お昼の王都

カスミ先輩との話しもとりあえず、終り教室に戻ると案の定、フォルテ先生が鬼の形相を浮かべてこちらを見てきた。まるで機械の如く、効果音に、ギギギ、と付きそうにゆっくりと。クラスメイト達は「こいつやったわ」みたいな目で俺を見ている。だがその先生の表情も俺の顔を見た瞬間一変した。


「先生、体調悪いんで、帰ります」


「あ、うん。お大事に」


普段なら、にじり寄って色々問い詰めてくる先生も、普通に心配そうにしていた。理由は顔色。俺の顔色は血の気が引いたように白くなってるからだ。

どうしてこんな風になってしまったのか。それは、ストレスと神との〈テレパシー〉のせいである。


いくら俺の魔力が測定不能なぐらい多くても、神との〈テレパシー〉をするのは、尋常じゃないほど魔力を消費する。そもそも、ステータス上で測れないだけで、魔力が無限であるわけじゃない。魔力の底が見えないだけで、しっかり底はある。結果、若干の魔力不足に陥り、その症状が顔に出たのである。




「ただいま、あれ」


あの後すぐに帰宅して、家に入るも、母さんと、父さんの気配がなかった。学生になってからこの時間、家にいなかったので、2人がどこに行ってるのか、俺は知らなかった。

とりあえず、着替えようと部屋入ったが、突如何かが物凄い速さで、俺に体当たりを仕掛けてきた。咄嗟の事でかわす事ができず、受け止めながらも後ろに倒れる。

仰向けのまま倒れる俺が、首を起こすと、体の上に小さい少女が乗っかっていた。


「ただいま、リアン」


「ぱぱ?」


首をこてんと、傾げながら俺の事をじっと見つめてくる。その仕草は保護欲をくすぐるほど愛らしいもので、ついつい頭を撫でてしまった。


「んん、帰ったのですね。主」


「あぁ、レオは、寝てたのか?」


「はい、この時間の睡眠は、心地がいいです」


俺が床に倒れる衝撃の音で、目が覚めたらしく、ベットで伸びながら眠い目を擦りつつ、俺とリアンを見ていた。

俺のお腹に乗っている、リアンを降ろしてゆっくり立ち上がる、だがリアンは、その場を動かず尻尾を揺らしながら俺の事をジッと見つめてきた。


「リアン、どうかしたか?」


「ぱぱ...おそと。いきたい」


そう言うと、尻尾をさらに激しく動かし、小さな手をいっぱいに広げて、俺の手を握ってくる。これでお願いを聞かない奴なんているのだろうか...

いいや、いないね。


「分かった。じゃあ今からお出かけしようか。レオはどうする?」


「もちろん、我も行きます」


俺は服を着替えて、幼女を2人に手を握られて。家を出た。

この時には、すでに顔色も良くなっていて、魔力もほぼ回復している。まぁ半神だから魔力回復の早さも半端なものではない。





「すご~い」


王都は昼でもそれなりに、いや、かなり賑わっている。子供の姿はほとんど見ないが冒険者や商人、いろんな人で溢れ返っていた。

その光景をリアンは、目をキラキラさせ、いろんな方向に首を動かし。見て回った。

このお出かけも特に意味はなく、行く当てもないので、適当に歩いているだけだった。


初めて会ったときは、その瞳に色がなく、まともに言葉も話せていなかったが、今では、そんな事を感じさせないほど、楽しそうな瞳をしている。言葉だって、まだたどたどしいが、かなり上達していた。

そしてもう1人


「わぁ~凄いですね!主、こんなに人が集まっているなんて!!」


幼女の姿をした、元守護獣レオも、楽しそうに辺りを見ていた。レオからしても普段王都内を、歩く事は少なく、この光景を楽しんでいるのだろう。

そんな2人の姿を見ていると、連れてきた甲斐があったと思う。


そんな事を思っていると、急に2人の動きが止まった。何事かとを思い、2人を見ると鼻をスンスンさせ、口元から涎を垂らし、一点を見つめている。その視線を追うと、そこには出店があった。

2人はその匂いに釣られたのだろう、俺がその事に気が付いたのを見て、2人一斉に俺の事を、見つめだした。


「分かったよ、あの屋台に行こうな」


「さすが主!」


「やった!」


その出店は、串にお肉の刺さっている物、串焼きやで、少量の塩コショウがその匂いを、引き立てていた。見ているだけで俺も涎をたらしそうになる。

その店の主であろう、おじちゃんが、俺達に気が付き笑顔で挨拶をしてくれた。


「いらっしゃい、坊主達、3人で買い物かい?」


「そうです、串を3本ください」


「はいよ、ちょっと待ってな、今熱々にして渡してやっから」


そう言うと、手早く肉を熱し始めた。その間に俺は、料金を払い。リアンとレオはその光景をワクワクしながら観察している。


「はいよ、お品物だ」


「あれ、おじちゃん、串が5本あるんだけど?」


「それは、サービスだ。そこの可愛い、譲ちゃん2人は一本じゃ満足できないんだろう?」


そう言いながら、おじちゃんが2人を見ると、2人は首をぶんぶんと縦に振った。それだけ、この2人は楽しみなんだろう。だが流石に悪いので俺は直ぐに、金貨を1枚取り出し、おじちゃんに渡した。


「おいおい坊主、サービスと言ったろ?それにこんな大金は、串2本の話じゃないぜ」


「それは、今後買いに来た時のお金って事で、貰ってください。今後も買いに来ますので」


「へぇ、なるほど、これは1本取られたね、おじちゃん。分かった、じゃあ今後とも買いに来てくれよ」


そう言いながら、金貨を受け取ってくれた。そんな間に、2人は、すでに1本を食べ終えていて。すでに2本を噛り付こうとしていた。そんな幸せそうな光景を、俺とおじちゃんは、見守っていた。

もちろん、食べ終えた後、2人は物凄く絶賛していた。

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