戦争

「ん?シオンどうしたそんな険しい顔をして。それに横にいるのは」


ナツメを治療したすぐあと、俺とライオネルは急ぎ王城を目指した。俺からはかなり強力な不穏な雰囲気が漏れていたらしく。道行く先でかなり注目の的だった。


「アレス様無事ですか!?先ほど怪しい少年と獣人族の者が...」


「大丈夫だ2人とも知り合いだから。いつも警備ご苦労様、持ち場に戻ってくれ」


「はっ!失礼しました」


王城に入った俺達の後を追ってきた兵士は、アレスのため腰の剣に手をかけ身を挺して守ろうとするが、アレスが説明し、その兵士はどこかに去っていく。

俺に向き直ったアレスは、俺の異常に気が付き王子として振る舞い、真剣な表情になる。


「それでシオン。改めて聞くけど何の用かな?そしてその横にいる方は...獣人王様ですか?」


「様なんて付けなくていいぞ若き王子。いやアレス君だったか。お初にお目にかかる獣人国ローガリアの王。ライオネルだ。よろしく頼む」


「こちらも改めて、サウス国王子、アレス・サブメラだ。獣人王この状況でいうのはおかしいが、ゆっくり寛いで行ってくれ」


この2人は初めて会うらしく、軽い自己紹介と友好関係を築くという意味を含めて握手した。てっきり俺はお互い国のほぼトップ。会談などで面識があると思っていた。


「アレス、お前にも話すがウロノスさんにも話したい。どこに行けばいい?」


「父上に?わかったそれなら玉座に向かおう。この時間ならいると思うしな」


そう言われ俺達は玉座の間に向かう。途中アレスと結婚したハナと出会いハナも一緒に行くことになった。


「父上、お時間よろしいですか?」


「アレスか、何の用だ?それにそちらの方はライオネル殿か」


「久しぶりだなウロノス殿」


玉座で1人書類仕事をしていたウロノスさんは俺達が来たので一旦手を止める。ライオネルとは流石に面識があるらしく、わざわざ俺が説明する必要もなかった。


「父上、私の友人であるシオンから、お話があるそうです」


「そうか、シオン君か久しぶりだな。それで何の用だ?」


「まずはお久しぶりです国王。単刀直入に言わせてもらいますが帝国をこの世界から消させてもらいます」


俺が要件を話した時、ライオネルを除く人達は驚いていた。当然だ行き成り来た息子の友人が、一国を消すと宣言している。驚かないはずがない。


「シオン君それは戦争をするという事か?」


「まぁ、そう捉えてもらっても構いません」


「聡明なシオン君なら知ってると思うが、戦争にはルールがあり、準備も大変だ。戦争は個人でするものではない。ましてやこの平和な世界、なぜ戦おうというのか私にはわからない。それにシオン君は戦争には参加しない約束もあるしな」


もちろん俺は知っている。戦争にはルールがある事。そしてそれを破れば他の国が団結し、その国に対して何かしらの対価を払わせることも。ルールを破れば国が重罪を犯したと認定されるのだ。


そもそも戦争には、3つの戦争が存在する。


侵略戦争。土地を侵略する側、それを防衛する側に分かれ、期限を定めてその期限内で行う戦争。その期限内に侵略を成功できないのであればすぐさま撤退し、侵略した国に対して賠償金を支払わなくてはならない。


報復戦争。名の知れた国の人間が他国の者に非人道的な理由で殺された場合に起こる戦争。過去の歴史を見ても例の少ない珍しい戦争。期限を定めるという点は侵略戦争と同じだが、報復する側は無駄な犠牲者は出さない。関係ないものを巻き込まないなど。あまり大事にならない秘密裏に行われる戦争である。


全面戦争。その名の通りお互いの国の総戦力を用いて行う戦争。期限は決められずどちらかの降伏宣言か、その国自体が機能しなくなったら終了する。


すべての戦争は、行われる前に戦争する国とそれ以外の国のトップが集まり会談をすることになる。そこで必ず宣戦布告をして両国納得のいく日時から、戦争が始まることになる。


俺が行おうとしているのはある意味では全面戦争に等しいものだった。決してサウス国を動かすつもりはないが、俺個人が帝国を消すと宣言する以上他の国が全面戦争と認識するかもしれない。

だがそんな事俺には関係なかった。


「そんな約束とか知った事か、こっちは家族が被害にあってるんだ。その報いを受けさせるだけだ。ここに来たのも、あくまで恩のあるあんたらに、やる事を説明するだけだしな」


言ってやった。こんな口の利き方不敬罪で首を刎ねられてもおかしくはないのに、それでも俺の本心だった。俺は背を向け部屋の出入り口に向かおうとする時だった。


「失礼します!国王様急ぎのご報告が!」


「何の報告だ」


「帝国から文書が送られてきました。内容がこの国に対して全面戦争を仕掛けるというものです!」


「なんだと。まさか帝国は」


「はい、既に進行している模様。いかがしましょう...え?」


兵士は報告の途中、後ろの足音に気が付き振り返る。釣られて玉座にいた人が全員視線を向けた。

そこには俺の知っている顔ぶれがそろっていた。


「シオン君、どうやら狙われたのはドラグーン王国ではなくサウス国だったようだな」


「フェータの精霊はシオン君達の仲間になる事を誓うですよ。前の恩をここで返します!」


「私も、シオンさんに救われた命、エルフの里、総出でシオンさんにお力をお貸しします」


「この顔ぶれを揃えたのは間違いなくシオン君の日頃の行いだと思うよ。そしてもちろん私もシオン君に力を貸す。いやむしろシオン君が動かなくても私は動く。魔族の国イルミナ。そのトップ魔王アイラ・サタナス。シオン君好き勝手暴れる帝国にお灸を据えてやりましょう」


「おっと、俺を忘れてもらっては困るぜ。もちろん獣人国もシオンに協力する。俺の名ライオネルに誓ってな」


ここはサウスの王城、玉座。この場所に龍人王トライドール、精霊族の長ティターン、エルフの里の長ドリアーナ、獣人王ライオネル、魔王アイラが集まり。全員が俺に協力してくれるといった。


「シオン君、君には本当に驚かされるよ。まさか各国のトップを従えるなんてね。こうなったらサウスの王である私も君に協力するしかないな。もちろん嫌々ではなく本心で協力しよう。一応私の国なので私が宣言させてもらう。ここに異種族同盟を組み帝国と全面戦争をする。それでいいよね?」


その宣言にここにいる全員がうなずいた。こうしてシュテルクストの歴史上初めて、5つの種族が手を組み戦争が行われることになった。

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