が直ぐに、俺の側に飛んできてくれる。心配かけちゃったかな。


「あ、ああ大丈夫。思ったより力使ったみたいでさ、疲れちゃったよ、ははは。アーレイは大丈夫か?」


 尻をだし、横たわるアーレイ。


「うっうん。大丈夫よ、回復はかけたし」


『ヨーイチ大丈夫なの? さっきヨーイチから、物凄い力を感じたけど━━━』


「力? たっ多分邪神の力を消す奴じゃないかな。俺にもよくわかんねーし」


 実際にこの力がなんなのか、封印されたはずなのに何故また漏れ出したのかは、俺にもわからんから嘘は言ってない。


「ファンキー爺いめ、アーレイに因子があるなんて言ってなかったよな? 見落としか?」


「創造神様が見落としたか、後はなにか、覚醒の前兆が無いとわからないかのどちらかね」


 アーレイの場合は両親を救えなかったのに、救える力を持って現れた俺への妬みや嫉妬で、感情のタガが外れたって感じかな? 後は力の無い自分への後悔か。


 俺と同じなんだよな、救えなかった事や神獣の契約者だって事も。


 アーレイのスカートを元に戻し、アイテムボックスに入れていた布団に寝かせる。


「フーシェン……すまなかったな。なんか、余計な事に巻き込んでしまって」


「マスターをお救い頂きありがとうございます。ワテクシはこうなる可能性があると、創造神様より聞かされていましたので……」


「ええ!?」


「ワテクシ、なにもなければ話す必要は無いと……言われてましてたので……はい」


 ファンキー爺いめ、あいつには報告連絡相談って機能はついてないのかよ!


「フーシェン、ファンキー爺いのせいで苦労してるんだな」


「いっいえ昔からなにも変わらないお方なので、ワテクシ苦労なんて事は……恐れ多い事は……」


 俺は、フーシェンの頭を撫でる。蘭とは違う、毛触りだか気持ちいい。


「フーシェン、頑張れよ。何かあったら蘭経由で連絡くれたら俺達はいつでも力になるからさ」


「邪神の因子も消えたし、アーレイも前を向けると良いんだけど」


 蘭は優しく、アーレイを見つめている。


『大丈夫でしょ、心のしがらみは取れたみたいよ。ねっアーレイ』


 リュイがアーレイに声をかけると布団がモゾっと動く。


『ねえねえアーレイってば、恥ずかしいんでしょー? 可愛いなあ』


 リュイはニヤニヤしながら、アーレイの周りを飛び回る。


「うっうるさいのじゃ! ヨーイチとか言ったな! 責任取るのじゃ!」


 責任? 何の責任だ?

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