第124話 マヒロシ王国と敵対した

「タクミ!貴方が悪魔から私達を救ってくれたのね。」


第三王女ラナが俺の元に近付いて来た。


「そうだ。村人達を連れて、直ぐにここから逃げろ。」


「それは騎士達に任せるわ!貴方は私と一緒にその洞穴に入って、悪魔を退治しなさい。」


「だから!退治はしないって言ったよなぁ!馬鹿だから覚えてないのか?」


「ば、馬鹿ですってぇ!キィー。」


「もう1回言うぞ。俺は悪魔と戦うつもりはない!自分達で戦え!」


「煩い!一緒に来なさい!」


「きさまぁ!姫に無礼だぞぉ!」


騎士の1人が剣を抜いて、俺に飛び込み剣を振り払った。


俺は飛び退き剣を躱すと、平然と騎士を見ている。


騎士は剣を振りきった姿勢で固まっている。


ちょっと間をおき、騎士の首が落ちて倒れた。


ドサッ!


「きゃああ!」

ラナは両手で顔を覆い、短い悲鳴をあげた。


此奴ら、何?


恩を売る訳じゃ無いけど、悪魔に攫われそうになったのを、俺が助けた事を一応は認識してるんだよね。


俺が誰なのか認識してるのかな?

平民服だからなのか?


御礼も言わず、いきなり斬り掛かって来るなんて、これはアウトでしょう。


誰も止めようともしないしね。


「サッサと引き揚げないと、悪魔が来るぞ。折角助けたのに、このままでは村人もお前達も全滅だな。」


騎士達がラナの前に出ると、剣を抜いて俺に対して身構えた。


「ほう、今直ぐ全滅する道を選ぶんだな。」


ああ、折角助けたんだけど、ここまで敵対されたら、しょうが無い。


俺の隣でジャイアントハーフの聖騎士リンが、盾と短槍を展開し構えた。


剣聖ルイはどうして良いか分からずオロオロしていて、ノワは姿を消した。


俺とリンは騎士達と対峙した。


一触即発。


その時、ラナの後方から走り寄る者がいた。


「お前達、剣を納めろ!タクミ様、この度は救助、有難う御座います。」


騎士隊副隊長ジモが、身構えている騎士達を掻き分け前に進んできて、俺に頭を下げる。


「早く剣を納めろ!」

ジモが叫ぶ。


「しかし、チモリグが殺されました!これは、我々騎士隊に対する明らかな敵対行為!引く事は出来ません。」


俺が首を斬った騎士の名前はチモリグと言うのか。


「タクミ様が、チモリグを斬り殺したところを見たのか?」


「見てはいませんが、チモリグがそのものを攻撃した直後に首が落ちました。その男が何かしたに相違ありません。」


うん。正解です。


「はぁ、ラナ王女。国王様より王家全体に、タクミ様には手出し無用の通達が出ているはずですが、これはどう言う事ですか?」とジモ。


「え!国王から手出し無用の通達が出てる?・・・。」

騎士達はザワザワしだした。


ラナは恐怖で震えてた身体を、自分で抱き締めて大声で答える。


「だって!国の一大事なのよ!解決出来る術があるなら、王家の者は全力を尽くすべきだわ!」


「それが、ますます国難を呼び込んでも良いのですか?」


「え?」


ジモは俺に向き直り、再度頭を下げて話し始める。


「タクミ様、マヒロシ王国は国王陛下の通達があり、タクミと敵対するつもりは御座いません。この度のラナ王女と騎士達の無礼をお詫び致します。どうか水に流していただきたく、」


「無理だな!」

俺はジモの言葉の途中で割り込む。

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