第29話
「と言うわけで我、ツカサと付き合うことになったぞ!」
「安心しろマオ、お前も愛することは変わらないから!」
「…………!?」
今までの出来事を説明すべく魔王城に戻ったマオは魔王城の外にて、女装してないツカサとそんなツカサの背中にぎゅっと抱きつくセラティア達からの衝撃的な発表に言葉を失った。
(え、どういうこと!? 何でツカサお兄ちゃんとセラちゃんが付き合い始めたの!? と言うかツカサお兄ちゃんが女装してないし、やっぱ凄いイケメンだし、超タイプだし! え、ホント何がどういうこと!?)
あまりの衝撃に、マオは混乱している。
そしてマオはスマホを取り出すと。
「アキラ、早く来て! 明日世界が激変するかもしれない!」
そう電話ごしにアキラに訴えるのであった。
「なぜ、私とセラティアが付き合っただけで世界が激変するんだ?」
「いや、我々が出現した時点でとっくに世界は激変したと思うぞ、ツカサ?」
…………。
「マオ、落ち着いてよく聞くんだ、あれは背後霊だ。 だからその影響で、ツカサ兄は女装してないんだよ」
「初めて会うのに背後霊使いって酷くないか、貴様! 泣くぞ、我泣くぞ!」
マオの案内で魔王城へやってきたアキラは、扉の前のツカサとセラティアに対し、腕を組んで現実逃避的な発言をしたわけだが、その発言にマオは。
「ん~……ん~?」
セラティアに対する失礼な発言に文句を言いたい気持ちと、割と納得しそうになってしまう現実逃避的な考えが、彼女の脳内で争っている。
その為、彼女の今の顔は、非常に困惑したような顔である。
「マオ、アキラ、私がセラティアと付き合うのは本当だ! だが……お前たちが求めるならいつでも私は……」
そんな一部始終を眺めていたツカサは、二人の疑問に改めて答え、そして二人も受け入れられる、そう発言したのだが。
「ツカサ兄、今の姿でやられても、俺大丈夫だわ。 まぁちょっとはドキドキするけどさ……」
どうやら女装していないと、アキラを惑わせる力は弱い様子だが。
「その姿で迫られたらちょっとなぁ、断りたくないと言うか……うん、ツカサお兄ちゃん、やっちゃう?」
逆にマオには効果抜群の模様で、真っ赤な顔に現れたその表情は、嬉しさと照れ臭さを織り混ぜたような感じである。
その反応を見逃さなかったツカサは、そのままマオに迫る。
「そうか。 ならマオ、今夜一緒にどうだ?」
「つまり、男子と女子の関係……みたいな……?」
「お前が望むなら……私はいくらでも愛して……う!」
「ええい、ツカサは我のモノじゃ! いくらマオでもツカサはやれぬ!」
だが、その行動はセラティアの首閉めによって終わりを迎えたと思ったが。
「さて、確かマオにいじめられるのが大好きでお馴染みの、ドM野アキラじゃったか? お主の名前は?」
「そんな変態的な名字、勝手に付けるな!」
「だって貴様、我の事、背後霊っていったから嫌いじゃし…… まぁそれはともかく……」
「ねぇセラちゃん! ちょっとだけで良いから! ちょっとだけツカサお兄ちゃんを貸して!」
「ダメじゃマオ! ツカサは……ツカサは我のものじゃもん!」
「それより、変態的な名字で読んだの訂正しろ!」
「えーい、ダメなものはダメじゃ!」
まるでこどものような三すくみの言い合いが新たに発生する。
そんな会話をツカサは微笑ましい顔で聞きながら。
「お前たち、喧嘩は止めないか! さぁとりあえず落ち着くために私に抱きつくんだ! さぁさぁ! 激しく私の身体を求めても良いんだぞ!」
鼻血をダラダラ流しながら、そう三人に訴えかける。
その効果は絶大だった。
「「「…………」」」
三人は困惑と動揺を会わせたような表情でツカサを眺めて、固まりつく結果になったのだから……。
そう、戦いの終焉である!
「……いや、私を求めてくれないのか? ホントに求めてもいいんだぞ、おい……」
…………。
「なぁ俺のレ……」
「やだ!」
「我は嫌じゃ!」
「すまないが私は断る!」
「おい、話は最後まで聞けよ……」
喧嘩が終わり、一時魔王城の中へ……。
テーブル前に座るアキラは、同じくテーブルに座る三人へ、レベル上げの協力を願おうと話を進めようとしたのだが、即拒否の体制を示された。
と言うのも。
「アキラ~、どうせヒヨコ狩りたいんでしょ~」
「私も反対だな、アキラには申し訳ないが……」
「まぁ我も当然反対じゃ!」
三人ともヒヨコを狩るものだとおもっていたから!
しかし、その予想は外れていた。
「違うっつーの! 俺も話は理解してるから、ニワトリを狩りたいとか言わないって……。 その、俺が言いたいのは、狩ってもいい魔物がいれば、それを狩ってレベル上げしたいと言うかだな……」
それはマオの話を聞いたアキラなりに、考え抜いた意見である。
そして、その意見を聞いてのセラティアの感想は。
「ほう、貴様なかなか良い奴だな! それなら、ダンジョンのモンスターを倒すと良いぞ、それも迷宮型のダンジョンの!」
「迷宮型?」
「つまり、ダンジョン内の地形が定期的に変わるダンジョンの事じゃよ。 ワシは一度、我の魔力を込めた人形を使い、モンスターを説得しに行ったんじゃが、奴らに心はなかった。 それどころか我にまで襲いかかってくる始末じゃった。 これは我の勘じゃが、あそこのモンスターはダンジョンの一部なのかもしれぬのう」
「なるほど……。 そう言ってもらえたら、俺も理解できる!」
アキラはそのダンジョンについて、見覚えがある。
と言うのも、自分が見ている動画配信主の動画で、そのようなダンジョンの回があったからだ。
動画では、それは午前0時を迎えるごとに内部の様子が変わるダンジョン、そしてその入り口は白い煙のようなモノが覆っており、それを通り抜けると戻ることはできない一方通行と冒頭で紹介されていた。
そしてダンジョン内で教会送りになると、自分の持ち込んでいたアイテムや、ダンジョンで拾ったものが消滅するとの事。
しかも、迷宮型ダンジョンの不思議なところは、ダンジョンによって何か異常が発生したり、5人以上の人間はダンジョン内に入れないとのことだった。
「さて、話を戻すが、その迷宮型のダンジョンの場所を知っておる。 しかも我が魔道人形で探索した以外、誰も入った事の無い迷宮型ダンジョンをじゃ!」
「そ、それはどこにだ!?」
そんなダンジョンの場所を知っている。
セラティアの発言にアキラは興味心身になり、机から前に身を乗り出して尋ねるが、彼女はアキラに対し。
「勿論ただで教えるわけにはいかぬ! 条件として、この島を寄越せとは言わぬが、我々の生活を保証できる領土を要求する、これが最低条件だ!」
そのような要求を腹が立ちそうなドヤ顔でアキラへ言い放った。
そして、そんな答えにアキラは。
「分かった、出来るだけやってみよう!」
そう言って魔王城を飛び出した。
さて、アキラが飛び出していった魔王城では、ツカサがとある事実を右側にいるセラティアに座ったまま尋ね始める。
「さてセラティア、そのダンジョンをどうやって出たんだ?」
「無論、我が力をもって最深部まで行き、そこから脱出したのじゃよ!」
「セラティア、もう一つ尋ねたいのだが、そのダンジョンは絶対にお前以外は入ったことがないのか?」
「うむ、断言できるぞ!」
「そうか……」
そして、自信満々にそう断言したセラティアの言葉から、ツカサは目の前のマオを見ると。
「マオ、魔王城の近辺を捜索するぞ」
「へ? あ、うん」
そう言って魔王城内から探し始めるのだが。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! この部屋には何もないぞ! その、えっとじゃな……、あ! 我の下着が埋まっていてじゃな……」
「マオ、範囲を魔王城内に狭めるぞ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ダメじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どうしても捜索を止めて欲しいのだろう。
セラティアは泣きながら床に大の字に寝そべった。
その様子から『やはりこの部屋の中にダンジョンの入り口がある』そう確信する二人だった。
「ツカサお兄ちゃん、何で分かったの?」
「動物的カンだな! いわゆるひとつの……」
「……アキラを呼び戻す?」
「いや、夜遅いし止めておこう。 それに、すぐに教えたら『教えてほしければ私の体に聞くがいい!』といった後、メチャメチャにしてもらえないではないか! ん? もしやマオ、私の体を……」
「いや、いいわそれ……」
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