エルフの里の族長さんと使えない魔法

「改めて名乗らせてもらおう、私はリーラン。2人が助けてくれたシイナとその姉ヒマリの父親だ」


俺とルリはシイナちゃんのお父さん、リーランさんの家にお邪魔させてもらってる。俺が魔物を倒してもいいか聞いた時に、「その話を詳しく聞きたい」との事でお話をする所だった。


「改めまして、俺はシオンです、用事があってエルフの里を探しに古代森林に来てました」


「私はルリです、シオンの付き添いで来ましたした」


俺達も改めて自己紹介する。どうして探してたのか理由入ってないが、嘘も言ってない。


「シオン殿にルリ殿か改めてシイナを助けてくれてありがとう」


リーランさんは深く頭を下げる。やはり娘のことは大事なのだな、その顔は魔物の事で厳しそうにしてはいるがどこか安心してる様にも見える。

少ししてリーランさんは頭をあげる、そして話し始めた。


「さて、色々聞きたいことはあるが1番気になるのは2人がどれほどの実力があるかだ、魔物は必ず来る。しかもかなりの数だ、多少力はあるようだが、やはり持久戦になれば確実に不利だろう、2人はまだ若い、まだあって少しの、我らエルフの事など忘れて、逃げることも可能であろう。娘の命の恩人がこんな所で無駄に命を散らすのは、私は避けてほしい」


自分の同胞そして自分と自分の家族の命よりも、娘の恩人の命を優先する。すごくできてる人だ。普通の人なら可能性があれば、それに飛びつくと思うけど、そうしないのはきっとリーランさん自身の正確なのだろう。

こんないい人をみすみす見殺しにはできない。

けど…


「実力を見せるって言っても、どうすればいいんですか?あなた達と模擬戦をするわけにもいかないですし」


いつ魔物が来るかもわからない状況いや、おそらく数時間後には来ると思う、リーランさんたちの家に入る前に〈索敵サーチ〉した時には、すでにこの里の全方位に200ぐらいの色んな種類の魔物が待機していた。

ぶっちゃけいつ仕掛けられてもおかしくない状況なのだ。

それに対して里には合計して40人ぐらいしかいない、実際戦えるのは30人も満たないだろう。これじゃあ蹂躙されるのは目に見えてる。


「実力見るのは容易い、2人の魔力量を見ればいいだけの事だ、2人は今、魔力を相当抑えてるであろう、それを解放してもらい見て判断しよう。場合によっては2人には無茶になるかもここから脱出してもらう」


魔力を見せればいいのか。

エルフは全員がスキル〔観察者〕を持っていて、それで相手の魔力量を見ることができる。と、昔読んだ本に書いてあったと思う。


「分かりました、それじゃあ私から見せますね」


そう言ってルリが徐々に魔力を解放していく、1割解放した頃にリーランさんは「おぉ!」と驚いていた。ちなみにヒマリちゃんは「何この量?」と呟いており、シイナちゃんは「ルリお姉ちゃん凄い!」と楽しそうだった。

ただ少しずつ状況は変わっていく、るりが3割解放した時にはリーランさんもヒマリちゃんも唖然としてて、シイナちゃんだけは笑っていた。

そして5割を解放した時ストップがかかった。


「ま、待つのだ。な、なんだこの量!明らかに異常だ!そしてまだ全開ではないのだろう?」


「えぇ、まだ半分ですよ」


「「!!」」


ルリの言葉を聞いてリーランさんとヒマリちゃんは両目をくわっと開きら、口もこれでもかと思うぐらい開けていた。

シイナちゃんは純粋に「すごーい!!」とはしゃいでいる。


「ところで、シオン殿はどれ程なのだ?」


「あぁ、ちょっと待って俺も解放するから」


ルリがまた魔力を抑え込んだのを見て俺が解放する。

だが1割解放したぐらいでストップをかけられた。


「どうしました?まだ1割しか解放してませんけど?」


リーランさんはずっと驚いていて、シイナちゃんははしゃいでいる。ヒマリちゃんは少しぐったりしていた。


「シ、シオン殿、貴殿はいったい?」


「私あれ以上の魔力見たら吐いちゃうかも…」


ヒマリちゃんがポツリと呟いた





〜〜〜〜〜〜〜〜


俺達はエルフの里に協力することになった。いや正確には協力して欲しいと頼まれた。

だがその前にやることがある、まだ攻めてこないようだしシイナちゃんの母親の様子を見ようと思う。聞けばなぜ倒れたのかもわからない、何をすればいいかも不明だそうだ。

ここは1つ〔完全鑑定〕で治す方法ぐらいは調べてみよう。ついでに治せそうなら治す。


「ここが妻、ドリアーナの眠ってる部屋だ」


リーランさんに案内してもらい部屋に入る、そこには、まさにエルフ、と言われるぐらいの美女が眠っていた。

整った顔立ち、背中ぐらいまで伸びた輝くような金髪で、服の上からでもわかる胸の膨らみ、ボッンキュンボンのボッンの部分のいい例えとでも言えるだろ、しかも多分寝込んでいることを考えてノーブ…いかんいかん、これ以上は…


そう思った時には遅かった。ルリから冷えきったような視線が突き刺さる。急に顔を近ずけて耳元で囁いた。


「これ以上余計なことは考えない方がいいわよ」


俺は静かに首を縦にふった。

気を取り直して〔完全鑑定〕をしてみる。


鑑定結果


名前 ドリアーナ・フォレスト

種族 亜人(エルフ)

状態異常 超魔力不足


…はぁ

鑑定結果を見て1番に思ったことはこれだ、いやふざけているのかと思う。なんだよ超魔力不足って

魔力不足はもちろん聞いたことがある、魔力を使いすぎるとなるあれだ、こっちに来て3歳の頃とかによく経験した。

だが考えてみれば魔力不足なら普通に〈鑑定〉でもわかる事だし長い期間眠ってるなんてことはありえない、とりあえず超魔力不足を〈〉で調べて見る。


鑑定結果


超魔力不足 不明


意味がわからなかった、超魔力不足とかいう謎の状態異常が〈鑑定〉で分からないのは、そういう性質だと思うが。名前まで割てるのに〈鑑定〉でわからないって実はこの世界の〈鑑定〉はかなりポンコツなのかもしれない。

とりあえず〔完全鑑定〕でもう1回調べ直した。


鑑定結果


超魔力不足 基本的には普通の魔力不足と変わらない、だがこれにかかると基本的には魔力不足であると認知出来ない。主に魔力量の多い者が魔力をほぼ全て使い果たすとなる現象。治す方法は手に触れて魔力を送り込む。かかったものは自力では魔力回復が出来ず、死ぬことは無いが一生寝たままになる。


ふざけた名前の割にはかなりやばいな超魔力不足、侮れない!!

でも治す方法もわかったしとりあえず治すことにした。

寝ているドリアーナさんの手を取り魔力を送り始めた。


「ねぇシオン何をしてるの?事と次第によっては分かってるわよね?」


ルリの視線が痛い、説明する前に行動に起こしてしまったせいだな。


「シオン殿、私も教えて欲しい。一体何をしてるのだ?」


「今魔力を送ってるんですよ、ドリアーナさんの倒れた原因は簡単に言えば魔力不足に陥った事です。だから俺が持ってる魔力を送って回復してもらってます。ある程度魔力が戻れば目が覚めると思いますよ」


「な、本当か?!ありがとうシオン殿、貴殿には感謝してもしきれないな」


リーランさんが少し泣きている。多分嬉し涙だろう、そうであって欲しい。こういう風に感謝されるのだから人助けはいいものだな。

ルリの方をチラッと見るとルリも納得したような顔をしてる、助かった。


ドリアーナさんを治してる時部屋の外から走ってくるような音が聞こえた。バタン!と勢いよく扉が開きそこにはヒマリちゃんがいた。


「大変よお父さん魔物が攻めてきたわ!」


「なに!」


タイミングが悪い、治してる最中に来るなんて最悪だ少しは考えろよ。

俺は心の中で悪態をつきながら考える。今この場を離れることは出来ない、意識がない状態では魔力は制御出来ない。しかも中途半端にある場合、魔力が暴走して何が起こるかわからない。

普通に寝てる場合は別だが今のドリアーナさんでは制御はできないであろう。


そこで自然とルリの方を見る、するとフッとルリが笑った


「ルリ頼めるか?」


「任せてとりあえず半分ぐらいはやっとくから、早くドリアーナさん治して加勢してね」


「あぁわかった無茶はするなよ」


そう言ってルリは部屋を出ていった。


「リーランさんこの里の指揮とルリを見てやってくれませんか?ルリがいるからこっちが押されることは無いでしょうけど1人だとさすがに全ては対処できないと思うので」


「わかった私も出るとしよう、妻のことをよろしく頼む」


「えぇすぐに加勢に行くので無理はなさらないですださいね」


リーランさんが部屋を出る前に俺に一礼してヒマリちゃんを連れて出ていった。

そして俺はドリアーナさんを治すのに専念するのだった。

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