第150話 月狼

さて、依頼を受けたのでサクッと達成しよう。


都市の近くにあるモンスターが出現する森林で、討伐と素材集めが殆どだ。


「森と言えばノワの独壇場だね」


「お任せくださーい!」

ブラックジャガー獣人のノワが、フンスと鼻息も荒く張り切っている。


依頼票もノワに預けて、効率良い順序を考えて貰う。


ノワの探敵、探索のスキルは凄まじく、音や臭いの他に魔力の探知能力によるものだけでは、考えられない事もあった。


それは、臭いが無い植物や茸類など、森の地形や、周りの木々の種類等による環境から、的確に採取出来る場所を特定出来るのだ。


戦いも俺が出るまでもなく、次々とモンスターを狩り、解体し素材を集めて行く。


「あっちにありそうなので、ちょっと見てきまーす」

と言って、木々を渡って何処かに行っちゃう。


慌てて追って行くと、狩りを終えて解体も終わりそうな状況だったりする。


「あ!もうちょっとで終わりますので、待っててくださーい」


「依頼の達成には、私の経験が役に立つと思ってましたが、全く手伝う事も出来ないなんて・・・」


剣聖ルイは酷く落ち込んでいた。


「ノワは凄いね。森の事ならSSランクの依頼でも、問題なく達成出来るかもね」

とノワを褒めると、


「えへへー」

と照れ笑いをしているノワは、ちょっと可愛い。


ジャイアントハーフの聖騎士リンはと言うと、俺の直ぐ後ろから無言で護衛に徹してついてきている。


その時、ノワが耳をピクピク動かす。

「この先でフォレストウルフに襲われている冒険者がいまーす」


「襲われてる? 戦ってるじゃ無くて?」


「そうでーす。明らかに劣勢で何とか凌いでるみたいだけどー、それも長く無い感じー」


「ふうん。助けるか。行ってみよう」


俺達はフォレストウルフに襲われてる冒険者達のところに急いで行った。


10匹のフォレストウルフに襲われてる5人の冒険者がいた。


10匹の内1匹は身体が大きい、月狼ハティだな。前にダンジョンでフェンリルと一緒にいた奴だ。


3人は負傷して動けない女性を、2人の男の冒険者が庇いながら、何とか凌いでいる。


「こんにちは!助けは必要ですか?」

一応聞いておかないとな。


「ああ!頼む!助けてくれえええ!」


「了解。ノワとルイは攻撃ね。リン、回復を頼む」


「分かったー」

「承知しました」

ノワとルイは返事をする前から、フォレストウルフに向かっていた。


「畏まりました」

リンは5人の冒険者の前で、エリアヒールを放つ。


「え? え? 回復してる?」

「本当だ!凄い」

冒険者達は驚愕。


ノワがナイフでフォレストウルフ2匹の首を一瞬で掻き斬り、ルイは袈裟斬りで1匹の首を、返しの横薙ぎでもう1匹を瞬時に斬り払った。


ノワとルイを擦り抜け飛び掛かって来た、1匹のフォレストウルフのこめかみに、俺の渾身の右拳のフックが炸裂した。


魔王の手甲を付けて、いつも手加減して死なない様に殴っていたので、全開で殴ったのは初めてかも。


フォレストウルフの顔が破裂した。


残り月狼ハティとフォレストウルフ4匹。


その時、1人の冒険者が俺達の目の前に駆けて来た。


「俺が来たからにはもう大丈夫だ!」


巨大な大剣を背中に背負った。

金髪青目の偉丈夫の男。


誰だ?こいつ。

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