膝枕

「兄さん、おかえりなさい」


 貴音が家に帰ってくると、有栖は玄関までやってきてすぐに抱きついてきた。

 有栖は貴音の胸に顔を埋めてきたところを見ると、いくら余裕があるとはいえ、やっぱり悶々としていたのだろう。

 いつも帰ったらすぐ部屋着に着替えるのに、今日はまだ制服だったのがいい証拠だ。


「ただいま」


 そう言いながら有栖の頭を撫でる貴音。

 有栖は甘えん坊だからか頭を撫でられるのが好きで、「えへへ」と笑みを浮かべる。


「ご飯はできた?」

「もう少し待っていてください」


 貴音は頷いてから着替えるために自分の部屋に向かった。


「兄さん、できましたよ」


 リビングから声がしたので、自分の部屋から出てリビングに向かう。


「……また野菜スティックがあるのか?」

「はい。これがやりやすいですから」


 口移しして食べさせ合うのにハマってしまったようで、毎晩のようにスティック状に切られた野菜が出てくる。

 野菜は嫌いではないが、毎日続くと流石に飽きてしまう。


 ご飯を食べてお風呂に入り終わった二人は有栖の部屋でイチャイチャしている。

 本当なら勉強をするところだが、図書室で勉強していたため、お互いの成分が足りなくなって、こうなってしまった。

 今日はもう勉強することはないだろう。


「膝枕で耳掃除してほしい」

「いいですよ」


 有栖はすぐに綿棒を持ってきて、床に座るとサービスなのか少しスカートを捲った。

 最近は毎日一緒にお風呂に入っていて裸は見慣れているつもりだが、こっちの方がなんだかエロく感じる。

 見えそうで見えないというのが貴音の視界を刺激させるのだろう。


「早くしてください」

「え? うん」


 有栖に言われたので、太ももに自分の頭を乗せる。

 まずは右側からやってもらうから、有栖の顔が見えない。

 有栖の耳掃除はとても気持ち良く、貴音にとっては至福の時間だ。


「次は反対をしますよ」


 右側が終わったために反対側に顔を向けようとしたら、スカートがさらに捲れてしまい、有栖の純白な布が少しだけ見えてしまった。

 貴音は恥ずかしくなり反対側を向こうとするが、有栖に手で抑えられてしまい、純白から目を離すことができない。

 有栖に言うか目を閉じればいいんだろうけど、好きな人のだからか見ていたいという気持ちが出てしまう。


「有栖、その、下着が……」


 そう言われてようやく気づいたのか、有栖は真っ赤にしながら急いで手で隠す。


「その、ごめん」

「だ、大丈夫です。故意にやっていないのはわかりますから」


 もし、故意だとしたら何も言わずに見続けていただろう。だから今のは故意でないのがわかる。


「兄さんはその、私の下着、見たいですか?」


 少し涙目になっているのにそういったことを聞くのは、もっと意識してほしいからだろう。

 いずれは最愛の兄と身体を重ね合わせたいと思っているのだから、恥ずかしくても聞いてしまった。

 実際に貴音は意識しまくっていて、有栖の太ももあたりに視線を向けている。


「見たいのなら、見てもいいですよ?」


 有栖はゆっくりと手を退かしていき、もう少ししたら完全に見えてしまう。

 見たい気持ちはもちろんあるが、今は付き合っているわけではないから、有栖の手を握って止めさせた。

 こういったのは恋人同士になってから、早くても遊園地で告白をした後で。

 有栖は手を握られたことにより、貴音が思ったことを察して見せようとするのを止め、耳掃除を再開させた。

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