第64話 我が必殺のアナルブレイカー!

 アリスラの風景は、何処か異世界なのに懐かしい印象を受ける。


「なんだか、懐かしいような……」


「(洋一、あそこの商店街をイメージしてるんじゃない?)」


 そうだ! 上野のアメ横だ! この店から品物が出てる感じ! 人のごった返す感じ! いやー懐かしい。人種や売り物どころか世界すら違うのに何故かほっとしてしちまうな。


『(ねえ……ヨーイチさっきのアリアとか言うオッサンが、つけてきてるよ)』


 おっさんめ! 俺が、ほっとした瞬間これだよ……。男のストーカーなんて、ノーサンキューなんだがなあ。


「(転移で一回街を出て、しばらくしてから街にもどる?)」


「うーん。目的がわからんしなあ」


 蘭、俺をアリアの真後ろに転移してくれ。ちょっと脅かしてやろう。リュイも軽めの電撃を準備してくれ。


「(わかった)」


『(任せなさい!)』


 俺達は、アリアの真後ろに音も無く転移した。アリアは突如俺達が、消えた様に見えたのか、辺りをキョロキョロと見ている。


 ターゲットロックオン!


 リュイいくぜ! 俺の指に、雷を纏わせてくれ


『(ちょっと痺れるわよー!)』


 あばばばばばばばばばばばばばちょっとどころじゃないが、このままいくしかない! 喰らえ! 必殺のアナルブレイカー!!!


「ギャバババババババババ!!」


「あばばばばばばばばばばばばば」


「(洋一まで、ダメージくらってますね。リュイ様ちゃんと加減しました?)」


『(えっ!? 周りに光や音が漏れない様にしたよ? 雷を慎重に束ねてね! ちゃんと周りに被害がいかないように、頑張ったもの!)』


「いててて、リュイもっと加減してくれよ。俺じゃなかったら、死んでるぞ……あっあれ? 口から煙を吐いてるぞ? 焦げ臭いおっさんて……」


 黒こげで、煙を吹いて倒れているアリア。重度の火傷もしていた。


「(中身から、ガッツリ焼かれたわね)」


「ひえっ! 死んでるのか!? 」


 やべえ街に来て早々、雷カンチョウで人を殺めてしまったかもしれない……埋めるか? 埋めちゃえば、ばれないか? いや転移で逃げるか? ダメだ大人しく出頭しなければ……。


「(生きてるわよ、ここが路地裏で良かったわね。とりあえずヒールするわ。装備や服はダメだけど)」


 良かった、生きていたらしい。ちょっと待てよ? 普通の人がくらったら死ぬような電撃を俺は毎回浴びせられてるのか?


「蘭、ちょっと聞きたいんだが……リュイの攻撃で、アリアは死にかけたのは間違ってないよな?」


「(間違ってないけど、どうしたの?)」


「俺がいつも浴びせられている電撃の威力と、比べたらさっきの電撃の威力はどんなもんだ?」


「(うーん? 5分の1位じゃない?)」


 5分の1か……良く死なないな俺。リュイの電撃に対してだけならチートだな。


『(はわわわ……ヨーイチごっごめんね? ヨーイチに効かないから、最近どんどん威力上げてて……威力を上げれるのが楽しくてつい……)』


 そうか、そうか。楽しかったなら仕方ないが、他の人には死ぬ可能性があるから、もっと威力下げような?


『(はーい)』


「うっうん……俺は一体……」


 アリアが目を覚ましやがった、どうするかなあ。全力でごまかすしかないか。


「大丈夫ですか!? 突然焼け焦げてしまうなんて……! なにか大きな病気ですか? 病院に行きますか!?」


「尻が痛いのと、服がボロボロな事意外は問題ないな……」


 問題はあるんだ……貴方の剣はもう鞘から抜けません、何故なら溶けて、ガッチリと固まっているからです。


 なんて言えねえええ!! どうしたら良いかわからんから愛想笑いをしておこう。


「お前! なんで、俺の後ろに!?」


「倒れた人がいたから、助けに来たんですけど……」


 これなら不自然じゃないはず。


「消えた気がしたんだが━━━。まあ良いか、バレちまったなら仕方ねえな。暴れラプダを大人しくさせる秘訣が知りたくてな」


『(おじさん、嘘をついてる)』


 リュイが直ぐにアリアの言葉を嘘と、断定した。


「嘘だね。俺に嘘は通じないよ」


 アリアの目線が鋭くなる。射抜くような視線だ。


「ほおう」


「でなんの目的? 兵士さんに嘘までついて、金を握らせてさ? なにがしたいの? 金なら見た通り持ってないよ」


「カハッ! 胆力は中々だな。俺は、ある人の依頼でお前を陰から支援する様に言われてたんだが、必要無さそうだな」


 ニヤリと笑うアリア。


 リュイアリアの言葉に嘘はあるか?


『(うーん? 微妙だけど、今はない!)』


「嘘は無いみたいだね。ある人ってのは教えてくれるの?」


「カハッ! それは言えないな」


 そりゃ依頼人を明かす程、馬鹿ではないか。


「カハッ! まあこの街での注意事項は裏街には絶対に近づくな。あぶねーからな、それじゃ俺は行く。また会おう、次は戦ってみてえもんだなあ」


 アリアの目線は俺じゃなく、蘭を見ていた。


 去って行くアリアの姿は強者のそれだったが、俺は知っている。アナルブレイカーにより、アリアのズボンは破れている事を。


 アリアはカッコよく決めていたが尻の穴が丸出しのままだと言う事を。


「きゃああああ!! 変態!」


「尻丸出しのいかれ野朗だ! 兵士を呼べえええ!」


 アリアが去って行った方向が、軽くパニックになっている。


 街中で尻を出す探索者が現れたと、話題になったのは言うまでもない。

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