第237話 魔王軍

俺とジャイアントハーフの聖騎士リンと剣聖ルイの3人は、オトキ帝国の帝都ダチヨに向かっており、途中にある小さな町チマルノーの宿屋にいた。


ブラックジャガー獣人のノワは魔王と勇者の情報収集をしており、この町で待ち合わせなのだ。


夕飯も食べて広めの部屋で寛ぐ俺。リンとルイは横で武器の手入れをしていた。


コン、コン、コン。


ドアが3度ノックされた。


「ん? 誰だ」


「ノワです。戻りましたー」


俺の誰何にドアの外からノワの声が聞こえた。


「入って良いぞ、鍵は掛けていない」


ガチャ。


「ただいま戻りましたー」


ドアが開きノワが入って来た。


「魔王と勇者について調べて来たよー。調査は継続中だけど、今までで分かった事を報告しまーす」


「おう! ご苦労様。まあ、座ってくれ。ルイ、ノワにお茶を入れてあげて」


「はい」


ルイがお茶の支度をし始めた。


「早速だが、先ずは魔王が占領している国々の様子から教えてくれ」


「魔王が占領したテイワ王国とターキ王国は、一言で言うと敗戦国だねー。町中に亜人とモンスターが闊歩していて、住民達は恐れて閉じ籠っているみたい」


「ふむ」


「やはり、魔王軍は恐ろしいのですね」


ルイが俺とノワの前にお茶の入ったカップを置いた。


「まあ、占領されてあまり月日が経っていないからねー」


「リアオモ王国の様子はどうだ」


俺はルイの言葉は無視してノワに続きを促す。


「リアオモ王国は落ち着きを取り戻しているらしいよー。各国を魔王軍から派遣された魔族が管理しているようねー。各都市については占領前と変わらないみたい」


「やはり、エルフのババアが言っていた通り、人類は皆殺しになっていなかったんだな」


「そうですー」

ノワはそう言うとお茶を飲んだ。


「そうなのですね」

ルイはなにやら納得したようだ。


「悪魔は占領された国にはいなかったのでしょうか?」


武具の整備を一通り終えたリンも会話に加わった。


「そうねー。いなかったよー。戦争の時はいたみたいだけど、占領後は姿を消しているらしいよー」


「そうか……」

俺は顎を触りながら考える。


単純に戦闘の為だけに召喚しているのか、または勇者パーティーのように、少数精鋭で魔王を暗殺しに行く戦力を警戒しているのか。


「魔王は何処にいる」


「良く分からないみたいなのー。継続して調査中ですー」


「そうか。宜しく頼むよ。王国の元暗部達が調べているんだろ?」


「うん。元暗部も調べているけど、流石に魔王国までは暗部も潜入出来ないので、サトウ国の亜人達が潜入しているって報告を受けたよー、あのゴブマルを始め探索が得意で強力な者が魔王国に潜入しているんだってー」


「おお、ゴブマルかぁ。なんだか懐かしいな」


「ところで、サトウ国からタクミ様に報告があったよー。帝国からサトウ国に休戦と対魔王軍の同盟を組みたいと申し入れがあったみたい」


「ほうほう。それでどうした?」


「基本的に休戦も同盟も受け入れない予定だけど、タクミ様が望むなら受け入れるので、どうしますかー、だって。」


「今のところは拒否でいいな。戦争継続だ。どうせ帝国のことだから、上から目線で『マサイタ王国の経済制裁を止めてやるから休戦して同盟に応じろ』とか言ってきたんだろ」


「ははは、それよりも酷くて『対魔王軍の前線に出ろ』って言って来たみたいだねー」


「あいつら馬鹿じゃないの……」


「人類の滅亡が掛かっているから、協力するのは当たり前だー。帝国からは勇者を派遣するから盾となって戦況を支えろーって言ってるみたい」


「あほか!……戦争継続決定だ!」


「畏まりー」

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