第26話 牧場4

俺はカマシゴ男爵の牧場を手に入れて、牧場の護衛隊長オークのオクオにこう言った。


「この国は近い内に相当荒れるだろう、場合によっては内乱が発生する。護衛隊は人員を増やし、最大限増強しておく様にね。」


「ど、どう言う事ですか?」


「俺は王家の全財産を奪って来た。」


「はあああ?王家のざ・・・。」


「これから公爵家の全財産も貰いに行く。」


「こ、公爵家、け、の?」


「そうすると、王家と公爵家が没落寸前になる。軍も養えなくなるだろう。そうなったら、地方の野心がある領主はどう思うかな?」


「・・・。」

オクオは無言で考える。


元暗部のケントジジイが、オクオ達の変わりに答える。


「今がチャンスと兵を起こすでしょうな。また周辺の国も領土を掠め取る為、軍を動かす可能性があります。」


「ええええ!本当ですかああああ!」


「戦乱になると思わないか?」


「やばいじゃ無いですかああああ!」


「逆にチャンスと考えろ!この際だから、虐げられてる亜人を集結し、ここで独立するぐらいの気構えを持て。」


「え?」

コボオは唖然として声が出ない。


ちょっと言い過ぎか?

でもなぁ。


「コボル、俺が来なかったら、仲間を助けた後、どうする気だった?」


「元の集落に戻るつもりで・・・。」


「また、攫われるぞ。」


「・・・。」


「いいか、仲間を家族を守りたかったら、力をつけるしか無いんだ。だから、ここで誰も手出し出来ない場所を作って、家族をそして仲間を安心安全に暮らせる様にするんだ。」


「・・・は、はい。」


「兵を集めたら、山の麓の男爵領を取り込め。男爵領の田園地帯を手に入れられれば、自給自足出来る様になる。後はじっくり富国強兵を行え。」


「・・・。」


「そこまでは、オクオやコボルでは、無理じゃ無いでしょうか?」

ジジイが懐疑的だ。


「まあ、そうかもな。大規模な領地運営は無理か。・・・。ジジイ、お前が俺の変わりに領主をやれ。」

丸投げです。


「え!私ですか?」


「俺は公爵家から全財産を奪取したら、他国へ行っちゃうからね。活動資金は置いていくよ。男爵が貯め込んだ財宝もそのまま使って良いぞ。」


「え!・・・。」


「それから王都の勇者教は味方だ。何かあれば、教主レンと相談すると良い。」


「は、はあ。」


「国を取るのも、ここらに独立国家を作るのも任せる。好きにしな。」


「ちょっと待って下さい、・・・。」

ジジイは考える。


「暫くの間、タクミ様はここにいて下さい。取り敢えず私は都市ナキサガに1度戻って、暗部をタクミ様の元に連れて来ます。同時に王都の教主レンにも今の話を伝えます。その後に今後の事を話し合いましょう。」


「う~ん。ナキサガには一緒に行く。公爵家の全財産を奪取してここに戻る。その間にレンと話を付けておけ。」


「は、はあ。承知しました。努力はしますが、タクミ様が戻る方がかなり速いと思います。」


「まあ、時間的な物は遅れても良いよ。公爵に手を打たれる前に、サッサと遣ることは遣った方がいいだろ?」


「その通りで御座いますな。」


「良し、俺達はナキサガに向かう。コボル達は、周辺の亜人に声を掛けて戦力増強しておけ。」


「承知しました。」

コボオとコボルとオクオは、力強く返事をした。


「コウキはここに残れ、コボル達と共に、いざとなったら戦ってここを守るんだ。」


俺はコウキに王家から奪取した武器と防具を渡した。


「はい!」


成り行きと思い付きで、こんな無責任な事を言って見たが、面白いかもね。

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