やさしい夏の夢

作者 谷野 真大郎

瑞々しい筆致で綴られる「好き」の芽生え

  • ★★★ Excellent!!!


このレビューを書いている現在公開済みになっている三話まで、一気に読み切ってしまいました。それほどまでに、視点人物である井上さんの目を通して見える世界は、瑞々しく透き通ったもので。心の柔らかい部分をそっとくすぐられるような素敵なお話でした。

一話で描かれているエピソード、とっても美しかったです。気持ちの芽生えと、それに対する自覚は必ずしも同時に起こるわけではないけれど、見えている世界、この場合ですと世界が終わる日みたいな夕陽ですが、その見え方が変わったことでなんらかの予感を心の底の部分で感じ取っている。そんな一瞬を切り取っている素敵な一幕でした。

二話で語られる井上さんの周りの人間模様も、パーソナリティに即したもので綺麗でした。萩原先輩との出会いのシーンも、見た目も纏っている雰囲気も全然違う二人が、本という共通項を介していきなり心の深い部分の一部を晒してしまった状態で、というのがとてもいいですね。

三話で再び小学生時代のお話に戻るわけですが、今度はより一層、人が人を思う気持ちについて自覚的になった分複雑に語られるようになっていますね。周囲よりも遅かったその気持ちの萌芽から、周りに影響されながらもそれを育てていくまでの過程が、情感たっぷりに描かれていて素敵でした。

なんだか、レビューというよりも感想文になってしまいました。初めてレビューさせていただいたので、失礼があったらすみません。これから井上さんの周りの人間模様がどう描かれていくのか、楽しみにしております。

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