第10話 イケメンはお断り

「何でここにに**風の一軒家が? まさか同郷の人が? あの、すいませーん、誰かいませんか? お話を聞きたいんですが」


 外を覗くと家の玄関にやたらと派手な装備のイケメンが居る。ガチャガチャやかましいな。知らない人だし居留守、居留守。


「洋一、開けてあげないの?」


「リュカとかレイ先生クラスの可愛い女の子なら開けるよ、だけど男だよ? イケメン何て爆発して死んで欲しいし」


「話し声がする! おーいすいませーん開けてくださいー」


 ゲッあのイケメン地獄耳かよ、あーうるせえシカトシカト。早くレイ先生とリュイ帰って来ないかな。


「あのーもしもしー! 怪しい者じゃありませんよー同郷かもしれないんだ諦めないぞ!」


 自分で怪しい者じゃないとか、めちゃくちゃ怪しい奴だ。半泣きだし、ん待て同郷?


「あのそんなにドアをガチャガチャやらないで下さい。今開けますから」


 そこには黒髪黒目身長は170センチ位の白銀の騎士が居た。


「黒髪黒目! やっぱり! 君は日本の人だよね? よかった、同郷の人だ、ああーーーーよかった」


 俺に抱き着き泣き崩れた、装備が硬くて痛い。更には泣いてるし、イケメンだしで最低最悪な気分だよ全く。


「あっあのー?」


「もう、二度と同郷の人に会えないと思った、英雄だとか勇者の再来だとか言われて、魔物や盗賊と闘わされてばかりでうっうっ……」


 凄くうざい、まじでうざい。イライラしてきたぞ。


「五月蝿え! 男だろ泣くんじゃねえ」


 頭を引っ叩いてやったぜ。


「あっああ、ごめん、ごめんよ」


 男の涙何て誰得だよ。


「んで? 同郷がどうとか言ってたけど、日本から来たの?」


「失礼しました! 僕の名前は日比谷光一、歳は16歳。東京で交通事故に遭い死ぬ直前に女神アナスタシア様に助けられて、この世界に転移して来たんです」


「事故の直前に助けられたのか。そのアナル、いやアナスタシアって、金髪の痴女か?」


「痴女!? いや僕が会った女神様は赤髪だし、痴女では無いと思うけど……いや実は痴女だったのか?」


 痴女じゃないのか、あいつまじで無名だな。


「チッ、痴女とは関係ないのか。どうしてこんなところに?」


「この女神様から頂いた装備が原因で祭り上げられてしまい、戦いを強要されてそれで…………」


 それから光一はポツリポツリと身の上話をしてくれた。


 召喚されて直ぐ盗賊に襲われてる人がいて、何とかスキルを使って助けたら、襲われていた人が国のお偉いさんだった。

 それから強引に国に連れてかれてステータスや装備を鑑定され、魔物退治やら盗賊退治に連日駆り出されるようになり、終いには人間同士の戦争に行けと言われて、怖くなりその国から逃げ出したらしい。


 最後以外は王道テンプレじゃねえか。


「要はヘタレて逃げたら、日本家屋があって感極まって泣いたのか」


「うっまあその通り何だけど、洋一君はどうやって来たの? 」


 俺は実年齢、前の職業、召喚された経緯や如何に女神アルテミスが糞かを話した。蘭が神獣である事も含めてな。


「そんな酷い女神様もいるんだね、ちなみに僕がいた国はアナスタシア様が信仰されてたよ。確か僕が読んだ英雄譚に出てくる邪神に似たような名前があったような気がする……」


「邪神あー痴女だしな。うん、邪神だろう猥褻物陳列罪的な意味で」


「猥褻物陳列罪で討伐される邪神って嫌だな…………」


「光一君、アナスタシア様に魔王とか居るとか言われたか?」


「いや、僕は顔がタイプだし好きに生きなさいって。それにチートや装備もあげるから人生楽しんでこーいって送り出されたよ」


「軽っ! めちゃくちゃ軽いなアナスタシア」


 あいつとは違うタイプだが、とんでもねえ女神だ頭が軽すぎる。パーリピーポー系だな。


「ねえ光一スキルとか称号見てもいいかな?」


「おっ蘭、英雄と言われるような奴のステータスってやっぱ気になるよな! 光一見せてよ」


「構わないけど、でもどうやって」


蘭は壁にステータスを映し出す。


日比谷光一

16歳

職業ーー


称号 チキンハート 祭り上げられた男 転移者

レベル15

体力500

魔力300

攻撃力650

防御400

素早さ700

運10

スキル

剣神 けんしん(剣技全てが扱える)・アイテムボックス ・鑑定・鼓舞こぶ(味方の攻撃力と防御を30アップ)・精霊眼せいれいがん(精霊を見たり、言葉を交わしたり、精霊を瞳に宿し力を借りる事が出来る)


「強っ! 何だよめちゃくちゃチートじゃん」


 すっげえ、情けない称号以外チートのオンパレードだ。


「こんな力いらないよ、魔物は怖いし……人を殺すなんて無理だし。僕は平和に暮らしたいだけなんだよ。戦いたくないんだ」


「自衛の手段があるだけましだろうが、俺なんて村人以下だぞ。同年代でギリギリ勝てるかどうかってレベルだ」


「洋一は弱いからね、だから私がいるんだけど」


 自虐発言にもフォローしてくれる蘭優しすぎだろ! 惚れてまうやろ!


「二人は良いコンビ何だね、羨ましいよ。二人は人里に行かないのかい?」


 当然気になるよなあ。


「行かないって言うかステータスが貧弱! 貧弱う! 過ぎて行けない的な? それに特に今は不便無いしな。いっそここに永住しようかなって考えてる」


「そんなんだから、洋一は職業引きこもり何だよ」


 バラしやがった! 歳上の貫禄的なの出したかったから触れなかったのに、まあ土台この幼い見た目じゃ無理か


「そっそんな職業がこの世界にはあるのか」


 光一の野郎、調子乗りやがって。絶対勝てないから喧嘩売らないけど、スキル無しでも勝てる気がしないし。


「何なら光一もここに住むか? 魔王もいないし、好きにしていいんだろ?」


「えっいいの?」


「狩が嫌なら畑作って畑仕事でもするか? 狩は俺と蘭がやるし」


 同郷の子供が軍事利用されんのとか、正直心が痛いし。蘭頼りになっちゃうけど、家と畑を用意してやれば、俺は野菜が食える、彼は肉が食える。WIN WINの関係だな。


「戦わなくていいの?」


 おどおどしながら聞いてくる光一。


「16の子供が無理に戦う必要はないぞ? 幸いここは立ち入り禁止の魔獣の森らしいから、来たとしてもレイ先生くらいなもんだからな」


 俺がそう言うと、光一はまた泣き出した、余程辛かったんだろう。そりゃそうだよな、狩をした事の無い人間がいきなり、生き物を殺せだ、刃物や悪意剥き出しな大人と戦え何て。チートステータス持ってても辛いよな。


「ああ、好きなだけ居たらいいよ。なっ蘭?」


「使命も無いんだし、無理に戦う必要は無いと私も思うよ。洋一は強くなりたいみたいだけど、光一はそうじゃないんでしょ? そのステータスあれば生きていけるしね」


 そのステータスが俺には羨ましいんだけどな。努力でいつか超えてやるぜ!

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