第149話 受付嬢カスザ2
俺達はCランク以上の塩漬けになりそうな依頼票を持って、受付の列の最後尾に並んだ。
受付に並んでいた冒険者達は、俺達を見ると列の前に並ぶ様に勧める。
「前にどうぞ」
恐れながら列の前に入れようとする。
「いや、後ろで良いよ」
って言ったが。
「そんな事言わないで、どうぞどうぞ」と空間を空けて言われるので、「ありがとう」と言って前に並んだら、その前の冒険者も、その前の前の冒険者もみんな避けて、結局一番前に来た。
「はぁ、そんな気は無いんだけどね。傍若無人な冒険者が『退け退けぇ』って言って、列を無視して受付に来たのと、結果的に同じだよなぁ」
と仲間に話し掛ける。
「ん? 分かる様な分からない様な理屈ですね。多分この前タクミ様が暴れて、冒険者達を脅したからビビってて、後ろに並ばれると怖いからだと思いますよ」
とルイが応える。
「え!そんなに暴れたっけ? それはそれで問題だな」
と話をしていると。
「タ、タクミ様、今日はどの様なご用件でしょうか?」
受付のカスザがビクビクしながら恐る恐る聞いて来た。
「おや、カスザさんじゃないか。」
「こ、この前は、すいませんでした!特許アンタッチャブルに指定されてるとは知らずに、失礼な態度を取ってしまいました」
カスザは小声で早口で謝罪を告げる。
「う~ん。そう言えば、あんた、俺がギルド長に相談してから、連絡しろって言ったのに、去り際にルイに緊急依頼の発動を告げてたなぁ。それはどうなってんの?」
カスザさんは受付から出て来て、土下座をしながら謝罪し始めた。
「ひぃ、すいませんでしたぁ。お許しください。緊急依頼など発動出来ない事を知らずに失礼致しました」
「タクミ様、ちょっとやり過ぎでは無いでしょうか?」
ルイが周りをキョロキョロしながら、俺を諫める。
「そ、そうかなぁ。ルイは遣りたくないゴブリンの討伐を、無理矢理遣らせられるところだったんだよ。その上、自分で強制依頼を発動しておいて、撤回しないで、ギルド長に頼んで、暴力で言う事を聞かせようとしたんだ」
と言って、俺が周りの冒険者達を見回すと、ヒソヒソと話をしている。
「カスザさんに土下座までさせちゃってるよ」
「カスザさん可哀想」
「あの人達、怖いよねぇ」
「早く先輩達帰って来ないかなぁ」
「イヤ、ギルド長も副ギルド長もぶっ飛ばされたんだぜ、先輩達も押さえられないって」
「だよなぁ。副ギルド長は再起不能になったって聞いたぜ」
「俺も聞いた。副ギルド長は、言葉も喋れない状態らしいぞ」
「俺は見てたよ、副ギルド長はボロボロになるまで殴られてた」
「怖かったよなぁ」
俺は冒険者達のヒソヒソ話を聞いて。
「あぁ、やり過ぎかもね。ルイに問題が無ければ不問としよう」
「あぁ、ありがとうございます」
カスザは俺の手を両手で握り、感謝の言葉を告げる。
「はいはい。ところで、依頼を受けたいんだけど」
依頼票を受付のカウンターに置いた。
カスザは依頼票を見て、
「あぁ、塩漬けになりそうな、Cランク以上の依頼を受けていただけるのですね」
「あぁ、そうだけど、Aランクのルイがいるから問題無いよね」
「例えルイ様が居なくとも、特級アンタッチャブルのタクミ様は、全く問題ありません」
「そ、そうか」
取り敢えず依頼を受ける事が出来た。
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