第25話 神!? いやゾンビだな……


 紗香さんの体調は本調子じゃないので、アナスタシアを光一の部屋に連れて行く。


『こんな綺麗な内装の建築物見た事無い。私の世界より、ここだけめちゃくちゃ発展してるじゃないの……』


「おい、早く入れよ」


『あっはい……すみませんえへへ』


 揉み手をしながら部屋に入るロリガキ、怪し過ぎる。


”あの、この方はどちら様ですか?”


「こいつは、女神を自称しているロリッ子。紗香さんのスキル魔力大活性を封印したいんだと、封印しないと回復魔法やらが効きにくいらしいからさ」


”そうなんですか? あまり神様を自称するのはダメよ? バチがあたっちゃうわよ?”


 優しくアナスタシアに説教をする紗香さん。学校の先生向きだな


『はっはい、ごめんなさい……』


”反省しているならいいのよ? もうしちゃだめよ?”


 優しく、アナスタシアの頭を撫でる紗香さん。それを見て事実を言うか悩む光一。シュールだな。


「そういやレイ先生や、エレン爺いは?」


『あっあのこの世界の人に私の神気は強過ぎるから、2人の時間は止めてます』


 ああだからか、前にレイ先生に女神が現れたって話をしたら興奮してたからな。時間が止まってるんだから突撃して来れない訳か、納得。


「ヨーイチ、お客さん来てるの?」


「アナスタシアって言うロリガキが来てます」


「アナスタシア? どっかで聞いた様な名前ね……。お客様ならお茶持ってくるわね」


 レイ先生は自然にお茶を取りに行った。


『えっ!?』


「おい、アナスタシア。話がいきなり違うじゃねえか、しかも女神だって思われてないぞ」


『あっあれ何で?』


「そう言えばエレンさんは工房の修理してましたよ」


 エレン爺いにとっては神より窯か。


『えっ? えっ?』


 おいおいこいつ大丈夫かよ。いきなり破綻してるぞ、本当にスキルを封印出来るのか?


「大丈夫なんだろうな? 封印できんだよな?」


 怪しいめちゃくちゃ怪しい。


『封印は大丈夫です、はい』


 ない胸を突き出してるが、どっからその自信は来るんだよ。俺には不安しかないわ。


「多分私と洋一のせいだね。2人は私と洋一と暮らしていて、耐性が身についたのね」


「あー蘭が神獣だからか」


「多分だけどね」


 ん? 待て蘭はわかるが俺は? 俺何て村人以下だぞ?


「じゃあ俺は?」


「洋一には神威とかは効かないみたいね。その影響が少なからず周りにも出てるみたいね」


「ほーそうなのか」


 称号ねえ、あれって誰が決めてんだろうな


「おい、アナスタシア称号とか職業欄って誰が決めてんだ?」


『あれは、私の配下の天使達です』


 俺の職業欄が常に煽ってくるのはこいつのせいか。


「ほう、お前の差し金か」


『ひえっ私と言うか私の部下があのその……』


”洋一君、アナスタシアさんも困ってるからその辺にしてあげなよ?”


 紗香さんから怒られてしまった、アナスタシアが悪いのに。後で称号と職業欄に関しては詰問しよう。勇者に変更させよう。


「とりあえずは紗香さんのスキルの封印が先だな」


『では、封印をしますね。紗香さん心を落ち着けて楽にしてください』


 おお、アナスタシアから神々しい光が出ている気がする、眩しいぞおい。


「眩しいな」


『ハイシール・対象は柊紗香の魔力大活性。はあああっ!!』


 すげー気合いだ、男みたいな掛け声だな。


「男らしい掛け声だ」


『はあああああああ!!!』


 うるせえな、静かにやれないのかよ。


「うるせっ」


『ほあああああああああああ!!!』


 一際大きい声で叫んだ瞬間光が消えた。同時にアナスタシアから出ていたオーラ? も消えた。


『はあっはあっおっ終わりました……おぇっ……』


 汗だくのロリガキ、表情は今にも死んでしまいそうだ。


「お前すげえ顔してるぞ、正直気持ち悪い」


 ゾンビみたいだな。


『ひっひっひっひっ』


「アナスタシア様その、おっお疲れ様でした」


 光一もめちゃくちゃ引いてるじゃないか。


「封印出来ましたか?」


『おっおみ、お水』


 光一がお水を取りに行き、干からびたアナスタシアに渡す。


『ぷはー!! 生き返るわ! 封印はちゃんとできたわよ、神気ごっそり持ってかれたけどね!』


「神気が何かは知らんが封印が出来たなら良し。サンキュー」


『軽っ! もっと敬いなさいよ!』


「ああん? 誰を敬えって?」


 棍棒をチラつかせ睨むと


『ひぃ! あっ封印の注意事項を説明するわよ!』


 アナスタシアが急に説明口調で喋り出した。


『貴女が意図して魔力大活性を使わなければ、基本的にはこの封印は解けないわ。だけど、外的要因なら話は別。

魔族特有のスキルで活性化かっせいかとエルフの秘儀地脈法ちみゃくほうを使われたら、相互干渉して封印が解けるから近づかないでね』


「魔族に知り合いはいないから大丈夫か」


『魔族に関しては貴方達の結界内に入れないから問題ないわ。エルフの地脈法の方がやっかいよ、魔獣の森に入って来るエルフはいないだろうけど、気をつけなさい。魔力大活性はバレたら狙われるわよ?』


「狙われるって何でだよ」


『当たり前でしょ? 今はスキルの方向が定まらず地脈に流れたけど、それを人に向けて使えば……その人の魔力は10倍んーん、それ以上になるんだから』


 10倍以上ってやばいな。まあエルフ何てレイ先生しか今のところは知り合い居ないから大丈夫だな。


「まー話はわかった」


『魔獣の森が強くなって腕試しに入ろうとしてる探索者も増えてるから、ほんと気をつけなさいよ』


 腕試しって禁足地じゃないのかよ。


「アナスタシア様ここは禁足地じゃないんですか? 確かレイの話だと禁足地に指定されていたはずです」


 そうだ蘭言ってやれ


『名目は魔獣が溢れ出したから間引いているのよ。今の禁足地に中心部まで来れる人何ていないとは思うけど』


「ここ中心部なのか?」


『ええ、正確に言えばアスベルク王国寄りだけどね』


「ふーん」


『私はちゃんと伝えたし、スキルも封印したから帰るわよ!』


「帰れ帰れシッシッ」


”だめよ、洋一君そんな態度しちゃ”


 紗香さんに注意されたが、こいつに関わるとろくな事がないからな。


『きー! 覚えてなさいよ! この悪魔めっ! とう!』


 空を飛ぶ様なポーズをしてその場から動かないアナスタシア


「何やってんだ?」


『あっあれ? おかしいな、とう!』


 再度同じポーズをするアナスタシア。


「お前まさか」


『あっあははは帰れなくなっちゃったみたい、テヘペロ』


 また新たな問題が増えた。

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