この熱さ半端じゃないぜ!

名誉ある戦いドュエルグランツ新人戦、この大事な大会の初戦は、シオン・フォールの双子の妹の、姉の方キャロ・フォール対イリトヒラ学園、学年順位2位のバッシュと言う少年。この2名の対決だった。結果キャロがほとんどの観客に見えないほどの技で、圧倒すると言う。一方的な試合になった。

見ている者達は、その凄さに興奮と感動を覚え、一気に盛り上がった。


その後も順調に試合は行われて、ステラ学園の生徒、シャロ、ルリ、アレスは何の危険もなく1回戦を突破した。キャロのような圧倒的試合ではなかったが、全員が一撃も貰わずノーダメージで完封していた。


ステラ学園の生徒達の快進撃は止まる事を知らず、ベスト8の試合キャロ、シャロの双子は、当然のように勝ちあがる。だが、アレスとルリは、このベスト8で運悪く戦う事になってしまった。




「さぁ、いよいよ残る試合は2試合。そしてここにいる観客の皆様の、期待の試合。ステラ学園2位のルリ選手と、同じくステラ学園4位のアレス選手の試合だぁ!」


『ウォォォォォ!!』


『待ってました!』


『アレス様頑張って!』


名誉ある戦いドュエルグランツ新人戦1日目も、残り少ない状況。先程まで少し疲れの見えていた観客達は一気に元気を取り戻した。

中には、アレスの熱狂的なファンもいるらしく、声を張り上げて応援している。


「シオン君、どうなると思うこの試合?」


「そうですね、試合結果はまだなんともいえませんが、ここで1つ違う話をしてもいいですか?」


「はい?まぁいいよ」


カスミさんは、何の事か気になってるようで、首を傾げながら俺の話を待っている。この話はルリから話して欲しいと言われていたので、この場を借りて話そうと思う。


「今回の対戦アレス選手の事は、おそらく観客のほとんどが知っていると思います。アレス選手は、サブメラの王子で1回戦でもかなりの実力を見せてくれました。そして対するルリ選手はサブメラではそこまで有名ではありません。ですがある場所では物凄く有名なのです」


俺の言葉で会場はざわめく、当然ただの生徒が有名なんて事は少ないから、観客が俺の言葉を聞き逃さないように聞き入ってくれてる。


「それは、おそらくこの会場にいる、人のほとんどが知ってる場所。魔族の住む土地です」


この瞬間、会場は、静まり返った。俺の言葉を聞こうとしてる時から、静かになりつつあったが、すべての観客が一斉に言葉を発するのをやめた。そしてタイミングよくアレスと、ルリが会場に現れた。

だがルリは、1試合目の時とは違い。その体に尻尾と羽が付いていて、本来の状態に戻っていた。


『おい、マジかよ』


『いや、でも可愛くないか?』


『美しい』


今更、魔族を見て嫌悪感を覚える人間は少ない。逆にその美しさから、惚れだす人がいるぐらいだ。なんだかんだ、人間と魔族はいい関係に成ってたりする。


「さぁ、会場が静かになったところで、アレス選手対ルリ選手の試合が、今から始まります!」


「人間側の王族対、魔族側の王族。楽しみですね」


カスミ先輩の一言で、さらに緊張感が高まる。会場がまた静寂に包まれる。これはある意味、代表戦なのかもしれない。


「では、始め!」


審判の合図がよく響き渡る。それと同時にアレスが動き出した。

アレスが使うのは、試合用の槍、対するルリも槍を使っている。お互いに間合いを作れる武器で懐に潜らせたら、その時点で勝負が付くといってもおかしくない。


アレスの動きに反応してルリが突きを繰り出す。それは、素早く動くアレスを正確に捉えた一撃で、アレスも引かずには、いられない。


「凄い攻防です、新人戦ベスト8とは、思えません」


『ウォー!』


『スゲーなんだあの動き!』


静まり返っていた会場が一気に盛り上がる。それは達人の戦いと言ってもおかしくない、ハイレベルな技の数々。アレスが攻め、ルリが受けて返す。言うだけなら簡単だが、かなりのスピード感と幾つもの戦略。見てる観客も盛り上がらずにはいられない。


時間は、淡々と過ぎていった。激しい衝撃音と素早い動きによって生じる風は、見ている者達をさらにのめり込ませるには充分すぎるものだった。


「流石だな、ここまでやってるのにルリさんに、勝てる未来が見えないよ」


「その言う割には、まだ余裕に見えるけどアレス君」


「そうでもないよ、正直魔力は、もうそろそろ尽きるしね、だから次で決めるよ」


カスミ先輩や観客はどんな会話をしてるのか聞き取れないが、間違いなく何かを話したのはわかる。そしてその後、アレスはいったん距離を取り一息ついた。ルリも数々の攻撃を受けきり、構えをし直している。


「〔槍術:一閃投擲〕」


またしても、先に仕掛けたのは、アレスだった。アレスは、スキルで槍をルリに向かって投げる。ある意味では、当たれば一撃必殺に近いこの技を、警戒していたルリは当然のように弾き飛ばす。これで手持ちに武器を失ったアレスが必然的に負けると思った観客は多いだろう。だが、


「〔縮地〕、〈王族の一撃キングパニッシュ〉」


槍を投げた時に踏み込んだまま、ルリと間を一瞬にして詰めたアレス。そしておそらく腰に初めから付けていたであろう、剣を取り出し、秘術を発動させた。

本来、長い詠唱が必要にある秘術をどう発動したのかわからないが、あの技は間違いなく、合宿の時見た威力と変わらないものだった。


「おぉと、辺りが砂埃にまい、中にいる2人の選手の状況が見えない。だがアレス選手が放った大技にルリ選手は敗れてしまうのか」


砂埃がなくなり、俺達が見たのは、まさに絶句する光景だった。槍のスキルによって本来の決め技を隠してたアレスは、完璧だったと言える。だがルリは投げられた槍を弾いた後、振るわれた剣を、右手の人差し指、中指、親指の3本で掴むようにして、止めていたのだった。


「これは、ルリのスキル〔魔王:覚醒状態〕ですね」


「〔魔王:覚醒状態〕とは、何かなシオン君」


「簡単に言うと、ルリの全力を出した状態って事です。だからアレだけの、超反応が出来たんだと思います」


俺の解説の後に観客は、今日一番の盛り上がりを見せた。ある者は、座っている席から立ちはしゃぎだしたり、またある者はその凄さに感動して涙を流すなど。様々だった。


渾身の一撃を止められた事によって、アレスは武器を置き降参した。こうして、ベスト8アレス対ルリの試合は、見事にルリが勝利を収めて、幕を閉じたの

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る