第16話 実より華

 古の中国において、美金と呼ばれるものがあった。

「ふむ、これは美しい」

「確かに、これは何とも美しい。皇帝もお喜びになるでしょう」

「はは、ありがたき幸せ」

 役人二人と鍛冶師が話す。

 黄金に輝く、矛がそこにあった。

「この美なる輝きが王の権威を高める」

「昨今は金が高くなりましたからな、この美金で国家の威信を示せるでしょう」

「ですな」

 役人二人はからからと笑いながら話す。

 これで今年も祭礼に使う金の代わりが成立したことを素直に喜んでいた。

「では、再び作らせていただきます」

「うむ、励めよ」

 鍛冶師を激励し、役人たちは工房を去る。

「はぁ」

 鍛冶師は役人たちが去った後にため息をつく。

「金の代わりの輝きは、ほんとむずいっぺ」

 そんなことを鍛冶師はぼやく。

 この美金とは、銅と錫を混ぜたもので金のような輝きを放つ。

 即ち、青銅のことである。



          了

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