事件と2人の気持ち

ルリ奪還作戦

兄さんからルリちゃんのいる場所を教えてもらい私は急いだ。どうしてルリちゃんを一人にしたのか...

これでもし、何かよくない事が起こっていたら、私は一生後悔して生きていくだろう。

何もおきてない事を祈りつつ私は全力で目的地までいった。


スラム街に入るとだんだん人も減り、王都とは違う全く別の場所にいるんじゃないかとも思える。

それぐらいスラム街はどことなく不思議な雰囲気が漂っていた。

目的の場所の近くに兄さんより早く着いてしまい、とりあえず〈索敵サーチ〉で中の様子を確認した。


「やっぱりルリちゃんの気配はない...」


何度探してもルリちゃんの気配がなく、どうして兄さんはここにいると思ってるのか疑問が浮かぶ。

そんな事を考えてると突然、頭に直接ノイズが響く感覚がした。


『シャロ聞こえるか?』


兄さんが〈テレパシー〉で私の頭の中に直接喋りかけてきた。最近の兄さんはいろいろぶっ飛びすぎてて、これぐらいじゃ私は驚かないぞ!


『聞こえてるよ~、私は先いついて付近で待ってるよ』


『わかった、すぐに行く』


兄さんの声はいつもより低く怒ってるようにも感じれる。

〈テレパシー〉で話し終わった後、すぐに兄さんと合流した。


「シャロ、待たせてすまん」


「大丈夫、それよりさっき〈索敵サーチ〉で中を確認したけど、結構人がいるよ~それに建物も見た目以上に広そうだし、どうする兄さん」


私が分かる範囲の情報を教えて、兄さんに指示を仰ぐ。兄さんは少し黙って俯いていたが、すぐに視線を戻した。


「重要なのはルリを助ける事だ、もし邪魔する奴がいたら、俺が足に攻撃して動くを封じる。シャロはそのカバー、やれるか?」


「わかった、やってみる」


「じゃあ、いくぞ!」


「あ、あのにいさ...」


兄さんはすぐルリちゃんの捕まってると思われる家に向かっていった。

その時のチラッと見えた顔は今まで見た事もない怖い顔だった。








「じゃあ、行くぞ!」


俺はシャロに合図を出すと同時に家に入る。俺も〈索敵サーチ〉を使っていて玄関に誰もいないのは把握済み。

俺は極力音などが出ないように心がける。普段なら〈気配遮断〉を使ってるが、中にかなり凄腕の魔法使いがいるっぽくて、魔法を使うだけで俺達の場所がばれてしまう。

それだけ凄腕を用意するあたり、ルリを攫った奴らも、ただの人攫いではないと思う。


家の中をかなり進んだら少し開けた場所に出た。そこでいかにも、がらの悪そうな奴らが次の部屋の扉を塞ぐように待ち構えていた。


「マジで、入ってきてるじゃねーか、やっぱ入り口に見張りいないとダメだな」


「それにこんな子供なんて、かわいそうに」


「かわいそうも何も、どうせここに来た時点で殺すのは確定なんだから、まぁこのガキ達は運がなかったって事だな」


「いや、男は殺してもいいが、あの小娘は生かして楽しもうぜ」


「グヘへへ、小娘いいな」


複数いる中の代表みたいな奴らが俺とシャロを品定めするように見てきた。

大体人数は20人ぐらい、ほとんど奴が俺よりシャロを見ていた。

シャロは俺の後ろに隠れ少し震えている。


「悪いんですが、そこを通してもらえませんか?」


なるべく穏便に済まそうと努力する。こんなところで争うのは時間が無駄になる。

だが俺の言葉を聴いた途端連中は笑い出した。


「マジか小僧この状況分かってんの?」


「笑止、あなた達はここからでる事も、進む事もできません」


「俺達は悪い大人だからよ、まぁ通りたければ俺達を倒していくんだな」


「小さい子供は最高だぜぇ、あぁあんなに震えてかわいそうに、おじさんが気持ちいいこと教えてあげるからねぇ」


「あの娘はやるけど、きもちわりぃから黙ってろロリコン」


どうやらただでは通してくれないらしい。まぁわかっていた事だけど。

一瞬シャロのほうを見る。やはり怯えているが俺の目を見た瞬間、俺が何をやろうとしてるのか理解して、小さくコクコクとうなずいた。

そして俺はダッシュで敵に向かっていった。


「おいおい、走ってきたぞ」


「そんなに死にたいなんて、かわいそうに」


「悪いがお前らのようなクズを相手にしてる暇はない」


「なめられたものだ、餓鬼二人で何ができ...な、体が急に」


俺がクズたちの前に着く瞬間にシャロが〈行動制限バインド〉を使い動きを封じる。いきなり動けなくなった事に困惑し始めるクズたち、何人かは〈行動制限バインド〉に気がつき解除しようとしていたが、もう遅い。

俺は瞬時に〈ディメンションバック〉を使い、中にある俺の剣を取り出して、クズたちの脚の筋や腱などを斬っていく。それで全員が自分の脚をおさえて倒れこんだ。

今のうちに部屋を抜けようと扉まで行ったが、扉には鍵がかかっている。

その扉はなぜかこちら側に鍵穴があり、今切った奴の誰かが鍵を持ってるのだろうが、20人ぐらいいる中から探すのは時間がかかってしまう。

仕方がないのな強力な魔法で扉を壊すことにした。


「シャロ魔法で破壊する、強めの魔法を使うから少し離れてろ」


「ちょっと待ちな」


「なに!」


魔法を使おうとした時、後ろからさっき喋っていた奴のうちの一人の声が聞こえた。

そいつは斬られる瞬間に〈行動制限バインド〉を解除して、俺の斬る位置をずらしたらしい。


「ガキ共、鍵は俺が持ってる、魔法を使うより早いだろ」


そう言いながら、そいつはポッケから鍵を取り出し、扉を開けた。


「どうしてこんな事をするんだ?」


「ここにいる俺を含めて悪い大人わよぉ、全員非合法の傭兵なんだよ、ここにはその界隈で名が通ってる奴もたくさんいる。俺もその一人でこの中で一応リーダー格なんだがよ、今回の依頼はただの攫いじゃない、普通子供攫いは貴族のボンボンか無差別だが、少し調べて貴族じゃない事はわかっていた。それだけでも普通じゃないのに、助けに来た奴らが、お前らみたいなガキで、しかもこの人数を瞬殺あまりにもおかしいだろ。まぁ攫った奴がどんな奴か俺達は知らされてない、もしかしたら想像するよりかなりやばい事になるかもしれない。そう思ったら今あけるのを渋ってお前らの時間を遅らせるより。あけるほうがいいと思ってな」


「そうか、あけてもらった事は感謝する。でもいいのか?そんないろんな情報を俺達に喋っても」


「まぁ、大丈夫だろ、ここにいる奴らはどうせ捕まるだろうしな。それより、死ぬんじゃねーぞガキ共」


俺はそいつの言葉に返事もせず次の部屋に進んだ。そこで俺とシャロを待ち構えていたいたのは...












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魔法解説


〈ディメンションバック〉使用者専用の空間を作りそこに物を収納できる。空間の大きさは使用者の魔力量によってかわる。



今回の魔法解説は久しぶりの〈ディメンションバック〉だけです。

毎回同じ魔法の解説を見るのは意味ないと判断しました。

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