第142話 ゴブリンの事情

俺とジャイアントハーフの聖騎士リンと剣聖ルイは、ブラックジャガー獣人のノワがゴブリンの集落で集めた情報を聞く事にした。


ノワの話によると、ゴブリンの集落は昔からあって、この辺りを縄張りとしていた。


そこに、人族が開拓村として、マイーヤ村を作って住みだした。


当然、人族とゴブリンの間に絶えず、いざこざが発生していた。そのような中で人族の子供が、ゴブリンの集落近くに紛れ込み、ゴブリンの子供を殺した。


それを見つけたゴブリン達が、子供を襲ったのが、今回の背景だった。


ノワの話が終わると、リンとノワがルイを見た。


「でも、それは開拓村ではよくある事じゃ無いんですか? 村を作り周辺の脅威を排除する。普通の事です。それに私はゴブリンに人族の子供が殺されるのを、黙って見ているなんて出来ません!」


とルイが気まずさからか、早口で捲し立てる。


「だからって、ゴブリン達を殺さなくても・・・」

リンがルイに言った。


「だって、知らなかったし!」


「今更、もういいだろう」

俺がリンとルイの間に入る。


ノワは話を続けた。


「今晩、ゴブリン達はマイーヤ村を襲撃するわ」


「ルイ、どうするの?」

リンがルイに尋ねる。


「どうって・・・。もう分かんなくなっちゃった。私だって、別に人族が全て正しいとは思っていないし、亜人が全て悪だとも思っていないわ」


「でも発端は、恐らくルイがゴブリン達を殺した事だわ」

リンがルイを問い詰める。


リンもジャイアントハーフとだった事で、小さい頃苛められたり、辛いこともあったのだろう。いつになく強硬に言い張る。


「こんな時、今まではどういう行動をとってきたの?」

とルイが俺に聞く。


「どうだろう?」

俺はノワとリンを見た。


「タクミ様は、人族も亜人も関係無いのよ!悪い者を倒すわ!」

とリンがルイに言った。


「いやいや、俺は正義の味方じゃ無いから、俺に敵対する者を倒して来ただけだ」


「明らかにマイーヤ村は我々に良い感情を持ってませんでした」

とリンが言うが・・・。


「それだけの理由でゴブリンに肩入れして、マイーヤ村を襲撃なんてしないからな」


「じゃあ、何でノワにゴブリンの集落を調べさせたんですか?」

なんでルイが俺に食って掛かかってんの?


きっと、「知らなければ、こんな思いをしなかったのにぃ!」って言葉が続くんだろうな。


「ルイ!ルイの教育の為だよ。俺達に付いてくるなら、亜人差別の考えは持って欲しくないんだ。たとえ人族の子供が襲われてても、理由を聞いて納得して戦った結果、ゴブリンを殺すのは良い。しかし、見た目だけで、理由を聞かずに殺すのは俺のポリシーに反する。俺の配下にはゴブリンもコボルトもいるんだよ」


「うぅ・・・」

ルイは泣きそうになっていた。


「例え人族から見て極悪と言われようと、俺は亜人差別はしない」


「結局、マイーヤ村は襲わないですかー」

とノワが言う。


「襲わんよ」


「えー」

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