貴族のプライド
「キャァァァァ」
祠から、近くの場所で悲鳴が聞こえた。
この悲鳴を聞き真っ先に動いたのはノアだった。
「ノア、先に行くな!まだ状況すら掴めてないんだぞ!」
「あれは、学生の声が!俺達Sクラスの人間が助けに行かなくてどうする!!」
木や草が今はすごく邪魔に感じる。まるで俺達の行く道を邪魔するように生えている。
悲鳴が聞こえた場所に着いた時、俺たちは衝撃的なものを目にした。
「〈結界〉だ、とりあえず張り続けろ!!」
「ダメ!張ってもすぐ壊される!!」
「リーダーどうする!!このままじゃ〈結界〉が尽きるのも時間の問題だ!!」
あれは恐らくAクラスの生徒だ。Aクラスじゃなければ、俺達の年齢で、あの数の魔物から結界を張り続けるのは、不可能だと思う。
最後に叫んでた奴が言ってる通り、〈結界〉が突破されるのも時間の問題、だがそれは俺達がいなかった場合だ。
「「〈
先頭にいた俺とノアが同時に魔法を放つ。全部とは行かないが、結界付近と1部の魔物を吹き飛ばす。
一瞬だけ道が空いて、その隙間を縫うように、俺達は結果の中に入った。
「「〈結界〉」」
できた隙間は、一瞬で他の魔物が補い、また結界付近は魔物が群がる。
だが、ルリとシャロが〈結界〉の補強をした事によって、先程までと違い、突破されることは無い。
「君達、大丈夫か?」
「ア、アレス様!?どうしてここに!いえ、それよりも助かりました!」
先程リーダーと呼ばれた生徒がアレスと短く言葉を交わす。
結界の中には負傷者もいて、あと少し来るのが遅くなれば、生徒は死んでいてもおかしくなかった、状況だ。
「とっりあえず、回復魔法かけてくね〜」
アレスの護衛である、ハナが状況を見て即座に重傷者から回復魔法をかけていく。範囲魔法ではないが、1人1人、丁寧にそして迅速に治療していく。だが中にはハナの魔法で完治しない生徒もいて、そうな生徒には、どこからか取り出した包帯やらガーゼやらの治療道具で完璧に処置をおこなっていった。
「アレス様、助けていただきありがとうございます。ですが私のクラスにはまだ傷を負った者もおります。ですので救援を呼んで来てもらえないでしょうか?」
Aクラスのリーダーらしき男は、アレスに頭を下げている。だがこの状況、俺達が離れれば確実にAクラスは持たないだろう。それは、ここにいる誰もがわかっていることだと思う。
「貴様は馬鹿か?いいや馬鹿だ!」
そんな中、ノアが声を張り上げAクラスのリーダーを罵倒した。だがそれはただの罵倒ではない。
「今この状況で、私達がこの場を離れたら、確実に貴様らは死ぬぞ。いくらハナが回復魔法で、傷を癒したからといって。私達が救援を呼んで戻ってくるまで、貴様らでは耐えられない。分かってるのか?」
事実なまでに、ノアの言葉にリーダらしき男は、何も言えなくなっている。
「ノア様、私達は確かに死ぬかもしれません、ですがこの状況、いくらノア様達Sクラスの人がいても結界が壊されるのは、時間の問題です。この数はいくらなんでも貴方達にも倒しきるのは辛いでしょう。ですが貴方達なら、この包囲網を脱出する事もできる。だったら強い者がこの場を脱出し。弱い者が残る。それ以外の選択はないはずです」
リーダーと思わしき男の目はすでに覚悟が決まっているようで、他のクラスの子たちも全員が納得しようとしている。
まぁ結界は、ほぼ確実に壊れないし。その気になればSクラスの1人を脱出させて救援を呼びに行かせることも不可能ではないが。リスクは伴う。
その覚悟に俺とかは、何か言う事は出来ないが、そこで折れないのが貴族ノアの良い所だ。
「確かに、私達ならこの状況から脱出する事はできるだろう。だが、私は貴族だ、私達を支えるお前達を放っておいてまで逃げる、クズではない。ましてや見捨てるなど断じてありえない。それに私達はSクラスだ、私含めて、たかが13歳の子供だが。Sクラスには、規格外も存在する。まぁ、任せておけ。この状況を何とかする」
ノアの熱い演説にAクラスは歓声を上げる。正直俺も、少し見直した。
最近は、俺に服従しすぎていて、貴族らしさが皆無だったが。根っこの部分は良い貴族なんだろう。
「シオンさん、秘術を使います。時間を稼いでくれませんか?」
さっきまでのカッコイイ喋り方はどうしたのか、急にいつもの口調に戻っている。
「おいおい、貴族様は貴族様らしく、平民にスパッと命令してくれよ。さっきまでの演説が台無しだぜ」
「シオン...さん。わかった。秘術を使う。シオン時間を稼げ」
「了解、貴族様」
ノアが詠唱をし始めて俺は結界の外に出る。そのついでに他のメンバーにも指示を出していく。
「ルリ、キャロ、2人は俺と一緒にザコ処理を頼む。結界の中に入れるなよ」
「「了解」」
「シャロは結界の維持、将太、リティスさん、ベル、ヘラは万が一、結界の中に魔物が入ったら対処してくれ」
「分かったよ~」
「了解っす」
「わかったわ」
「任せてほしいです」
「任せてください」
本来なら、俺とルリが広範囲魔法で倒していけば、もっと効率よく、もっと早く終るとは思うのだけれど。今回はノアの心意気を買って、俺達が使われ役に回る。
「アレス様、よいのですか?このままではノア様に見せ場をそう取りされてしまいますよ」
「そうだなハンス、こうなれば僕も秘術を使うしかなさそうだ」
「アレス様、やっちゃってー」
「アレス様、サポートは任せてください」
アレスも、ノアに感化されたのか。秘術の詠唱をし始めた。
王族の秘術は見るのが初めてなので、少し楽しみではある。
魔物の数は多いがその中でも特徴的なのが【
つまりこの2体さえ倒せば、他の魔物はバラけるかもしれない。
「すごい!」
「これが、Sクラスの1位と2位と3位」
「これならもしかしたら...」
シオン達の動きを見ながら、Aクラスの生徒達は戦慄していく。Aクラスの人間では、倒すのがほぼ不可能な魔物達を、次々と倒していく。
それを見せられれば、自分達は生きて帰れるのでは、という希望も生まれてくる。
だが一向に魔物の数が減るようには見えなかった。
「ノア!アレス!2人とも詠唱し終わったら。でかい奴を各自で狙え。そうすればこの群れも消えるかも知れない!」
魔物を倒しながら、詠唱がもうそろそろ完了しそうな2人に指示を出す。今回はおいしい所を2人にやる。
俺の言葉が聞こえて、2人とも首を縦に振る。
その間も休まず魔物を倒し続けた。だがどれだけ魔物を倒しても、新たな魔物は次々と押し寄せてくる。流石にキリがない。俺はまだやれるが、ルリとキャロが心配になってくる。
「シオン達!退け!!」
詠唱が完了したノアが、俺達に指示を出す。俺、ルリ、キャロはその言葉を聞いた瞬間その場を脱出。結界の中に戻った。
「くらえ、
「
ノアとアレスの放った、最大火力の魔法は、【
アレスの放った魔法は、流石王族の秘術というべきか。再生力が恐ろしく高いゴブリンキングを縦一直線、に真っ二つにしてそのまま絶命させた。
「ハァハァ、これで」
「ハァハァ、魔物も退くか?」
肩で息をしながら魔物の動きを見ている、ノアとアレス。あれほどの魔法を使ったのに意識があるだけで、物凄い事だと思う。普通の人なら発動すら出来ずに倒れるから。
ボス格が消えた事で、今まで集まっていた、魔物が森の中に消えていく。普段なら1匹でも多く仕留めるのだが、今はそれどころでもなかった。
「アレス、ノア、お疲れ。2人のおかげでみんな無事に帰れそうだよ」
「ハァハァ、何言ってるの、シオン君ならもっと手際よく出来ただろう?」
「そうだぞシオン、お前ならできた筈だ」
2人は軽く俺を睨んでくるがその表情は、清清しいものだった。
まぁ確かに、出来ない事もないとは、思うけど。
「Sクラスの皆さん、ありがと」
「あっれ~、生き残りがいるぞ~」
「ワレノ、シモベヲ、ホフッタノハ、ナンジラカ」
リーダー格の男がお礼を言おうとした時、森の中からまた別の知らない奴と、1匹の魔物が現れた。
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魔法解説
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〈
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将太「シオン君、いつ見てもパネぇっす」
ベラ「本当の意味での規格外、です!」
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